最後の戦いへ
「あぁ、おはよう重君。少し早くないかい?。残念ながらまだ朝食の用意は出来てないよ。」
朝いつもより早く目が覚めた重がリビングに入ると若草が机に座っていた。
「いや、なんか目が冴えちゃって…。それに大樹さん寝てないですよね。それに大樹さん…服変えたんですね。」
昨日の夜見た若草の服と現在着用している服が変わっていることに気が付いた重。
「ん?あぁ、少し汚してしまってね。気分もいい変えたかったしね。」
「それで…決まったんですよね。」
「あぁ、僕なりに考えたつもりだよ。これが現状ニホンが作り得る最高の組み合わせだと思う。」
「…そうですか。…ちょっと走ってきます。なんか…体が熱くなっちゃって。」
そう言って重は全星寮から走りでる。
「重君、それは武者震いって言うんだよ。…さて僕は朝食の用意をするとしよう。僕らの王が最善を尽くせるようにね。」
走り去る重の後ろ姿を見ながら若草が呟く。そして笑みをこぼすと若草のテリトリーであるキッチンへと向かうのだった。
『それでは各国5人を選んでください。』
アナウンスが響く。その声に従って各国5人の選手候補を送り出す。
『ニホン
八神重
銀城葵
火祭剣
真利谷氷雨
若草花凛
アメストリア
リリアン・クラウド
ユガナ・ローレンス
サクラ・スコリッシュ
アイル・カルラ
キリウ・マイル
光華
高陽香
宗李白
王白凛
苑象国
蘭鎮楼
ユーロ
ルドガー・メイゼン
ハンナ・フラン
ヨンナ・フラン
ナトー・ヘンゼル
マリア・スミス 』
「貴方達にニホンの勝利を託します。」
真利谷が言う。彼女は自らは出ないが選手登録で相手を警戒させる目的と、ある人物の付き添いで来ていた。
「…葵、貴女の本気を見せてください。」
銀城葵、努力をしない天才、そして敗北の痛みを知った天才。昨夜若草に自らの力を証明して再び戦いの舞台に上がる権利を得た。
「…んー、わかった。努力をするのは嫌だけど…負けるのはもっと嫌ってことがわかったから。…無くした物を取り戻したいしー、頑張っちゃうよー。」
気合いが入っているのかいないのか、いまいちはっきりとしない口調で銀城が言う。
「剣君、重君、頑張ってね。私は出れないけど応援してるよ、私は出れないけど!。」
花凛がその大柄な体をぶらぶらさせながら言う。
「いや、うるせーよ、未練がましいんだよ。」
「そんなこと言ったら悪いよ剣。俺たちは2回も出てるんだからさ。昨日創士さんが言ってただろ、みんなの思いを乗せて戦うんだよ。」
重が言う。重は昨日の勝利の権利として復帰していた。
「…分かってるよ。俺は前の戦いで東堂さんに任せきりで棄権したからな。あいつも出てくるみたいだし俺が倒す。」
剣の目の前の画面には李白の文字。以前の戦いでは圧倒され東堂の助けがなければ確実に負けていただろう。
「えー、待ってよ。わたしもその子に用があるんだけど!。」
それに銀城が口を挟む。自分を虚仮にした魔導師。無属性使い。銀城は李白と戦うためだけに戻ってきたと言っても過言じゃない。
「は⁉︎……でもよ…」
「こら、葵貴女は3年でしょう。後輩に道を譲ることも覚えなさい。」
「…いや、良いよ。俺が引く。俺の魔法ではあいつの魔法を斬れなかったの事実だ。だから…頼んだぞ。」
冷静になった剣が李白の相手を辞退する。悔しさはある。しかし無策で挑んで良い時と相手ではない。そう判断したのだ。
「あいあい!。」
「なら俺と剣はどうする?。」
「この中でデータがあるのは高陽香、宗李白とルドガー、そしてリリアンか。」
「リリアンは俺の魔法が効かなかった。対火属性特化だってさ。」
「成る程な、なら俺がやってみるか。無理なら…引く。間違っても熱くなりすぎないようにしないとな。」
「この高陽香さんは雷の帝ですね。やはりその速度、反射は恐ろしいですが…少し燃費が悪いようです。前回も魔力切れになりかかっていました。また夢坂君からの情報だと八雷神という魔法を使うそうです。その魔法は段階を経て満ち完成体は神と呼ばれる程だそうですよ。」
「うへぇ、それは相手をしたくないですね。出来れば回避したいです。ですが無理なら俺がやります。魔力量には自信がある。撃ち合ってやりますよ。」
「…あとは会長から言伝を預かっています。」
「…『勝て』。だそうです。」
「…うわーシンプルー!。」
「でも創士さんらしいですよね。」
「言われなくてもって感じだけどな。」
選ばれし3人が最後の戦いに赴く。




