迫ったから知れたこと
「良いぞ!八神重!。お前の拳は確かにこの霧島飛春の顔面を打ち抜いた!。あの一瞬、お前は俺の想像の上を行ったんだ!。誇れよ、そしてその感覚を忘れるな。」
重に左の頬を殴られた霧島はしかしその顔に深い笑みを浮かべ歓喜の叫びをあげる。自分と闘争になる強者を何よりも求める霧島。七星の中で最大勢力の三年生が卒業を控える中新しい自分の遊び相手を求めていた。その霧島が重のことを認めたのだ。
「…思いっきり殴ったのに…。…なんで吹き飛ばないんだよ。」
一方の重は霧島のタフネスに驚いていた。魔法が化け物なのは知っていた。しかし打たれ強さまであるとは思っていなかった。
「…さぁ、俺をほんの少し楽しませた礼だ。久し振りに使おう。」
そう言うと霧島が両手に持つ銃をホルスターに収める。
「…なんで銃をしまうんですか。」
「気にするな。…それでも俺は最強だ。」
重の質問になんでもないように返す霧島。目を瞑り棒立ちになる。
「…っ、…『夜炎』『火脚』。」
重は一気に加速し霧島に迫る。無防備だとか手ぶらだとかが目の前の男には関係ない事はよく分かった。ならば遠慮はしない。
「…良い速度だ。…『勝者の連弾』。」
目を開けた霧島はそれまでの比でない速さで銃を抜き四発の銃弾を放つ。
「がっ⁉︎…いつの間に…」
重の体に銃弾が撃ち込まれる。四肢をそれぞれ撃たれその場で動きが完全に止まる。
「…『決別の一撃』。」
霧島の右の銃で放つ最強の弾丸。それが重の体に向け放たれた。撃った瞬間に反動で霧島の腕が跳ね上がる。そして銃弾は重の体を光で飲み込む。
「…やっぱ腕いてーな。だが…良くやった後輩への餞別としては…」
その様を見届けた霧島は満足そうな顔をして右腕を摩る。まだまだ創士さんや若草には及ばないが楽しみな1年がまた増えたと笑みを浮かべる。未来への期待を込めて放った一撃は親善会で放った物よりは威力は落ちるものの勝負を決するには十分だと思っていた。だがその思いは良い意味で裏切られる。
「…かはっ…まだ…終わって…ないぞ!。…『双砲火』‼︎。」
重は立っていた。更に霧島に向け両手を砲台とする魔法を放った。
「…ふっ、…ふはははっ!。呆れた野郎だ。まさか俺の決別の一撃を体に纏った炎で相殺するとはな。…良いだろう左もくれてやる。『無慈悲な殲滅』‼︎。」
霧島が左の銃を抜く。上空に向かって放たれた弾は1度それで収束しその後破裂。散り散りとなって重に襲いかかる。更に右の銃を連射、双砲火を打ち消す。
「…ぐあぁぁ‼︎…っ…。………L 2『………」
「俺の右と左を1度に受けたのは…本当に久し振りだ。…八神重、お前が俺の敵だと認める。次に戦うとは更に牙を磨げ。そして俺に三丁目を抜かせてみろ。」
ついに倒れた重。それでも這いつくばりまだ魔法を撃とうする姿を見た霧島がこの戦いが始まって初めて真剣な表情になる。そして重の元まで歩み寄るとその体に肩を貸す。
「…三丁目…?。」
重は薄れゆく意識の中で学園最強の男にはまだ隠された力がある事を知った。
「勝者第一輝霧島飛春。」