先輩としての矜恃
「…なぁ、あんたは本当に霧島さんに挑むのか?。」
重と若草の戦いを終えた全星寮。僅かにだが確実にそこにあった違和感も消えいつもの空間がそこにあった。
「勿論そのつもりだよ。今回君たちと戦えたことでその思いは更に強くなった。可愛い後輩が闘争本能剥き出しで牙を剥くのを見て心打たれた。僕は…本気で最強の座を奪りにいく。」
4人はリビングで談笑を交わす。話題は当然今回の星狩りについて。
「大樹さんが一輝になったら…私たちももっと頑張らないとダメですね。もっと善戦出来るようにならないと。」
「澪ちゃん、君は水という性質の本質を理解している。あらゆる形状に変化する攻守万能の属性。戦場自体を支配する能力だってある。それに悪知恵も身に付けたようだと真利谷さんから聞いているよ。君は確実に強くなっている。僕が焦るほどにね。」
改善したがまだネガティブな面を見せる澪に若草は素直な評価を告げる。その感想を聞いた澪は表情を綻ばせ笑顔を浮かべる。
「そして剣君、君は控えめに言っても天賦の才を持つ者だ。類稀なる格闘センス、魔法もレベル5まで使用できる。そして貪欲さもある。君のこの評価は創士さんと同じだったよ。」
「…そんな俺でもあんたらには勝てなかった。俺に何が足りない?。」
「違うよ、剣君。君に足りないものは無くなった。あとは整理するだけだ。その吸収力で学んだ全てを自分に落とし込む、最適化する。言わば君はまだ形のない大器なんだ。どんな傑作になるのかは僕にも分からない。君が自分で決めるんだ。君にはその権利と力がある。」
不貞腐れたように尋ねる剣に毅然と返す若草。剣は多才、故に未完成。あらゆる方向に手を伸ばせるからこそその一点を極めた者には僅かに届かない。だがモリモリ餌を食べる幼虫の時期は終わった。これから蛹となり、更に大空を羽ばたく蝶となる。剣の成長はここから加速する。
「…重君は剣とは真逆。自らの才能と向き合いほんの僅かな活きる道を渡り続けた。いつ崩れて半ばで諦めておかしくない道を歩み続けた。その結果、柔軟な思考とその他者と隔絶した魔力量を手に入れた。他人よりも早く道を決めた君には多くの時間があった。だから僕が教えた魔力のコントロールも1番上手く使いこなせている。霧島君の顔にその拳を届かせた話は聞いているよ。」
「俺がここまで来れたのは大樹さんに会えたからですよ。会えてなかったら…変わり者の1年生で終わってました。国家魔導師を目指し続けれてたかすら怪しいです。…知ってると思いますけど霧島さんチョー強かったです。」
「…勿論、知っているよ。彼はこの学園最強の男。天才でありながら尋常でない努力を積む。その成長は留まることを知らず青天井だ。…だからこそ挑みたい。」
「あの、霧島さんが三丁目の銃って言ってた気がするんですけど…大樹さんは何か知ってますか?。」
「三丁目、…いや、見たことないな。彼のイメージはあの二丁の魔銃。そしてオームラウンダーの戦い。…ふふっ、そうか。彼はまだ力を隠していたのか。親善会でも使ってなかったはずだよ。」
「…楽しそうじゃねーか。」
「まあね、君たちとの戦いは先輩として勝たないといけないっていうプレッシャーもあった。だけど次は僕が挑戦者だ。試したいこともある。」
「あ、大樹さんあれ使ってくださいよ。あの俺に最後使った魔法。翅が生えるやつ。あの威力は凄かったです。」
「あぁ、…あれは使えないよ。言っただろう君の一つの到達点だって。あれは君の魔力があって初めて成立する。あの時はなんとか君の魔力を運用出来たから発動できただけだよ。」
「それなら霧島さんの魔力も…」
「重、それは無理だ。お前は火属性だけだが…霧島さんは四属性だ。だから対応出来ない…だろ?。」
「うん、そうだね。流石に四属性、何が来るのかわからないものを咄嗟に押さえ込むのは無理なんだ。だからあの魔法は使えない。」
「そっか、…」
「心配しなくても無様な姿を見せたりしない。君たちは僕の勇姿をその目に焼き付けてくれ。」




