湧き上がる新芽
「お前が何をしようとも…私の魔法はお前を撃滅する。それは…変わらない!。」
ルーナの指示によって四体の龍が若草に押し寄せる。
「結局のところお前を倒せば全てが終わる。その忌々しい人形も止まる。終われ!。」
押し寄せた四体の龍が地面にぶつかり爆音を響かせ地響きを起こす。辺りには砂煙が舞いその威力の凄まじさを物語っていた。
「四属性の攻撃だ。幾らお前といえど守ることも出来まい。」
「…その魔法少し仕組みが惜しいですね。」
砂煙舞う中若草は相変わらず地面に手をついたまま座していた。
「…な⁉︎バカな!。そんな事があるはずがない!。何らかの魔法で防御を試みたのならまだわかる。しかしお前は…その場から動いていない。一体…何をした!。」
舞い散る砂埃に目を細めるだけ、無傷の若草に対してルーナが問いかける。
「手品師が自らタネを明かすことはありません。ただ。僕は逃げも隠れもしません。よければ暴いてみてください。」
取り乱すルーナに対して追い討ちをかけるように挑発をする若草。ルーナの冷静な思考を奪っていく。
「…この…人をバカにしやがって。舐めるなよ。」
炎龍だけが若草に向かって襲いかかる。他の三体は反撃に備えるためかルーナの前に侍っている。
「お前のタネを見切ってやる。」
ルーナはその言葉通り炎龍が攻撃する瞬間を見逃さぬように見つめる。そして先程と同じように地響きを鳴り響かせ炎龍は体当たりをくわえる。
「…見たぞ。だが…なんなんだ一体。私の見たものは!。」
その瞬間に自分の目に写った物が信じられないのか叫び声をあげるルーナ。叫び声をあげて現実から逃避しているかのようだった。
「バレましたか。まぁ別に隠す気もありませんでしたが。…おいで。」
若草の前に大樹くんより更に小さな大樹くんが地面から現れる。それは徐々に大きさを増し大樹くんと同じくらいになる。それは一体だけではない。地面から次々と現れ成長する。それは植物が芽吹き成長するかのようだった。
「貴女の魔法は対物に発動を絡めている。つまりある一定以上の質量の物に触れれば攻撃が成立したと判定される。なので僕に触れる前にこの子達にぶつけました。」
「…もう勝った気なのか?。ペラペラと自分の魔法のことを語るなど…。愚かにも程があるぞ。」
「私の魔法がこの龍だけど思うなよ。直々に叩き潰せばいい。四肢に灯れ。」
ルーナの四肢に各属性の魔法が宿る。
「…四属性を使えるだけでなくそこまで使いこなす人は中々いない。…僕の糧になってもらいます。」
若草の周りにも次々と湧き上がりルーナを迎え討とうとする。
「…いくぞ。」
駆けるルーナ。湧き上がる大樹くんを片っ端からなぎ倒す。
「その子たちはただの人形じゃないんです。僕そのものだ。」
若草も見ているだけではない。大樹くん達も構えを取りルーナを迎撃する。中には魔法を用いる物もいる。
「…な⁉︎…ただの木偶ではないということか。それなら龍撃!。」
待機していた龍達も参戦。ルーナの隙を埋めるように立ち回る。幾多の大樹君とルーナ、四体の龍が入り乱れるその場所は属性の火花が散る爆心地だった。
「…はぁはぁ…!。そこを…退け!。」
その中ルーナの目の前が拓ける。
「…貴様のその手が魔法の発動キーなのは分かっている。L 4『風切り舞』L 4『火煌』。」
ルーナから若草に一直線に魔法が放たれる。速度を重視したそれは若草に回避以外の選択肢を与えない。
「…っ…。」
「今だ!薙ぎ払え!。」
大樹くんの発生が止まったことを確認したルーナ。龍を動員し既存の大樹くんを掃討しようとする。若草に対しても追撃を加え地面に手を当てる隙も与えない。次々と数を減らす大樹くん。
「万策尽きたか?。これでお前を守る物は…」
「僕ばかり見ていたいいんですか?。この魔法は2人で1つ。もう1人いたでしょう?。」
若草の言葉を合図に再び湧き上がる大樹くん。その中心には最初の大樹君がいた。振り返ったルーナは言葉を失う。
「…僕は性格が悪いんですよ。」
ルーナの魔法を防ぎきった若草が不敵な笑みを浮かべていた。