等しく訪れる試練
学園全体を巻き込んだ星狩りが終わった。結局変更された星は第六輝のみ。改めて星を持つ者の強さが証明されたことになる。親善会、星狩りと大きなイベントを終えた今学生達に迫る次のイベントは学期末試験だった。幾ら魔法に秀でていようと関係ない。普段の授業にどれだけ真摯に向き合えているのか問われるこのイベントは多くの者を苦難に陥れる。その一例が火祭剣である。
「頼む!矢沢!。俺に勉強を教えてくれ!。」
全星寮のリビング。先に帰宅して晩ご飯の用意をしていた澪に剣が出会い頭の土下座をかます。今全星寮には2人しかいない。重は友人からの頼み事を引き受けていて不在。若草はクラスの女子生徒に全教科のノートを借りコピーに向かっている為不在。若草は授業を七星の特権をフル活用してほぼ欠席している。テストの勉強をしようにもそもそもノートが存在しないのだ。ただ若草の人気は高くノートを借りる人には事欠かない。更にノートを一読すればテストは容易に乗り切れる。剣は一度それを聞いて激昂した。
「…つ、剣さん⁉︎。顔をあげてください。勿論今回もテストの勉強を一緒にするつもりでしたよ!。」
剣に対して慌てて顔をあげるように告げる澪。実際、剣の勉強の面倒をみることは澪のテスト前の恒例となっていた。当然今回もそのつもりだった。だがそう告げても剣が顔をあげることはない。
「…今回はいつもよりも迷惑をかけちまうかもしれない。…それでもいいか?。」
「…?どういうことですか?。」
「…実は槙野に呼ばれて…今までのテストは欠点ギリギリでパスしてたんだがトータルでみるとアウトになる可能性が出てきたらしい。だから今回と三学期のテストはいつもよりも点を採らないとまずいんだ。」
剣はこれまで三回のテストを澪の尽力によってギリギリで乗り越えてきた。だが年間を通して見た時で考えるとギリギリアウトのラインなのだ。このままでは留年してしまうことになる。いくら魔法に秀でていても高等学校の生徒である事に変わりはないので成績は必要なのである。
「…成る程…んー、…今までの勉強時間であの点数なので…日程を詰まれば…」
剣の話を聞き澪は料理を中断する。そして一度自分の部屋に戻りノートを一冊取り出してくる。そこには今まで剣と共に勉強した内容と時間が細かく記載されていた。
「矢沢…それは…。いつの間に…」
「ちょっとした時間に作っておいたんです。これで剣さんの勉強を少しでも効率化出来ないかなと思って。今回役に立ちそうですね。剣さんの嫌いな教科とマシな教科もデータも揃ってます。それと今回のテスト範囲を照らし合わせます。」
澪の了承を得た剣が立ち上がりノートを覗き込む。そこに細かく書かれている内容に驚愕する剣。そんな剣を尻目に澪は更に今回の全教科のテスト範囲一覧を取り出しノートと交互に見比べる。そしてあるページに今日の日付、時間を書き記す。
『内容の一例』
16:00数学
17:00社会(地理)
18:00数学
19:00夕食、入浴
20:00社会(地理)
21:00数学 途中10分の休憩 最後の20分は確認テスト
23:00社会(歴史)
24:00社会確認テスト 地理20分 歴史10分
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6:00起床 小テスト勉強
6:30前日の確認 社会20分 数学5問
7:00朝ご飯 登校用意
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16:00国語(現代文)
「…け、結構ハードだな。」
「あ、安心してください。テストまで1週間ありますがその内2日は勉強をお休みにしています。その代わり残りの5日は頑張ってくださいね。」
澪の書いているスケジュールに頬を痙攣らせる剣だが澪はそんな剣のことをちゃんと理解している。所謂中日と呼ばれるものをセッティングすることでやる気を保つ作戦なのだ。具体的には○○×○×○○と言った感じでテストにのぞむことになる(○が勉強ありの日)。
「それじゃあ早速今から始めましょうか。ただ一つ。このスケジュールは重さんや大樹さんの協力があって初めて成立するものです。ですから2人には夕食の時にキチンと説明してくださいね。」
剣の特別勉強期間中は澪も確認テストの作成や自分の勉強の為寮の家事を重と若草に任せることになる。そのことをしっかり剣に教える。
「あぁ、分かった。ちゃんと全員に感謝するよ。」
こうして剣の留年回避をかけた戦いが幕を開けた。




