個人賞表彰
『個人賞の発表をさせていただきます。ソード賞、最も攻撃に優れた、特に一撃に優れた者に贈られます。…ニホン創士貫介選手に贈呈されます。』
司会の声が響く。その言葉に会場の騒めきは途絶える。
「…うむ、俺か。…と言うことは…」
名前を呼ばれた創士は喜びを見せる前に考える素振りを見せる。
「会長、おめでとうございます。…何かあるのですか?。」
そんな創士に真利谷が声をかける。側には風街と花凛も控えている。
「ん?いや、気にしないでくれ。まぁ貰えるなら貰っておくか。」
真利谷の言葉によって自分に注目が集まっていることに気がついた創士は右手を軽くあげアナウンスに応えるようにする。それによって拍手が起こる。
『個人賞受賞者の表彰状および盾は全ての項目の発表後にお渡しいたします。』
『続きましてはガード賞を発表いたします。最も守りに長けたガード賞は光華、柳九老選手に贈られます。』
「…おい!九老やったじゃないか!。最硬だぞ!最硬!。うんうん、お姉さんは九老が獲ってくれると信じてたよ!。」
陽香が九老の背中を叩きながら騒ぎ立てる。
「痛いですよ、陽香さん。…ガード賞か。…今の僕には荷が重い賞ですね。…ソードとガードの矛盾対決で負けていますからね。」
「九老、よくやってくれた。だが納得はいっていないようだな。それでいい、光華はこれから別のアプローチで皆が等しく機会を得ながら強くなる。その中で新しい強さを探せ。」
「はい、雅峰さん。…雅峰さんももっと強くなってくださいよ。僕と李白が抜いちゃいますよ。」
「ふん、お前らは優しいな。…お前らはとうに俺を超えてるだろうに。」
『ブレイク賞、それは局面を打開し道を作った者に与えられます。ブレイク賞はニホン八神重選手です。』
「え!俺!。マジでか。…悪いな剣!、俺は個人賞獲っちゃったよ。…いやー、これで俺が一歩リードだな。」
「なんだと重!。たまたまだろ。…確かにお前が倒した奴はキープレイヤーっぽかったけどよ。」
「ふふ、重君おめでとう。」
「重さんおめでとうございます!。個人賞なんてすごいです!。」
『テクニック賞は該当者が2名います。卓越した技術を持つ者は、ニホン若草大樹選手、光華王白凛選手の2名です。』
「やっぱ大樹さんか!。これは予想通りだね。」
「そうですね、大樹さんの魔法は見ていても驚きがつきませんから。」
「ありがとう。でも僕はこれからも魔法を昇華させ続けるよ。君達に負けないようにね。」
「白凛、よくやってくれた。お前には父上のことといい面倒をかけるな。」
「気にするな我が友よ。これからの光華はお前次第なのだぞ。」
「あぁ、分かっている。」
『攻守に優れた魔導師を叙するユーティリティ賞はユーロのルドガーメイゼン選手です。』
「ルドガー、やったな。ユーロ初個人賞だぞ。」
「分かってるよフランク。でも俺かぁ。ルーナが選ばれると思ってたけどな。」
「私は結局のところ誰にも勝てていませんし、ほぼ封殺されましたからね。…そのおかげで彼とも出会えましたが。」
「ん?なんか言ってルーナ?。」
『味方を生かし助ける行為。ある意味戦場で最も尊いその行為に全てを賭けたのはユーロのハンナフラン、ヨンナフラン選手です。2人にはサポート賞を贈ります。』
「嘘、私達が選ばれたの?。」
「やった!、凄い、すごい。」
「ハンナ、ヨンナ!。私は貴女達を誇りに思うわ。着いてきてくれて…ありがとう!。」
「ううん!私達に道をくれたのはルーナだもの!。それがなきゃ私達、何もできなかった!。」
「ルーナ!褒めて、褒めて!。」
『最後になりますが今回の親善会の最優秀選手を発表いたします。近接、遠距離をこなし、優勝国ニホンの勝利に大きく貢献した…、火祭剣選手が選ばれました!。盛大な拍手をお願いします!。』
会場に割れんばかりの拍手が響く。
「…え!マジで⁉︎俺かよ!。…うわー、マジか…。」
想定外という風に焦る剣。
「…やはりそうか。俺がソードに選ばれた時点で想像はしていたがな。…これはやはりやらねばなるまいな。気持ちよく卒業できん。」
しかし創士は分かっていたという風に剣を見る。そして呟くように言葉を発する。それを聞いていたのは隣にいる真利谷と後ろで笑みを浮かべる若草だけだった。
「…くそー!そっちかぁー。俺の個人賞より上だよなぁ。…んー、……まぁおめでとう剣。」
「お、おう。…まぁ予想してたし?俺の実力を考えれば当然?な感じだし、焦ってなんかないし?。」
どう見てもテンパっている剣。
「剣くーん!おめでとう‼︎。ねぇねぇ、どんな気持ち!嬉しい?嬉しいよね!。私も嬉しい!やったぁ!。」
そこに花凛が飛びついてくる。そして口早に捲したてる。
「ちょ、声がでけーよ!。みんな見てる!みんな見てるから!。離れろ!。っておい!あんた兄貴だろ!何、微笑ましい光景でも見てるみたいな顔してんだよ。」
「いや、妹の成長が嬉しくてね。どうぞ続けてくれて構わないよ。」
「俺が構うんだが⁉︎。」
各国から別の意味で注目された剣だった。




