若草大樹
学園の廊下
「おい聞いたぞ若草大樹。今日の放課後闘技場の使用申請をしたらしいな。普段の実技ですら散歩して参加していないお前がどういう風の吹き回しだ?。」
男…この学園の生徒会長である創志が若草に話しかける。
「いやだな、創志先輩。それじゃあまるで僕が普段何もしてないみたいじゃないですか。」
若草が笑いながら答える。
「その通りだろ。お前が本気を出したのは一年生だった時のあの時だけだろう。それからは熱のこもったお前の目を見ていないぞ。それで…俺の質問に答えてもらおうか。」
一年生にして当時の七星の第五輝を倒し登りつめた男。その戦いで『超絶技巧』の二つ名を手に入れた男。その戦いを創志は見ていた。しかしそれ以来若草が本気で戦うところを創志は見ていない。
「ふぅ…そうですね。ご存知だと思いますが最近僕のところに一年生が来ましてね。その中の1人が夢坂君とやりました。結果は引き分けでしたがそこで自分の実力を知った。だからこそ僕が彼を鍛えることにしたんです。」
若草が創志に答える。
「夢坂当夜と引き分け?そんな話は聞いていないが…まぁ良い。そうか後輩か、そういえばお前はそういうやつだったな。…わかった。俺が聞くことはもうない。」
そう言い創志は振り返る。
「まぁ今日はたまたま俺も暇だし見に行くかな。」
「いや、暇ではないみたいですよ。」
若草が後ろを指差す。そこには
「会長、今日は会議が入っておりますので…暇ではないですよ。」
生徒会副会長にして第三輝真利谷氷雨がそこにいた。
「いや、でも、折角若草がやるって…。」
「ダメですね。さて行きますよ。…それでは若草君さようなら。」
そう言い真利谷が創志を引きずり去っていった。
「…あいかわらず仲が良い2人だな。」
若草は少し暖かい気持ちになった。
「おっと僕もそろそろ行かないと。3人を待たせてしまう。」
そう言い微笑みながら若草は闘技場に向かうのだった。
次回更新は10月19日です。