湧き上がる新芽
「まぁ、確かに今回は僕の確認不足です。三位一体と言う言葉に踊らされ四体目の存在を考えなかった。まさか4属性使いだとは思いませんでした。」
若草が戯けたような口調で言う。既にその行動はある指針によってとられている。
「その割には余り驚いていないようだな。それに…言っただろ、お前の戦いは見させて貰ったと。お前は相手の手札を加味し確実に上回れるように立ち回る。逆に言えば…何か切り札があれば全てを狂わせることが出来る。」
若草の態度に若干の苛立ちを覚えながらも若草の心を折るべく弱点を露呈させる。お前はもう狂わされた跡。お前に勝ち目はなくなったと。
「…そうですね、自分でも思いますよ。僕は嫌な性格だろうなって。敵の分析をする。そして勝率を計算する。勝てないなら戦わない。僕も男の子だ、負けるのは嫌なんでね。」
「ほぅ、なら…今からでも引いてもいいぞ?。お前を相手にするのは骨が折れることがわかった。合理的ではないからな、無理には追わない。」
ルーナの発言。これはルーナのある無意識の感情から出た提案だった。
「…んー魅力的な提案ですが…、さっき話したのは昔の僕なんですよね。この半年で心境の変化がありまして…挑むのも悪くないなと。その方が男の子してるかなっと。」
「それに…まだ僕の中では勝率は五分五分。ならば戦いわない理由はないんですよ。」
「…地龍も見てまだ五分五分だと?。思い上がりも甚だしいぞ。」
ルーナの背後に地龍も含めた四体の龍が居並ぶ。
「僕の戦いを見ていたと言いましたよね。貴女ほどの人が何故疑問に思わないんですか?。」
若草が地面に手を当てながら言う。その後ろでは大樹くんも同じように地面に手を当てていた。しかしそれを咎める余裕はルーナから奪われていた。
「…待てなんの話だ?、疑問?…一体…」
若草の言葉の意味が分からず茫然とするルーナ。その心の中では先程の一連のやりとりも加味され若草に対する恐怖が芽生えつつあった。地龍を伏せていたお陰で助かったとはいえ完全に詰められた。その事実は打ち消せない。
「僕が3人を相手に本気ではなかった可能性ですよ。」
「…それこそ虚言が過ぎるぞ。仮にも各国の代表に選ばれている戦士達だ。それにお前が倒したユーロの選手は我が友だ。同じ志を持つ盟友だ。それを相手に手加減したなど…」
「だから言ったでしょう。行き過ぎた信念は身を縛る呪縛となるって。僕から言わせれば其れこそが驕り。」
若草がため息をつくように言う。一見するとルーナをバカにするようなこの行動。しかしそれも若草の手段に過ぎない。
「…口ではなんともでも言える。このやり取りに意味はない。いつの時代も考えを押し通すのは力のある者のみ。いけ…!。」
ルーナがタクトを振るかのように指示を飛ばす。それに導かれるように龍が襲い来る。
「…僕は意味のない行動はとりません。この会話にも意味はあった。現に貴女は僕にある物を与えた。時間…それがこの局面を打開する手立てとなる。」
「さぁ、性格の悪さに定評のある僕が贈る新魔法『湧き上がる新芽』。」
「貴女が初めての犠牲者になる。」
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