恵みの属性
「俺は現存する全ての特異属性を再現できる。…と言っても自己変化じゃないから、帝相手には厳しいけど他の属性で戦うから負けるつもりはない。」
ルドガーが手を振るとマグマが指向性を持ち重と白凛の元へ向かう。
「…溶岩か、触れたら終わりってずるいだろ。」
重は両手に火拳を発動しながら呟く。
「…うむ、…驚きはしたが…差し当たって問題はないな。何故なら俺は九老とも研鑽を積んだのだから!。」
白凛が地面を流れるマグマの上に足を踏み入れる。そして何も何かのようにルドガーの元へ接近し刀を振るう。
「…ちっ、固まれ!。…」
接近する白凛の前に黒く固まった溶岩が立ち塞がり白凛の進路を遮る。
「…1つ、俺は九老の最硬を破れなかった。だがその時はこの刀を封印していた。俺がまだ振るうに相応しくないと思っていたからだ。しかし今、俺は…満ち足りた!。」
白凛が溶岩に向け小刀を振るう。ズズッ。という音と共に刃が溶岩を横に斬り裂く。そしてルドガーとの間に遮る物が無くなる。
「…肩借りますよ!。『夜炎』からの…『仄火』‼︎。」
ルドガーの溶岩を裂いた白凛の肩を踏みつけ重がルドガーに迫る。両手を前に差し出し夜炎を発動した重が放つのは蒼い炎の砲撃。それは従来の双火砲とは一線を画すものだった。同じ放射線ではあるが更に射線が細くレーザーのような炎だったのだ。
「…ここでその炎か‼︎。…『凍氷壁』。」
ルドガーが腕に風と水の魔力を纏い『氷』の属性を発現させ壁を築く。しかしルドガーは失念していた。ニホンにはあの帝がいることを。
「氷なら…真利谷さんより強いわけないだろぉ‼︎。」
重の仄火は氷の壁を打ち砕く。しかし背後から斬りかかってきた白凛を躱す為体勢を崩し地面に着地する。この場は完全に三つ巴になっていた。お互いがお互いの決定打を打ち消しあい、その結果魔力を消耗し続けている。
「…流石にやるよ、2人とも。だけどこれは…どうだ?。見たことのない属性を見せてやる。」
ルドガーが水と土の魔力を纏う。
「ルドガー!それは.まだ完全には!。」
ヨンナがルドガーの使う組み合わせを見て制止に入る。
「分かってる。でもこのままだらだらしててもラチがあかない。ならばリスクをベットする。」
ルドガーが両手を組み魔力を合わせる。しかし氷や溶岩の時のようにすぐさま魔法が発動しない。
「…ぐっ…くぅぅぅ…」
それでは魔力を練り続けるルドガー。
「称賛に値する敵が何かをする時を見守る程…俺は自意識過剰ではないぞ‼︎。」
「その通り、どんな策でも…最も攻略しやすいのは発動前だ!。」
白凛、重が無防備なルドガーに襲いかかる。お互いに敵を認めている。だから驕らない。
「…むふー、ルドガーは私が護る!。『相殺』『相殺』『相殺』…」
2人の前に立ちはだかったのはハンナだった。重と白凛の魔法を打ち消していく。
「…ハンナ!危ないからそこを退くんだ!。」
「ルドガーは私達を守ってくれる。なら今度は私が護ってみせる!。」
「…だが甘い!。自ら戦場に踊りでたのだ、相応の覚悟の上でだろう!。」
白凛の縮地によってハンナの反応自体が間に合わず刀の峰で殴打される。元々魔法を相殺することしか出来ないハンナ。体術はからきしであり、白凛の攻撃によって吹き飛ばされる。
「…ハンナっ!。…今成った。『鬼樹創葬』。」
ルドガーの足元から植物が生え成長する。太い蔦になったそれはハンナとヨンナを守るように球を描く。
「…この属性は『木』。例え幾ら倒されても立ち上がり恵みをもたらす実りの属性。そして時には全てを飲み込み自らの贄とする暴君だ。」