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紙一重の戦い

「…さてこの距離だ。お互いの必殺の距離。これがお前の思い描いた決着の瞬間か?。」


「…あぁ、そうだ。少しズレたが俺があんたに勝つとしたら足を止めさせての斬り合いだろうとは思っていた。あんたの剣士としてのプライドがこの状況ならそれを選ぶだろうと思って練った作戦だった。」


「相変わらず切れ者だな。だが一つ訂正してやろう。」


「訂正?。」


「あぁ、…この場所でも俺が勝つということだ!。」

 瞬間創士が右手に持つ唯是刀を下から斜めに振り上げる。白刃は軌跡だけを残して剣を両断するはずだった。


「…舐めんよ。…言っただろ、こうなることを予想していたと。」

 創士の高速の斬撃を壊刀で受け止める剣。その衝撃で辺りの土が舞い上がる。


「俺はなんだかんだ万能型だからよ。はっきり言って剣と向き合ってこなかった。これが無くても魔法の才能もあったからな。でもな、結局どっちも中途半端になっちまってたんだよ。だから…まずは剣士として俺が最強だと思うあんたを…剣術で倒す!。」

 受け止める唯是刀の側面を這わすように上に弾く剣。そしてそのまま壊刀を振り下ろし創士を押し潰そうとする。


「…成る程、成る程。…確かに今までのお前にはない剣の冴えだ。相当な鍛錬を積んだのだろう。それに敢えて俺の土俵の剣に絞り自分を追い込んで一気に追い付くという考えも悪くない。人が成長するのはそういう時だ。そしてその相手に俺を選んでいるのも正しいだろう。俺は剣では誰にも負けるつもりはないからな。」


「…そう、お前にもな。」

 剣の壊刀の押し潰すような斬撃を創士は左に出現した新たな刀で受け止める。


「…っ、二本目だと。」


「追い込まれて成長するのはお前だけじゃないんだ。ましてや俺のは完全個人依存のL 6だ。その性質が俺と同じでない訳がない。…銘は暁月。唯是刀が俺の理想とする疾さを体現するのならこの刀は俺が理想とする力を体現する。」

 創士の左手に現れた刀は黒い刃にほんのりと朱が差し込まれた刃紋を浮かべ白刃の唯是刀と対を為すかのようだった。


「…っち、クソが。俺の想像を超えたって訳か。…上等だ、…やってやるよ!。来い!『鬼王の槍斧』‼︎。…この戦いをお前には預ける!。」

 壊刀が受け止められたのを見た剣はそれ以上の破壊力を持つ自身の手札最強の暴れ馬を錬成する。


「出たな、それが俺と同じL 6の魔法を削ったお前の最高の得物。では…ゆくぞ。」

 創士が両手の刀を袈裟斬りに振り下ろす。


『…ギンッ…キリリリリリ……』


「…ぐっ……耐えたぞ。次はこっちの番だ!。」

 振り下ろされた2振りの刀を両手で持つ槍斧で受け止めた剣。そのまま円を描くように槍斧を横に薙ぐ。


「…これは⁉︎。…堅守の型!。壱弍参肆伍‼︎。」

 槍斧が纏う禍々しい気配を感じ取った創士は即座に堅守の型を展開。浮遊する5枚の盾を軌道上に配置する。


「…いいのか、それだけで。…さぁ喰え鬼王!。その全てを壊せ!。」

 剣の体からごっそりと魔力が消えてその代わりに槍斧の周りに白い波動が発生する。


「…っぬ!、零‼︎。」

 剣の槍斧は5枚の盾を全て破壊。殆ど威力を弱めることなく創士へと襲いかかる。創士は最後の大盾を体の正面に構えて槍斧と正対する。


「…うおぉぉお‼︎‼︎。」

 剣渾身の一振り。


『…ドーーーーーンッ‼︎』


『ズザザザ……………ザッ…』


『ピシ…ビキ…ピシピシ…』

 凄まじい衝撃が発生する。響くのは何かが大きく動く音とそれに続いてヒビ割れる音。


「…まさかここまで押し込まれるとはな。」

 創士が呟く。身に構えた盾にはヒビが入っている。更に足元には地面を抉ったような直線。それは創士が元いた場所から続いている。加重紋で重さの増している創士を剣の斬撃はここまで押し込んだ。


「…俺の台詞だ。まさか…この槍斧が砕けるなんてな。」

 一方攻撃をした剣の腕には槍斧だった物の残骸が握られていた。創士の持つ大盾への攻撃、その衝撃に耐えきれず自壊したのだ。欠けらながらも形を残した盾と崩壊した矛。それはこの勝負の行方を如実に表していた。


「…俺の負けだ。全ての魔力を槍斧に乗せた。それが砕かれた今、俺に出来ることは何もない。」

 しっかりと創士の目を見ながらそういうと剣の体からふっ、と力が抜けその場に伏した。


「ギリギリだった。あの一撃は…」

 地面に倒れた剣を見ながら創士は自分の盾を撫でる。それだけで表面が砕け崩壊してしまう。あと少し、あとほんの少し剣に力が残っていればこの盾はその場で砕かれ負けていたのは自分だったかもしれない。


「…強くなれ火祭剣。俺は上で待っている。」


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