若草の思惑
「さてどうしたもんか…。」
重は1人部屋で考えていた。先日の夢坂との戦いにおいて自分の力が足りないことを自覚し、今後のことを考えていたのである。
「今俺にできることは魔法を撃つことだけ。ただの力押しなんだよな。何か考えないと。」
「悩んでるね重君。実際に七星とやってみてどうだった?。」
若草が尋ねる。
「今の段階では俺の多重魔法での力押ししかないのが現状です。これだけじゃダメなんです。」
「…そうだね。この際はっきり言っておこうか。君には成長の幅がない。確かに君の多重魔法の威力は眼を見張るものがある。でもね上の方ではそれだけじゃダメだ。」
若草が告げる。他の者は魔法を工夫することで成長の余地があるがLevel2の魔法までしか使えない重にはその方法が取れない。
「…と普通の人は言うだろうね。でも安心しなよ。僕は七星だ。君に一つの可能性を見せてあげる。明日の放課後決闘訓練をしよう。そっちは3人でも構わない。僕の戦いを見せてあげる。」
若草が重に提案する。自分との決闘訓練。それによって重だけでなく剣と澪にも伝えたいことがあったのだ。
「…倒してしまっても文句を言わないでくださいよ。」
重が言う。夢坂とやる前なら自分達3人を相手にできるはずないと断っていたが七星の実力の一端を知り悔しいながらも受け入れる。
「そうだねその時は晩御飯をご馳走にしないとね。」
若草は微笑みながらそう言うのだった。
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「ってことになったんだよ。だから2人とも明日の放課後は空けといてくれ。」
重が先程の若草とのやりとりを2人に話す。
「へーあの若草さんとやれんのか。…でもあの人の事なんも知らねーよな。」
「若草さんは『超絶技巧』と呼ばれているそうです。それがなんのことを指しているのかはわかりませんが…。」
澪が答える。
「『超絶技巧』?。何かが上手いってことだろ?。魔法か体術か。…多分魔法だろ。前に重と少し似てるって言ってたしな。」
剣が分析する。普段の様子と違いその眼には力がこもっている。
「とにかく若草さんは本気っぽかったからこっちも出し惜しみは無しで一気にいこう。多分それでやっと相手になるくらいだと思うし。」
唯一七星との戦闘経験のある重が2人に念を押す。こうして夜は更けていった。
次回更新は10月16日になります。