落ちた凶星
「…本当に…消えるんですね。」
重の手がユガナに触れる。その瞬間ユガナの明王が姿を消す。
「…貴様…!。よくも!よくも!…L5『明けの明星』‼︎。」
明王を失ったユガナは憎悪を込めた眼差しで重を睨みつけながら魔法をの唱える。
「な、なんだこれは…。」
例え明王を封じられても、性格に問題が多々あってもユガナは強者である。ユガナの頭上に小さな火球が出現する。迸る魔力と高速の回転は不気味な雰囲気を醸し出していた。
「…あれは!。…李白、あの涙を防ぐ約束を違えるなよ。」
ユガナの魔法を見た剣が突進する。L5の修練をした剣には覚えのある魔法だったのだ。明けの明星から始まり宵の明星へと繋がる2段階の魔法。周囲の魔力を吸い取り成長する。つまり重の魔力も使って成長することになる。
「…ここまでか。まぁ、今回の王様はあいつだ。ならばこの身を剣として捧げてやるよ。『鬼王の槍斧』『風纏螺旋槍』‼︎。」
両手に槍斧と長槍を錬成。火球に向かって斬りかかる剣。
「お前!…そうか、お前もL5の使い手か。ならば知っていてもおかしくはないな。だが…分かるだろ!もう間に合わないんだよ!。爆発する、私はこいつの手が離れた瞬間L6で護られるから助かる。こいつは終わる!。」
「させねーよ。その為に俺は全てを賭けるんだからな。…合成!。」
「…剣!、お前…そんなのいつの間に!。」
「今…だよ!…『神滅の聖剣』。」
剣の手には白く輝く大剣が握られていた。しかしその輪郭は朧げでどこか危うさを感じさせる物だった。
「なんだそれは!…まさか…お前…」
「はぁ、はぁ…ぶっ飛べ!。」
『スン……』
剣の持つ大剣の一振りで火球は搔き消える。それと同時に剣の大剣も消滅。更に剣の腕は崩壊し、その代替によって一気に魔力を削られる。
「…剣!」
「重!、後は…任せた。」
『ニホン代表火祭剣脱落です。』
「…クソがぁ‼︎。…だが!1人死んだな!あいつが切り札だろう!。…次はお前が…」
「李白今だ!。」
「…『堅板・十重』‼︎。」
重の声に反応して李白が無属性の壁を重の前に生成する。
「…L1『篝火』×100‼︎。」
「…っく、目くらまし…っ!まさか…!。」
閃光に目を閉じるユガナ。そのせいで思わぬタイミングで涙が溢れる。
『ドゥーーン‼︎』
「…げほげほ…良くも…暴発…を…」
「…この隙を作りたかった。その為に剣は自ら体を張ったんだ!。俺が仕損じることはあり得ない‼︎。」
重はユガナに触れている手を軸に上段の蹴りを放つ。それをきっかけに乱打を加える。
「…がっ⁉︎…この…ごっ⁉︎…やめ…発動しろよ!明王!。何故だ!…」
「発動するわけないだろ!。何故なら常に触れている。これは純粋な体術。俺が勝ち残っていく為に磨いた武器だ!。」
重の脳裏には生徒会書記の並木との鍛錬。生きる道を探る中で習得した近接がこうして身を結ぶ。
「…この!この!この!…クソ野郎がぁ‼︎。」
ユガナが叫び声をあげるが彼女にこの状況を打開する手立てはなかった。何故なら接近戦はユガナが切り捨てた分野だったから。だからこそユガナは敵の接近に対しての対策を積んでいた。その対策をかいくぐられ打つ手を失っていた。
「…積み重ねられた情報がこの欠点へと俺を導いた。…この拳は…重いぞ!。」
重の拳がユガナの顔面に突き刺さる。なんの魔法でもないただの拳。しかしそれが魔導師ユガナに最も効果的であった。
「…がっ………、…痛い、…痛い…痛い!。お前、お前、…だが!手を放したな!出てこい明王!。」
重の拳で殴り飛ばされたユガナは地面を転がり叩きつけられる。腫れる頬を抑えながらそれでも好機とL6を発動しようとする。
「…おい、…何故だ…なんでこない!。…っ、なんだこの感覚は…意識が…薄れる。」
しかしL6は発動しない。それどころか体から力が抜ける感覚がする。戸惑うユガナに李白が歩み寄る。
「…その感覚が魔力切れの感覚だ。ただでさえ大技を連発して更に傷も負っている。…あんたは考えなかったんだよ。自分が劣勢になることを。その結果が完全なガス欠。」
自らの思い通りになると信じて疑わなかったユガナ。その為に必要のないところで大技やL6を使い魔力を無駄にする。その積み重ねがこの状況を招いていた。
「…そんな…くそ、この私が!…カス…どもに…。」
「俺はあんたにトドメを刺さない。これからの最後の戦いに使いたいからな。あんたはそこで1人で静かに脱落してろ。」
李白の口から出る言葉は戦士にとって最大の屈辱を味あわせるものだった。最早お前に魔法は使う必要はない。それは霧島がキングにトドメを刺した行為の真逆に位置する行為だった。
「……だめだ。L 2『火炎』×10、収束!。」
それを見ていた重が一筋火線を放ちユガナにトドメをさす。その火線を受けたユガナは重を睨みつけ気を失った。
『アメストリア代表ユガナ・ローレンス脱落です。』
「…お前、なんで!。」
「そこで違ったら同じになるよ。俺は魔導師としてこの戦いに勝ちたいんだ。」
構えをとり李白と正対する重。
「…悪い。…俺も少し歪みだしてたな。だが目が覚めた。さぁ、八神重!尋常に勝負。」
李白も無属性の鎧を纏い重の前に立つ。ニホンが勝つかそれとも次のラウンドに持ち越されるか。その命運を託された2人の戦いが始まる。




