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変わらない日常

「…うーーーん!。…なんか久し振りにゆっくり出来た気がする。」


「そりゃそうだろ。この大会は誰が出るかも分からねーんだから直前まで鍛錬するのは普通だ。それが終わったんだからゆっくりしてもバチは当たらんだろ。」


「そうです!。お二人は今日まさに死闘を繰り広げていたんですからゆっくりしててください。私が晩御飯の用意をします。…私役に立たなかったですし。」

 重達は全星寮に帰ってきていた。伸びをしてリラックスする重とその隣にいる剣。そしてその2人を労わるように家事を買ってでる澪。


「…矢沢が出なかったのは相性の問題だろ。お前が何か劣っていることありえねーよ。それは俺らが保証する。」


「そうだよ、澪ちゃん!。」

 自虐のような言葉を言う澪に慌てて重と剣がフォローを入れる。


「ふふふ、分かってますよ。私はもう自分の力を疑うのはやめたんです。お2人のお陰なんですよ。」

 その2人の様子を見た澪が微笑みながら言う。先ほどの自虐は心からの言葉ではない。どこか闘争の緊張が抜けていないように見えた重と剣の体から力を抜かせるためのものだった。その思惑通り2人は脱力して座り込む。


「…もう、澪ちゃん、…」


「やめてくれよ。俺らは女子の扱いには慣れてないんだ。」


「剣さんは妹さんがおられるのではないのですか?。それに花凛さんもいますよ。」


「妹はノーカウントだ。花凛も、んー妹みたいなもんだからな。ノーカウントだな。」

 哀れな花凛は剣に女扱いされないようである。


「それは花凛には聞かせられないね。いや、寧ろ聞かせてみても…」

 剣の発言を聞いていた若草が会話に参入してくる。その発言は剣にとって見逃せないものだった。


「絶対にやめろよ⁉︎。あいつめちゃめちゃ煩くなろだろ!。」

 耳元で騒ぎ立てる花凛の姿がありありと思い浮かぶ剣。


「…ふあぁぁー、今の剣の方が煩いよ。」


「俺は何も悪くないだろ!。」

 何もない平和なやりとりが戦いの終わりを告げているような気がした。






「さぁて、出来たよ2人とも。」

 若草の声が響く。リビングには既に美味しそうな香りが漂っていた。


「あ、ありがとうございます。…おい、剣!起きろよ!。」


「んお⁉︎。…寝てたのか。うーん、やっぱりまだまだ鍛錬が足りねーんだろうな。手の痺れもとれねーしな。」

 重に起こされた剣は自らの右腕をさすりながら言う。剣が最終戦で用いた白く輝く大剣は剣の身を削って放つ魔法だった。その消耗がまだ癒えてはいなかった。


「…剣君のあの魔法を見た時、創士さんが震えていたよ。そしてやらねばならないと言っていたね。」

 席に着いた重と剣の前に皿を置きながら若草が言う。


「…あの大樹さん、創士さんが楽しみが増えたと言っていたんですけど…」


「僕は何も聞いてないよ?。大体想像がつくけどね。創士さんは剣君と戦いたいんだと思う。あの人は自分の武器錬成に誇りを持っている。そこに単純な攻撃力だけで言えば自分に勝る可能性のある魔法を使えるようになった剣君がいる。当然の行動だと思うよ。」


「…そうか、まぁ俺もガチのあの人とやってみたかったしな。ちょっと時間をおいてくれるならやってみたいぜ。卒業まで時間もないことだし。」


「いーなー、俺もそろそろ七星の誰かとガチでやりたいよ。…大樹さんどうですか?俺とやりませんか?。」


「ごめんね、僕は霧島君と戦う約束をしているんだ。」


「え、本当ですか!。それは…俺なんて相手にしてる場合じゃないですよね。…羨ましいなぁ。」


「あの、すいまけん。実は私も…」


「え!澪ちゃんも七星予約してるの?。誰と!。」


「あの、東堂さんなんですけど。私が特訓してるときに…『今度その全身を包み込んでくれそうな痛みを味わいたい』と言われまして。」


「…そっか。俺だけ余りものなのかぁ。」


「…でも、明日の個人賞を俺が取れてれば誰かが相手をしてくれるかもしれない。あんま落ち込むのはやめとく。」


「そうだぞ、重。考え…バグっ…すぎて…ング!。…これうめーな。…えーとなんの話だっけ?。あ、これどっちが作ったんだ?。」


「それは私が作りました。」


「そうか、お代わりある?。」


「はい!今入れてきますね!。」


「サンキュー、…考えすぎても何にもならないぞ。」


「うん、剣を見てたら悩むのが馬鹿馬鹿しくなったよ。…俺もお代わりもらってくる。」

 締まらない日常。しかしこれが彼らの日々の活力になっていた。

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