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半溶半硬

「…雅峰さんも負けたか。…まぁ、あの人は…あれだしな。光華は僕1人。そして目の前には…しつこいですよ。」


「手負いの敵を逃すほど俺は愚かじゃないぞ?。それにそんな余裕をぶっこくつもりもないしな。確実に追い詰めていく。逃げたければ逃げればいい。追撃は有効だしな。」

 一度は噴煙に紛れて戦闘を離脱した九老。しかし創士は冷静に後を追い追撃をかけ続けた。遂には逃走を諦め勝負を決することを決める。


「…貴方と僕の相性は最悪になった。勿論悪いのは僕の側です。現状僕では貴方の速度に敵わない。そして唯一の勝機であった硬さ。これが破られた。僕は最硬の名も失った。ここまで打ち据えられた事はなかった。光華では勝ち続けてこの場所を勝ち取ったんだから当然なんですけどね。」

 九老が酷く冷たい表情で言う。そこから何かを読み取ることは出来ない。


(…くるか?。追い詰められた人間がとる行動は2つ。ヤケになるか…乗り超えるか。)

 九老の様子を見ていた創士は静かに集中を高め四肢に力を漲らせる。追い込まれた者の強さは何よりも理解している。自分がそうやって強くなってきたのだから。


「…何よりも硬く。何よりも熱く。流れ出る溶岩の如く全てを飲み込む自然となれ。」

 九老から白い蒸気が沸き上がる。


「…先程までとは違うか?。白煙…。黒煙ではないな。」


「…『半溶半硬』。」

 出てきた九老は半身が硬い溶岩、もう半身が熱く燃えたぎるマグマで形成されていた。


「…超えるタイプか!。…是唯刀!、いくぞ。」

 その姿を見た創士は駆け出す。九老は化けるタイプだった。ならその身体の使い方を理解する前に押し切る。そうしろと本能が叫んでいた。


『ギュゥゥゥィィィ…』

 創士が斬りつけたのは九老の右手。そこはマグマで形成されており安易に切れると判断した。しかし即座に左右が反転する。そして斬りつけた刀が埋まる。


「…喰らえ…『熔榴』。」

 入れ替わった沸き立つマグマ団の半身からマグマの榴弾を放つ。


「…面倒だな。…任意での切り替えか。…」

 素早くその場を離脱し考えを巡らせる創士。九老を斬るには渾身の力を込める必要がある。先程まではその動きの鈍重さ故それが叶ったが今の九老は半身がマグマ。大きな隙を見せるのはリスクが高すぎる。詰まる所九老の一手で創士は攻め手を封じられたのだ。


「自然を相手に人間が出来ることなんて何も無いんですよ!。」

 九老が手を振りかざすと地面からマグマの柱が飛び出る。更に九老自身も前に駆け出し創士に迫る。その表情は攻勢に転じたと思えない焦りのある表情だった。


「…おっと…。…面倒ではあるが…焦ってるな?。お前、あまり長くなってられないんだろ?。まぁそうだよな。そんな速さでの切り替え、更には既に削ってる。…ということは、」

 九老の表情を観察していた創士は九老の焦りを見抜く。そして打開の方法を導く。


「我慢比べだ。俺がお前にやられるのが先か、お前が魔力切れを起こして俺に斬られるのが先か…」


「はたまた俺がシンプルにお前を斬るのが先か。」


「いずれにせよここで1人は終わりだ。」

 創士が刀を目線の高さまで上げ構える。


「…勝つのは僕だ。貴方じゃ無い。」


「勝つのは俺だ。お前じゃ無い。」

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