星に並んだモノ
一戦目の星狩りから1週間が過ぎた。この日行われるのは星狩り二戦目。しかし学園内の興奮は一戦目より大分劣っていた。それは直接第二戦の挑戦者達への期待を表していた。第一戦の挑戦者はそれぞれの星を持つ者が一番危険だと判断したものが選ばれている。それは明言されてはいないが面子を見れば明らかだった。それでも変わったのは1人。生徒達は次の回へと期待を移していた。そこで飛び込んだ劇的なニュース。第三輝真利谷氷雨が引き分けた。それは大きな衝撃となって学園中を駆け巡る。宗谷武命、それが革命を成しかけた男の名前である。
「…マジかよ、…引き分け?、その宗谷って奴は草薙が言ってたやつだよな。」
「うん、茜ちゃんに勝って周りを認めさせたって。全然実力の底が知れないって言ってた。だからって…水帝の澪ちゃんが勝てなかった真利谷さんと引き分けるなんて…。」
「全く情報がないんです。いえ、無いのとは違いますね。使うのは火属性だけでLevel 4を幾つか、そして放出だけ。それしか使っているのは目撃されていません。成績は下の上。狙いすましたように及第点を超えてくる男の子だそうです。」
「…単属性、それも火属性だけで勝てるほど甘くは無い。って事は手を抜いてたって事か。この学園に通う生徒では間違いなく異端だな。その理由が全くわからない。」
真利谷が引き分けというニュースを聞いた重達。来たる次の挑戦へ向けて鍛錬の途中であったが手を止める。
「…星はどうなるんだろ。引き分けの規定は決まってなかったはずだけど。」
「…真利谷さん。」
重の口をついた疑問に澪を表情を曇らせる。澪は真利谷が創士の隣にいたいが為に七星の座に就いている事を知っている。
「おや?僕の噂をしてくれているのかい?。光栄だね、一年生でも有数の実力者トリオに噂されるなんて。」
3人の元に1人の男子生徒が訪れる。どこにでもいる中肉中背のその男子生徒はメガネを指で押さえながら言う。この闘技場は学園の中心から少し離れており更に全星寮がメインで使う為他の生徒は基本的に訪れない。
「…まさか君が宗谷君?。」
「そうだ、僕は宗谷武命。君達と同じ1年生だ。と言っても僕は華がないから目立たないけどね。」
「お前、もう回復したのかよ。引き分けって事はどちらも気絶したってことだろ?。」
「いや、僕と真利谷先輩の両方が同時に王手をかけてね。そこで戦いを終えたんだよ。」
「…勝てれば良かったけどそう上手くはいかないね。隠し玉は誰にでもあるってことだよ。」
宗谷の言葉を聞き澪は驚く。宗谷の言葉より真利谷が狂飆の雹狼を使ったことを知る。あの魔法は公式での真利谷の記録には残っていない魔法だからである。そしてその魔法を使わねばならない程の実力を宗谷が持っていることの証拠でもある。
「因みに席次は奪えてない。引き分けだったけど向こうの方が少しだけ魔力が残っていたんだ。惜しいよね。」
負けたというのに宗谷の表情には一切の感情が浮かんでいない。
「負けたのに随分あっさりしてるじゃねーか。お前、悔しくねぇーのか?。」
「悔しい?…あぁ、普通はそう思うんだね。ふーん、…勿論僕も悔しいよ?、予定が狂うのは面倒臭いから。お陰でまた手間だ。」
やれやれと宗谷が両手をあげる。その仕草には悔しさなどなくただただ作業が増えてことへの煩わしさだけが見えた。
「そうそう、用事を忘れていたよ。次、僕は第四輝を狙うから。…邪魔しないでね。」
そう告げる宗谷の顔には初めて感情らしいものが見えた。澪はブルッと体を震わせる。
「…心配しなくていいよ。こっちも次の目標は決めている。君とは被ってない。」
「そっか、ならいいんだ。僕も好きで人の秘密をペラペラ喋りたいわけじゃないし。お互いに頑張ろうね。」
表情は笑顔でしかし、目を笑っていないまま宗谷が闘技場を去る。
「…重、お前も感じたか?。」
「うん、なんか…蛇みたいだった。」
後味の悪さだけがその場に残った。




