ライバル対決 1
「重!用意はいいか。初の連敗の屈辱に塗れるよぉ。」
「そんな事にはならないね。剣こそ気絶したまま年始を迎えないように気をつけなよ。」
大晦日前日、予定通り重と剣の年1回の真剣勝負が行われようとしていた。本来は若草と澪だけが観客のはずなのだがそこには招いていない客も数人いる。
「…霧島飛春、お前はどちらが勝つと思う?。」
「さぁーな、俺は八神とはやり合ったが火祭とはやってない。逆にあんたは火祭とはやったが今の八神とはやってない。比べようがねーんじゃねーか?。」
「…ふっ、L5を使える者とL2までしか使えない者が比べようがない。…本当に面白い奴らだよ。普通に考えれば火祭の勝ちは揺るがないだろう。だが八神の多重魔法はそれを補って余りある。楽しみじゃないか、次代の第一輝候補として。」
霧島と創士の2人が展望を予測しようとするがそれも出来ない。2人の伸び幅が大きく予想しづらいのだ。
「んじゃ一番近くで見てきたお前はどう思う、若草?。」
そこで唯一直近の2人と戦った経験を持つ若草に話を振る。
「そうだね、…どちらも自分の強みが分かっている。重君は圧倒的弾幕と局所的な猛攻。剣君はオールラウンドらしい均衡の取れた攻守。それに2人とも相手の性格も深く理解しているからね。読み合いでもほぼ互角になる。だから勝負を分けるとしたら心の強さ。どれだけ勝ちたいと思えるか、だと思うよ。」
「…結局殆ど分からねぇーのか。なら俺は八神重を応援する事にするわ。やっぱ自分が戦った奴を贔屓したくなるしな。」
「ならば俺は火祭剣だな。実際あいつは俺に剣の技量で迫る程に成長している。勝って何の不思議もない。」
「…L2『火炎』×1000!。」
「はっ!…L5『星華火』‼︎。」
戦いは2人が同時に発動した魔法で開幕した。衝突する豪炎。その煙が晴れたとき戦闘態勢に移行した2人の姿があった。
「…『火拳』双腕‼︎。…この拳で…ぶっ飛ばす。」
「…『壊刀』…テメェの火拳ごとぶっ壊す。」
火拳を発動した重が足元での爆発を利用した歩法で一気に距離を詰める。だが剣も壊刀で応戦。重の火拳を刀身で受け止める。そして滑らせるように半円を描き足元を刈りにいく。
「…うおっ…やばっ…『双砲火』!。」
「…L5『氣風天戒』‼︎。」
足元への斬撃をジャンプで回避する重。だが剣は壊刀を手放し空中の重に向けて魔法を発動しようとしていた。剣の手に出現する小さな台風。重は咄嗟に腕を砲身とする火線を発動する。
「…はぁ、…はぁ…いきなり動いてくるな。…L2『蛍火』×1000。」
「…L4『黒土の双剣』。…重!その場所…後ろ確認した方がいいぜ?。」
お互いの魔法が打ち消し合いその衝撃で弾かれる。重は即座に追尾性の魔法を発動。体勢が崩れている剣に追撃を行う。だが剣は敢えてL4の身軽な双剣を錬成。体術と合わせて蛍火を回避していく。
「…後ろ…、…壊刀…!。」
剣の言葉で後ろを振り返った重。そこには今まさに炸裂しそうになっている壊刀があった。重は慌ててその場から離脱しようとする。だが目の前の土が突如せり上がり進路を塞ぐ。
「…くそっ…」
当然重は一瞬で土を破壊する。だがその一瞬のタイムロスで背中に爆風を受ける事になる。
「…いって…。…やってくれたな、剣。」
「ウォーミングアップには丁度いいだろ?。それともお前にはキツすぎるか?。」
「全然。…むしろ足りないぐらいだ。」
2人の顔には笑みが浮かんでいた。




