最終局面へ
「どうした!切り替えが遅くなってきているぞ!。」
「貴方こそ、それだけの速度を維持するのは疲れるでしょう。」
「「早く楽になれよ。」」
創士と九老の戦いも終わりを迎えようとしていた。我慢比べの様相を呈していたこの戦い。それでも僅かに、僅かにだが天秤は傾き始める。
「…あぁ、くそ、こんな気持ちになったのは…いつ以来だろうか。」
そんな言葉を吐くのは状態が悪くなっている側である九老だった。幾ら新しい半溶半硬が有ると言っても相手は創士。付け焼き刃で勝てるほど甘くはない。決して無理に踏み込んでは来ず、けれども削れるタイミングでは最大に削っていく。圧倒的な技術と経験がなせる技だった。恵まれた才能がない中で魔導師として生きていくため、身を削り習得した物が後天的に顕現したlevel6と相まって今の創士を形作っていた。その創士を前に九老は自然と出る笑みを隠せないでいた。
「楽しいか?。…俺も楽しいぞ。『士牙龍突』。」
創士が唯是刀で突きの連撃を放つ。九老の体全体を有効範囲とした突きはその速度も加味され九老の体を穿っていく。
「ぐ、…ぐぐぐ。…はぁはぁ…」
九老は固めた半身をを前に出し溶岩の部分で受けようとするが今の創士の攻撃はそれだけでは収まらない。
「…少し借りるぞ火祭剣、…『風纏螺旋槍』。」
創士の手に剣の十八番風を纏う大槍が現れる。周囲の風を巻き込み空気の刃を作るその大槍を創士は九老に突き刺す。
「…ぐぅぅぅ!…まだ…です!。」
「だろうな、だが終わりだ。『壊刀』。」
またもや剣の魔法を使う創士。全てを壊すその刀を創士は横薙ぎに振るう。唯是刀、風纏螺旋槍、壊刀の三振りの武器。それぞれが破格の威力を持つ三振り。
「…がはっ!。…ふふ、シンプルに破られましたね。」
創士が言ったこの勝負の複数の行く末。我慢比べになるか…創士がシンプルに九老の防御を破るか。それを思い出した九老が少し笑いながら言う。
「…あぁ、ここまでか。…楽しい時間だったのかな。今までこんな気持ちになったことがなかったからわからないや。」
魔力による代替の光に包まれながら九老が言う。今までは光華で自分の居場所を掴むためだけに魔法を使ってきた。今回のように心が弾む感覚など知らないかった。
「ふん、俺は楽しかったと断言させてもらう。柳九老、貴様は強者だ。」
「…ありがとうござ…い……ま…」
創士の言葉を聞いた九老は最後に笑顔を見せるとそのまま気を失った。
『光華代表、柳・九老脱落です。』
「…次だ。さて…どうするか。」
アナウンスを聞き頭を切り替えようとする創士。そこに思わぬ知らせが入る。
『ニホン代表、若草大樹脱落です。』
「…そうか、奴がまけたか。残っているのは俺と霧島、そしてアメストリア1人、ユーロ1人。」
現状の把握に努める創士。この場合とる選択肢は3つある。1つは霧島が戦闘中と仮定して助太刀に向かう。2つ目は若草を倒した選手に相対する。3つ目はあと1人誰か脱落するまで身を潜める。1と2を選んだ場合自分と霧島が脱落するという可能性が出る。しかし3を選んで霧島が脱落した場合これまた三つ巴となり危険度が増す。理想は既に霧島が戦いを終えていて、それを回収して若草を倒した恐らく手負いの敵を倒すことである。だが今の状況では情報が少なすぎる。と考えあぐねていた。そこへ…
『…ドゥーーーン!』
ある地点から空に向かい魔法が放たれる。
「…成る程、ならばとる行動は決まったか。」
それを見た創士は歩を進める。自分がすべきことをなすために。




