宗谷武命の技術
「君が宗谷武命君だね。氷雨と互角に戦った噂はよく聞いているよ。」
「七星の東堂さんに知ってもらえるなんて光栄です。それと間隔を開ける申請を受け入れていただきありがとうございます。」
闘技場で向かい合う宗谷と東堂。本来前週に戦う予定だったのだが宗谷からの提案で1週間の時間をとることになったのだ。
「ただ氷雨に君のことを聞いても教えてくれなくてね。私がこの1週間で新たに出来たことは何もないんだよ。…これも君の策略なのかな?。」
「そんなことありませんよ。真利谷先輩は僕のことを思って情報を隠してくれたんだと思います。あくまで僕は挑戦者なので。」
東堂の質問に流れように虚偽の報告をする宗谷。
「…そっか、…うん、まぁいいや。君のことは戦っていくうちにわかってくるだろうし。当然私のことは調べたのかな?。」
「えぇ、勿論です。弱い僕はそうしないと勝ち目がないですから。ただ残念なのが…噂にはある貴女が負けた一戦。その情報が殆ど無かったんですよね。」
「…そうかい、それは残念だったね。」
「…対戦相手は若草先輩ですよね。…あの人の考えを追おうとしたのですが出来ませんでした。…あの人は危険です、出来れば戦いたくないですね。」
「この学園では珍しいな。普通は強い者と戦いと思うのに。」
「効率が悪いんですよ。こちらの立てた計画を破綻させる可能性がありますから。」
「私なら計画通りに進めることが出来ると?。」
「そう願いたいですね。…そろそろ始めましょうよ。時間の無駄です。僕は自分のことを話したりしませんし、貴女もそうでしょう。」
「そうだな。」
『これより第四輝東堂昴流対宗谷武命の勝負を始めます。』
「…さて、下手に攻めると消耗戦になってしまうんですよね。んー、…どうぞ。」
「へぇ、余裕があるんだね。ならお言葉に甘えてL4『風刃の鋒』。」
開始の合図があっても攻める様子のない宗谷。それを見た東堂は両手に風のナイフを錬成し駆け寄る。拳で肢の部分を握り込みメリケンサックのように構える東堂。刃には不定形の風が纏われており意外に攻撃範囲は広い。
「…良い踏み込みです。実はかなり武闘派なんですね。しっかり腰も入っていますし残心も出来ている。一朝一夕に出来ることじゃないです。」
東堂のラッシュを宗谷が的確に捌いていく。向かってくる拳に対して円を使った循環でいなし、瞬間的に弾くことで軌道も変える。東堂の持つ刃が宗谷に向くことすらない。
「…っ、この捌きは…尋常じゃないね。常に範囲を変える私の攻撃。その芽を全て掌底で弾くなんて。それも魔法を使わずに。少しでも対応を間違えば腕が飛んでくよ?。…まるで呼吸するかのように…染み付いてるね。」
「言い過ぎですよ。…L4『揺籃の火扇』。」
宗谷の腕に扇子が現れる。その扇で挟むように東堂の刃を受け止め巻き取る巻き取られた刃は東堂の手を離れ地面に転がる。。更に更に腕を大きく回すことにより東堂を軽く投げ飛ばす。そして地面に叩きつけられた東堂に扇子を振り下ろす。
「…うわっ⁉︎…これは…合気か。……くっ…」
咄嗟にもう片方の刃で扇子を受け止める東堂。そして今自分に起こったこと、先程の攻撃のいなしを込みして結論を導き出す。
「…正解です。魔法が出現する前から僕の家は代々この武術を磨いてきました。僕はそれに魔法を融合した新しい戦闘方法を確立したんですよ。この武術の名を上げるには国家魔導師になるのが早いですからね。…その為にもまずは七星にならないと。さぁ、尊い犠牲になってください!。」
耐える東堂に対して上から更に圧をかける宗谷。東堂が構えている腕を足払いで払い胴体の防御をゼロにする。そして扇子を叩き込もうとする。
「…腕が…これが風の糸ですか。ラッシュの間に仕込んでいたのか。…見落としていましたよ。」
「ここまで早く使うことになるとは思わなかったけどね。流石にこのままやられるわけにはいかないから。」
振り上げた宗谷の腕に風の糸が巻きついていた。空中に固定された風の塊。そこから伸びた糸が宗谷の行動を縛る。その間に東堂は立ち上がり刃を拾う。
「…煩わしい。…『火車』。」
宗谷が火を纏いながら回転することにより糸から脱する。
「…さぁ、第二ラウンドだ。君のスタイルを少しずつ曝け出してくれ。私も全てを曝け出す。」




