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海神の血槍

今私が書いている『七つの顔を持つ英雄』が毎日更新を行っております。よろしければご覧ください。

「…おやおや、(…あれはなんだ。赤い…魔力か?、いや、まさか…)それは血液ということで良いのかな?。」

 潰された肩の調子を確かめるように回しながら若草が尋ねる。口調には余裕がみられるが実際はそんな余裕はかけらも無かった。普段なら敵に解答を求めることなどしない。自分で検証してそれを利用して裏をかく。だが今の状況がそれを許さない。


「…『血霞・十二単衣』。…『枝垂れ穿ち』‼︎。」

 澪は若草の問いに応えることなく次の手を打つ。若草が冷静さを取り戻す前に圧倒的優位を築く。そこまでして漸く一か八かに持ち込める。そう考える澪には微塵の油断も無かった。赤みがかった霧で錬成されるのは下半身がドレスのような鎧。薄い層が幾重にも張り巡らされたその鎧は友のかつての二つ名を冠する魔法で澪の込めた思いの強さが窺い知れる。更に水の蔓のようなものが水面から発生し若草に襲いかかる。


「…L 4『大豪炎』。…僕の炎で焼き切れないのか。」

 若草は指先から大豪炎を発生させ蔓を斬り裂こうとするが均衡し、巻き取られてしまう。しかしそれを見た若草は確信を持つ。


「血液は魔導師の体を魔力が巡る道だ。それを敢えて体外に放出して媒介とする。自己変化だけに許されたドーピーグ。初めて目にしたけど…笑いが漏れるぐらいにはヤバイね。」

 澪の突然の変化の結論を出す若草。その間およそ2分。その速度は澪の想定したものより大幅に短いものだった。そして若草の顔に凶悪な笑みが浮かぶ。


「…(今までの澪ちゃんの帝とは次元が違う。これは…)…ふぅー、…僕は今日澪ちゃんとの戦いの為に百の策を用意した。でもそれはもう役に立たないようだね。君は完全に僕の想像を超えたんだ。おめでとう、そして…ありがとう。これで僕も…昔の僕に戻れる。…」

 刹那若草に襲いかかっていた蔓が弾け飛ぶ。


「…っ、…(落ち着いて、…動揺しちゃダメ。)。まだこっちの方が有利なはず。この血霞は…負けない!。」

 澪が前に出る。それに伴い水面が荒立ち若草を大波小波が襲う。足元をぐらつかせる小波と体にぶつかり更に視界を奪う大波。嵐の中で漂流した船のように若草は水の奔流の中で孤立する。そしてそこに駆ける一筋の閃光。


「…『海神の血槍』‼︎。」

 先端が紅く染まった水の槍を持った澪が一直線に突く。それは若草を背後から一突きで葬るはずだった。


「…え、…なんで…」


「捕まえたよ。…さぁ、次は僕の番だ。」

 だが槍が触れたのは若草の右手。掌を貫通しながらも更に穂先を左手で掴むことによって若草は澪を捕えていた。そして若草の体から炎が立ち上がる。


「…無詠唱、…だけど…この鎧なら…」

 一瞬若草の放つ気配に臆した澪だが冷静さを取り戻す。この距離は寧ろ自分に有利。接近戦に切り替えて勝負をかけようとする。


『…ドドドドドド』

 次の瞬間澪は無数の弾幕に覆われる。無論、ダメージは殆どない。直ぐに水の壁を張ったし鎧もある。だが、だからこそ澪は気を引き締める。あの若草が意味のない行動をとるはずがないからだ。その信頼ともいえる警戒は正解となる。


『…ジューーーー…』


『ズドン、…ズドン‼︎』


『シュルルルゥ…』


「あぁ、やっと斬れたよ。」

 若草の声が聞こえる。その言葉の意味を澪は考える。今若草が斬ると言った。現在若草が斬る必要のあるものは何か。それは…


「…まさか…血槍が!。」

 澪が持つ血槍の穂先が亡くなっていた。というより何かで抉り取ったようになっている。これには澪も平静を保てない。今一瞬視界が塞がれた間に何が起こったのか。血液を媒介にして強度を増した槍が壊された。それが澪に与える心理的ダメージは大きい。そしてそれは目の前の光景を見て更に大きくなる。


「…重君に火拳のヒントを教えたのは僕だ。ならば僕にだって出来ないはずがないだろ?。」

 右手に炎を左手に風を纏った若草の姿がそこにはあった。

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