近づく終
「五刀流⁉︎…なんて言うと思ったか‼︎。俺は…負けない!。」
重は白凛の全身を使った回転をその両手で防御する。夜炎を纏った腕を交差するように体の前に構え白凛の回転を止める。
「…見事。」
重に抱えられる形になった白凛が零す。その顔には笑みが浮かべられていた。
「…L 2『火炎』×1000、を膝に集約。…『火燕』‼︎。」
固定された白凛の鳩尾に重の膝が突き刺さる。その衝撃で白凛は口に咥えていた刀を離す。
「がっ!、………まだ…」
そのまま手に持つ刀も落としそうになるが寸でのところで握り直し、斬りかかろうとする白凛。
「でしょうね。…『火燕』‼︎。」
それを予期していた重は素早く右膝を引く。そしてその勢いのまま今度は左の膝を突き刺す。
「…ごぽぁ!。…時間か。………もう一度…名を聞かせてくれるか?。」
「…八神重、…ニホンの国家魔導師になる男の名だ!。」
「…八神重…この心に刻もう。そして…いつか必ずお前の元へもう一度来る。その時は…また相手をしてくれるか?。今度はタイマンで。」
「…勿論です。…勝つのは俺ですけど。」
「…ふっ…」
白凛は1つ顔に笑みを浮かべるとその手に持つ刀を手放す。
『光華代表王白凛脱落です。』
白凛の脱落が宣言される。
「…強かった…。…って!ヤバい!。」
白凛を倒し一息つこうとする重。しかしその足元から蔦が湧いて生えてくる。
「重!。やはり君は最高だ!。…さぁ雌雄を決する時だ!。『樹海僧衣』。」
ルドガーが身体中に植物を巻き付け鎧を形成する。ルドガーが誇る最終決戦装備だった。そして掲げるのは右腕。樹々が脈々と生え出て巨大化する。大量の魔力が練りこまれていた。
「…ルドガー!。…お互いに譲れないものがある。ならば語るのは…これでだろ。」
重も蒼い火拳を発動する。お互いに視線を交えた2人は一歩一歩距離を詰める。そしてついに攻撃範囲に到着し止まる。
「…ヨンナ、ハンナ、ごめん。これは俺の我儘だ。だけど男として…この勝負を避ける選択は出来ない。」
ヨンナとハンナを囲っていた植物が萎れ球体を維持できなくなる。その魔力も使い攻撃にうって出る。
「…勝手にしなさい。…私達はあんたがいないと…どうにも出来ないんだから。」
「ルドガー!。ファイトー!だよ。」
「………いくぞ。」
「…あぁ。」
重とルドガーの拳が交わる。それぞれの国の未来を担う新星の意地と意地がぶつかる。
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「うざい、うざいよ、お前らなんで消えない?。この私が消えろと言っている!。」
銀城に顔面を押さえられ地面に叩きつけられたユガナが吠える。その表情は狂気に染まる。
「別にあんたの言うことを聞く必要なんて私にはない。…喰らえ!。」
銀城の炎の尾が叩きつけられようとする。しかし…
「…舐めるなよ、さっきは油断しただけだ。さっさと!死ねよ!。」
炎の尾が明王の腕に掴まれ逆に銀城が宙に吊られることになる。そしてそのまん地面に何度も叩きつけられる。先程までのいたぶるのとは違い銀城を壊すのみを目的とした攻撃だった。
「…ふふ、ふはははっ‼︎。私に逆らうからだ、蟻は人間に対抗できるか?…否!、ただ踏み潰されるのみ‼︎。」
「…何故アナウンスが流れない?。…」
銀城の脱落を告げるアナウンスが流れないことを訝しむユガナ。確かめようとする瞬間アナウンスが鳴り始める。その音で動きを止める。
『アメストリア代表リリアン・クラウド脱落です。』
しかし鳴り響くアナウンスはユガナの望む内容ではなかった。
「…カスが!、何の役にも立たない。」
ユガナは更に苛立ちを募らせる。
「…剣君は役目を果たした。なら…一応先輩の私が何もしない訳にはいかないよね。」
炎の翼で自らの身を包み衝撃を耐えていた銀城が羽ばたきユガナの明王から抜け出す。
「…ひょっとしたらの可能性。試すのは今しかないよね。」




