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奪われた者と奪った者

かなり短いです。銀城まで書くか迷いましたが分けさせていただきました。

「先ずは挨拶といこうか。夢坂、久しぶりだな。」


「どうも官寺さん。あの時以来ですね。」

 夢坂と官寺が握手を交わす。この2人は星を奪われた者と奪った者ではあるが険悪な雰囲気はない。奪われた側の官寺がそもそも負けることに対してネガティブな感情を持っておらず負けた当時もはっきりと負けを認めていた。それを見た当時の夢坂は怪訝に思った。何故負けたのにヘラヘラしているのかと。それまでの夢坂はその属性故に負け知らず。勝つことが当たり前だった。なのでいつかは来る敗北に怯えていたのだがが重達と触れ合ううちに負けて終わるだけでない者達の存在を知る。


「…約束を果たしに来た。研ぎ続けた刃でお前にもう一度挑む。」

 官寺にとって負けは結末ではない。ただの道中の一通過点でしかないのだ。その心の持ちようは重とも通じるものがある。負け続けた者の折れない心。


「…俺もその約束は覚えていますよ。脳裏にこびりついている。負けたのに、その座を奪われたのにあなたは笑った。結構衝撃を覚えましたよ。その後にあった重も笑っていましたけどね。」


「1年の八神重か。あの男とも是非拳を交えてみたいものだ。だが今は夢坂、お前だけを見ている。見ろ、早くやりたくて…拳が震える。」

 官寺の拳は細かく震えていた。それは恐怖からの震えではなく興奮の奮え、武者震いだった。


「それでは第六輝夢坂当夜対官寺綾那の決闘を開始します。」


「…『雷帝』‼︎。…『穿雷』!。」

 開始の合図と共に夢坂が雷帝となる。そして官寺に向けて雷が放たれる。ジグザグと不規則な軌道を描くその雷は瞬きの合間に敵を穿つ。


「…流石の速さだ。だが忘れたか?俺は耐える男だ。お前の雷…受け流させて貰ったぞ。」

 しかし夢坂の雷は官寺自身に届くことはなかった。官寺の目の前に現れた鈍い色の物体。それを伝うように流れそのまま後ろへと逸れていったのだ。


「…っ、…曇天の黒鉄。その名の通り土属性の精通したスペシャリスト。」


「おぉ、知ってくれていたんだな。そうさ、今、1回目の時と違うのはお互いの手の内を知っていること。お前が雷の帝ということも知っている。あの時とは違う。」

 そう言う官寺の足元から黒い鉄が湧き上がり腕のように形作る。


「…なら…『仙覚万雷』。…雷候の名の元に来たれ…見敵必殺の紅雷よ。」

 夢坂の纏う雷の色が紅く染まる。それは光華の高陽香が使った八雷神に類似していた。ただその違いは夢坂の場合通常の雷の外に紅い雷を纏っていることである。


「…それは…初見だ。」


「当たり前です。初出しですから。」

 成長しない魔導師は弱者である。ここにいる2人は紛れもない強者。数ヶ月前の知識など意味をなさない。その状況に2人の顔には僅かだが笑みが溢れていた。

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