表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
205/300

動いた戦況

「この俺が守りに徹するしかない!。その状況を作り出したお前に俺は最大限の賞賛を送る!。だが!勝つのは俺だっ!。」

 リリアンがその手に纏う魔力の密度を更にあげる。更に無詠唱で、炎の盾を複数錬成する。宙を浮くそれらは剣の行動を一瞬止めるだけもの。常人では何も意味をなさないであろう一瞬でも天賦の身体能力を持つリリアンであれば充分であった。


「…はぁはぁ、…いくぜ。」

 剣が前に出る。槍斧を肩に担ぎリリアンの出す炎の盾に向かう。


「…先にそっちを片付けに行くか。この状況でも冷静じゃねぇか。だが…俺が突っ立ってると…思うなよ!。」

 リリアンの姿が消える。次の瞬間剣の背後には両腕を握りして振り下ろそうとするとリリアンの姿があった。


「…く、た、ば、れ!。」

 振り下ろされる人間の力を超えたアームハンマー。いくら無理矢理身体能力をあげていると言っても間に合う状況ではなかった。リリアンは自身の勝利を確信し振り下ろす。


「…どう…やって…。…何故見ずに完璧なカウンターを!。」

 だが槍斧の先端がリリアンの右肩を貫いていた。振り下ろす直前最も力が集約した瞬間に突き出された槍斧。極限までの集中故に狭まった視界。剣の攻撃にリリアンは反応出来なかった。


「…信じたんだよ。あんたなら守るよりも自分の手で勝負を決めに来るってな。俺が防御を崩しにいけばその隙を必ずついてくる。」

 リリアンの方へ向き直りながら剣が言う。話しながらもリリアンの全体を視界に入れている。


「…がっ…この……」

 リリアンが左手で槍斧を掴み体から引き抜こうとするが剣がそれを許さない。


「…っ…はっ、…俺の負けだな。」

 リリアンが槍斧を掴んでいた腕から力を抜く。そして腕に纏っていた魔力も飛散する。


「…誇れよ。お前は…俺より強い。だが…あと1人のアメストリア代表は…強いぞ。人格に多々問題を抱えるがLevel6の魔法を使いこなす本物の…化け物だ。」


「…何でそれを俺に…。俺もあんたを倒すのに…全てを使っちまった。もう…」


「良いから聞け。あいつの魔法はその身に明王を降ろす、攻防一体の魔法だ。その明王が蒼く染まった状態では…無双を誇る。」


「…分かっている。話したところで…何も変わらない。あいつが勝ち残り…その権利を使い1人復帰。そして次の回で全て倒して終わらせる。めでたくアメストリアの優勝だ。」

 現状最も脱落者の少ないニホンが3人。今回3人負け、更に次にも3人負けて、その後の権利で1人脱落させられれば敗退となる。


「…これが…知れたら…怒られるかもな。」

 そう言いリリアンが左手を剣に伸ばす。


「…っ⁉︎。何を!。」

 当然剣が反応するが、


「もう…足掻いたりしねーよ。…俺より僅かに強いお前が…どこまでいけるのか。その可能性を見せてくれ。」

 リリアンは左手を槍斧に添えるように当てる。


「…⁉︎。これは…」


「やるよ…俺の残りだ。い…いか。ユガナ…の唯一の…弱…点は…「………………」…だ。」


『アメストリア代表リリアンクラウド脱落です。』


「……次だ。…重、俺は役目を果たしたぞ。お前も早く来い。俺がアメストリアの化け物を抑えてやる。」

 いつのまにか呼吸も整った剣。その場の勝利に酔いしれることなく次の役目に向けその場を離れる。ニホンの勝利の為に。

 ーー-------------------ー

 リリアンの脱落の報はこの戦場で様々な変化をもたらした。


「…リリアン、ってことは!、剣がやったのか。…俺も負けてられない。」

 1人は友の武勇に心を震わせ自らの力と変える。その眼前の大木を打ち倒す為に。


「…カスが。何の役にも立たない。このお遊びが終われば…全員殺してやる。」

 1人は自分の思い通りにならない同胞に苛立ちを覚え怒りに身を震わせる。そして全てを自分自身の力で終わらせると決意する。


「…剣君。あの時は…私と一緒で…東堂ちゃんに守られるだけだったのになぁ。なら…一応先輩の私も何かしないといけないよね。」

 他を慮る心を手に入れた眠れる暴君はその身を蒼く染め目の前の狂人に立ち向かう。個人ではない、自分のできることをこなす。この場に残る2人の後輩の為、その才を費やす。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ