雷神の大槌
「俺を相手に初出しの技とは…嬉しいことをするじゃないか。」
「俺はあなたを過小評価するつもりなんてありませんよ。折れない心を持つ者の強さは学んだ。なら貴方を警戒するのは当然のことです。『紅雷』‼︎。」
夢坂の体から雷撃が放たれる。地面すれすれを高速で飛来するその雷撃を官寺は…
「…ぐっ…⁉︎。…くるなぁ…その雷撃は。…L 4『黒鉄の礫』。」
避けない。そもそも雷速で迫る夢坂の攻撃に対応する魔法を官寺は持たない。それなら覚悟を決める。全身に土属性の膜を張り巡らせダメージを最小限に抑える。そしてカウンター。回避も雷な夢坂には範囲攻撃が有効。視界を埋め尽くすほどの礫を放つ。
「…帝になる前なら回避しきれなかったかもしれませんけど…今の俺は…」
「分かっている。お前なら全てを躱すと。ならこれはどうだ、L 4『地盤剋撃』。」
地面が割れそこから大きな壁が迫り上がる。それにより礫は跳ね返り乱反射を繰り返す。
「…俺のことをよく調べてますね。」
「あぁ、お前の帝は時間制限がある。当然だ、幾ら体が雷になろうともお前は人だ。その速度の動きを全て脳で処理し続けるのは不可能だ。だからお前はこまめに帝のオンオフを切り替えている。ならば強制的にオンのままで居なければならない状況を作れば?…」
「…っ、…ぐっ‼︎。…」
夢坂の帝が解け生身の姿になる。即座に帝に戻ろうとするがしかし礫はそんなことは関係ない。夢坂の体に傷をつける。
「いつか限界がくる。これが俺が導き出したお前の攻略方なんだが、どうだ?。」
「…確かにこれなら俺に触れずに傷をつけられる。だけど…自分の欠点くらい俺も分かっている。俺が帝の再発動までかかる時間は2秒。その時間だけ攻撃し続けて俺を削り切れると本気で思っているんですか。それに大きな欠陥がありますよ。『雷崩』‼︎。」
夢坂の言葉の通りこの作戦にはそもそも問題がある。策を知った夢坂が大人しくしているはずがないのである。夢坂の周りに縦に走る雷の柱。飛んでくる礫を消し去り壁すら撃ち砕く。
「官寺さんが受け止めるなら俺はそれを正面から悉く砕く!。…『雷神の大槌』。誰もが知っている雷神の武器を俺なりに作ってみました。これも受け止めますか?。」
雷で肥大化した夢坂の腕には雷で形作られた大槌。神話の中で語られる雷神トールの武器ミョルニル。それを雷帝の夢坂なりに表現したこの武器は夢坂の戦いの幅を大きく広げた。
「…なんて電圧だ。肌がピリつく。…」
「…これには俺の持つ決意を込めています。…いきますよ。」
突然夢坂が大槌を投げつける。
「がっ⁉︎。…投げ…」
『バチチチッ…‼︎……チチ…』
放たれた大槌は真っ直ぐに官寺へと辿り着く。そして触れた瞬間白い雷の柱が立ち上がる。天にも登るその光の中心の官寺は切り裂かれた肌から出た血が即座に蒸発するほどのエネルギーに晒されていた。
「俺が求めたのは一撃の破壊力。雷という性質ゆえ相手に留まらない攻撃が多かったけどその大槌は違う。触れている間雷撃を加え続ける。」
「…がっが…。…ごはっ…‼︎。……がが……んぐ…まだだ。L 4『黒鉄の…がはっ…」
「それもさせない。直接俺が持てば電圧は2倍だ。」
持ち前の耐久で耐えながら魔法を唱えようとする官寺。しかし跳ね上がった電量に阻まれそれもなせない。
「…俺は速さに自信があったから敵の攻撃を見て回避していた。けど本当に強い奴にはそんなの通用しない。なら…何もさせない。この体の神経すら支配する雷で封殺する。終わりにしましょう。…『雷電の裁き』‼︎。」
1度小さく纏まった雷光。夢坂の指先に集中したそれは天へと駆け昇りそして官寺へと降り注いだ。それはまるで天からの裁きの雷のようであった。雷光が収まった後には体から黒い煙を出す官寺の体が横たわっていた。




