移りゆく戦況
「…くっ、『逆巻く風』!。」
後ろから右肩を貫かれたキング。痛みに顔をしかめるも怯むことなく反撃に転じる。左手に圧縮した風を生成。それを雅峰に放つ。
「…うむ、やはり戦場とは違うな。本当の戦なら肩を抜かれた時点で役立たずになるというのに。」
キングの放った風をかわしながら雅峰が言う。その言葉は本物を知る者の言葉だった。通常肩を貫かれれば腕が上がらずまともに戦えなくなる。
「まるで自分は戦場に出たことがあるみたいな言い草じゃねーか。『魔弾・水仙夏』。」
霧島が雅峰に水の弾丸を放つ。放たれた弾は空中で枝分かれし面で襲いかかる。
「…ふん、来い!。」
雅峰が扇に手を伸ばす。すると扇が引き寄せられ霧島の弾を弾く。
「………!。くそ、いつの間に。『魔弾・疾風』」
キングと雅峰2人に銃口を向け警戒していた霧島。しかしいつの間にか足元の地面に魔力が集まっていることに気付く。即座に発砲。吹き出した風の勢いでその場から離れる。
『…ドォォォォォ…ン』
地面が割れ更にそこから火柱が上がる。
「…今のは雅峰の方か。うぜーな、無詠唱系男子かよ。」
「俺も忘れるなよキリシマ!。『鎌鼬』。」
回避した霧島に襲いかかるのはキング。両腕を風の鎌に変え斬りかかる。
『ギ…ギギギギギ…』
銃弾を放つ暇のない霧島は両手の銃でその攻撃を受ける。
「…っく、L4『斬大地』。」
なんとか斬大地を放つ霧島。
「…残念だが今の俺には効かんな。…これは⁉︎。くそ…」
キングの存在がぼやけ攻撃が当たらない。それでも腕だけは霧島を襲い続ける。しかし突然その腕も消える。辺り一面に突風が吹いたのだ。
「余をフリーにするとはお主らは愚か者だな。」
雅峰が2枚の扇に魔力を纏わせ風を起こしていた。
「その風には余の魔力を乗せている。余りその身に受けぬ方が良いぞ。まぁ、辞めぬがな。」
「…なんだ?これは…纏わりつく…」
風の中に混じる雅峰の魔力に顔をしかめる霧島。
「風の帝である俺を縛るか。…腹立たしいな。俺は風だ、何者にも縛られない。『澄風の綻び』。」
キングの体が薄い青に染まる。先程までの引き寄せる風から一転体から溢れ出るように風が吹き荒れる。
「ほぅ、余の魔法の正体を見抜いたか?。」
「ん?俺は別に…」
「あぁ、お前の魔法は風属性。糸のような風、さらにはそれに伸縮性を付加している。さっき俺の肩を抉ったのも張力を利用した移動だ。」
「流石に風の帝、中々見えている。」
「ふーん、糸ねぇ。東堂さんみたいな感じか。なら見えずともやりようはあるか。」
霧島が体の周りに薄く風を纏い始める。
「さぁ、タネを明かされた所で第二幕の開幕といくとするか。わかった所で余の魔法は…」
流石に各自各国の最強を自負するだけあり実力が拮抗する。そこに、
『光華、音寧夜脱落です。』
「何⁉︎寧夜が!。そんなバカな、奴は我が盟友ぞ。誰が…」
『ユーロ、ユーリ・テンネ脱落です。』
『アメストリア、アーロン・ガルド脱落です。』
次々と増えていく脱落者。
「…アーロン。安心しろ敵は俺が討つ。」
(…若草と創士さんの名前はねぇか。ふふ、まぁあの2人が早々やられるわけねーけど。)
「…2人が倒しているかもしれねーのに俺だけゼロじゃ格好がつかねーよな。」
それぞれの思いを胸に戦いは佳境に突入する。