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一撃で変わる流れ

次回更新はお休みします。

次の更新は8月10日です。

「俺はお前ほど敵との距離を測るのが上手い奴はいないと思ってる。何故ならL 2までしか使えないお前は距離感を間違えば致命傷だったからだ。そのお前相手に俺が何の手も打たずこんな分かりやすい武器を使うわけないだろ。」


(…くっ…俺が見誤ったのか?。だがあの位置は…。…まさか…)

 腕の傷が癒えた重はある仮定を立てる。それに基づきこれからの行動を決める。


「L2『蛍火』×100。」

 重は蛍火を詠唱。だが放たずに自身の周りに浮遊させる。


「…なんだ?。…あぁ、成る程。身代わりか。その浮かんでるやつが破壊されればそこは俺のテリトリーってことね。だが…甘い!。」

 剣が槍を振り下ろす。今まで頭上で回していただけだったその槍が振り下ろされる一陣の風が吹く。その風は刃となって重に襲いかかる。


「言っただろ。凪は近中両用だ。そんな甘っちょろい策なら…全て斬り裂く‼︎。」

 剣が前に出る。一度は振り下ろした凪はまた頭上に構え直していた。


「…っち…『夜炎』双腕!。上等だ、…テリトリー?そんなのぶち破ってやる。」

 剣の姿を確認した重は夜炎を両腕に灯し此方も前に出る。依然蛍火は重の周りを回っている。


「…そら、消えるぞ。」

 ある地点で蛍火が掻き消される。それはつまり剣のテリトリーに入ったことを意味する.その地点で急停止する重。そして両腕を前に構える。


「…ここならギリ大丈夫なんだろ!。解放。」

 蛍火が解放される。散り散りになって剣に襲いかかる蛍火。だが全方位からの射撃も剣には通用しない。


「…はっ、無駄だって分かんねーのか?。そんで…そこは俺のテリトリーだ。」

 次の瞬間重の腕に斬撃が走る。だが重は動じない。寧ろ得心がいった表情を見せる。


「…やっぱりか。俺の見切りは間違ってなかった。証拠に…ここなら届かないだろ?。」

 重は三歩後ろに退がる。そして先程と同じように手を前に突き出す。


「…っち…。」

 剣の舌打ち。そして無傷の重の腕。それは重の推測が正しいことを証明していた。


「剣のテリトリーはお前を中心としているんじゃない。あくまでその槍だ。お前が俺の腕を斬った時は腕で槍を回していた。だから腕の分テリトリーがずれる。その証拠に全方位で同時着弾にしたはずの蛍火の着弾がズレていた。あの時は俺に攻撃するために腕で槍を持っていたからテリトリーが前にズレていたんだ。つまりお前のテリトリーは半径2メートル+剣に腕の長さ。だからここならギリ届かない。」


「…やっと分かったか。まぁ、分かったところで何も変わらない。俺は俺の道をゆく。」

 実際重が暴いたのはテリトリーの範囲についてだけ。それによって不意の一撃を食らわなくはなったが剣もそれを理解している。ここからは純粋な技術の勝負になる。


「…L2『火炎』×100。…『火燕』。…因みにさっきの言葉は嘘じゃない。そのテリトリー、俺がぶち破ってやるよ。」

 重は足にも炎を灯し臨戦態勢となる。敢えて足元は夜炎ではなく通常の炎。それによって夜炎での火燕を最後の切り札とするためである。


「…ふん、…なら俺は悉くを弾き飛ばそう。仰天しろ、俺の新しい技に。…『破魔矢・天風』。」

 剣の腕に矢が現れる。今まで剣が使ってきた武器錬成とは趣を異なるその矢を剣は凪を弓として番える。


「…は?…それ槍なんじゃ…」


「今思いついた、これ弓になりそうだろ?。お前で…試させてくれよ。」


「…疾っ⁉︎。…くっ…」

 剣から放たれた矢は地面すれすれを飛び重の元へ。重は何とか跳躍してその矢を躱す。


「…へぇ、良い感じだな。L5『星華火』!。」

 空中に飛ぶ。回避の選択肢で最も隙の大きい行動をとった重を剣が見逃す筈がない。即座に星華火を発動。重を質量で追い詰める。


「舐めんなっ!。夜炎全開!。」

 火燕の火力によって体勢を立て直す重。向かってくる星華火を夜炎を纏う腕で殴り付け軌道を変える。


「舐めてなんかいねーさ。『破魔矢・倶利伽羅』‼︎。」

 剣の腕には新しい矢が握られていた。重はその矢を見た瞬間背筋が凍る。すぐに優先順位を変更。星華火に多少削られても今から放たれる矢を回避するのを第一にする。


「…食らえ。」

 剣から放たれた矢は流星の如く火を纏い猛スピードで重の元へ。


(…どうする…。このままじゃ剣に近づけない。…結局…俺は…賭ける。自分の…)

「…全てを。」

 重はその場で足を固定。両腕を体の前で円を描くような構えをとる。


「…何⁉︎避けねーのか!。」


「…ぐっ…‼︎…ぐぐぐ。…!…う、…あぁぁぁぁぁぁ‼︎。」

 重は飛来した矢を自らの夜炎で包み込み押さえ込む。着弾の衝撃で体ごと押し込まれるがそれでも重は譲らない。矢の前に体を入れ続け、雄叫びと共に矢を打ち返す。


「…嘘だろ!。くそが…あの矢には重の夜炎も…凪では…無理だ!。」

 撃ち返され重の夜炎をも纏った矢が剣に着弾する。凪によるテリトリーもこの矢の威力は防ぎきれない。矢は剣に左肩を貫きそのまま体ごと後ろに引き飛ばした。


「…はぁ、はぁ…どうだ、剣。そんな小手先で勝てると…思うなよ。」

 矢を撃ち返した重の腕は焼け爛れていた。普段から火拳や夜炎を使う為魔力によるコーティングには慣れている重。その重が限界を超えて炎を纏わなければならない程の矢だった。当然、撃ち返された剣のダメージも少なくない。


「…けほっ……はぁ、…はぁ……っんぐ…あぁぁ!

 はっ、流石俺の魔法。えぐい威力だ。」

 肩に刺さった矢を抜く剣。そして矢を握り潰す。


「…少し遊びすぎたか。やっぱり俺はこれだろ。…『鬼王の槍斧』。」


「そのまま寝てれば良かったのに。そうしたら俺に殴られずに済んだのに。」

 剣が錬成した槍斧を見た重は再び夜炎を灯す。これからの戦いはお互いのプライドの戦いになる。そう確信していた。


「…重!お前の夜炎を喰らってやる。」


「その得物、叩き潰す。」


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