辿り着いた一手
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次の更新は9月16日になります。
「…[夜炎』…『火剣』双腕‼︎。」
「…いくぞ、『鬼王の槍斧』…L5『風雅の追い風』。」
「…『定立方・羽衣』…『無手斬』。」
重、剣、李白がそれぞれ近接の為の魔法を唱える。蒼い炎の双剣を装備した重。槍斧を担ぎ更に自身の移動速度を風の魔法で底上げする剣。無属性を薄く幾重にも重ね合わせた鎧を身に纏い手には球体の無属性を持つ李白。
「来るならさっさと来いよ!。殴り、捻り、コロしてやる。」
ユガナも口で挑発するようなことを言うが背後で明王が構えを取り、ユガナ自身も魔法の詠唱を備えている。
「…うおぉぉぉ!。…L4『斬大地』‼︎。」
初手を打ったのは剣。斬大地で目くらまし兼牽制をかけながら突進する。
「…L4『地縛葬』。」
ユガナは局地的な地震を発生させ斬大地を無効化。剣の攻撃を明王の右腕で受け止める。
「…削れ!。」
受け止められた剣はそのまま槍斧を縦に引く。硬いもの同士がぶつかる音が響きその結果明王の腕に斬り込みが入り青い煙が吹き出す。
「お前っ!。…よくも…。だが…死ね!。」
ユガナは憤怒するが空中にいる剣を見て反撃に出る。明王の左腕が剣に襲い掛かる。
「…っ…受けれるか?。」
「どけ!。『無手斬・虚』‼︎。」
槍斧を水平に構えて防御の体勢をとる剣を押しのけ李白が割って入る。その手の無属性を瞬時に変形させユガナの攻撃の角度をずらす。
「…ちっ、だが…『蓮華』‼︎。」
一撃は逸らされたユガナ。しかしその間にも右腕は回復。両腕での連打を開始する。
「…これは受けれない。…『定立方・炸裂』。」
防御が出来ないと悟った李白は自らの魔法の爆発でその場を離脱する。
「…ここだ!。」
ユガナの視線が上空の2人に向いたいる。そのタイミングで重は出たとこ勝負の魔法を使う。
「…くっ、お前…さっきより…」
白凛が使った火属性での爆発的な加速。それを用いてユガナの懐へ潜り込む。
「…食らえ!。」
潜り込んだ勢いそのまま火剣をクロスするするように走らせユガナの体に斬りかかる。
「…届いてない⁉︎。」
しかし重の刃は届かない。ユガナの体には土が纏わり付いておりそれが刃を止めている。
「…私は普通に強いと言ったはずだ!。そう易々と触れれると思うな!。」
真下に向けて振るわれる豪腕。それは重を押し潰す為のものだった。
「…っ…!。」
それを見た重は離脱が頭をよぎる。
「重!そこで踏ん張ってろ!。俺が叩っ斬る!。」
横薙ぎに槍斧を振るう剣。プシュという音がして腕に亀裂が入るが切断までには至らない。
「…馬鹿め!さっき斬れないことは…お前!何故退かない!。」
ユガナの前にいる重は明王の腕を恐れることなく双剣を乱舞のように振りかざしユガナの防御を崩し始めた。
「剣がやると言った!。なら俺はそれを信じるだけだ‼︎。」
一心にユガナの防御を突破しようとする重を鬱陶しそうに睨むユガナ。重の言葉はユガナの心をイラつかせる。常に自分だけが勝ち、自分だけの力しか使っていなかったユガナには到底理解出来ないことだった。
「…火祭剣!。そのまま斬り裂け!俺が稼ぐ!。」
重の頭上に無属性の壁を張り続ける李白。僅かでも時間を作ることによって剣がもう一度刃を振るう時間を確保する。
「…研ぎ澄ませ…。一振りの刃となれ!。」
槍斧をもう一度振りかぶった剣は体中の力を集約させ自身を柄に見立て横薙ぎに振るう。
『…プシュ!…ギギギ…ブシャァ‼︎』
斬り、削り、断つ。明王の右腕は遂に前腕のあたりで断ち切れる。
「…が⁉︎…なんだ!この…痛み……まさか…そんな…ことが…」
その瞬間自分の右腕を左手で抑え叫び声をあげるユガナ。今まで傷つけられたことすらなかったこの魔法。それ故に知り得なかった代償。傷つく事は良い、しかし裁断されるような使い手に御される気は無い、と言うかの如く襲い掛かる痛み。その痛みは致命的な隙を生むことになる。
「…はぁ、はぁ、…辿り着いたぞ!。」
ユガナが視線を上げた時その体に重の腕が触れていた。




