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銀城の弱さ その心

 銀城葵、その才能だけで七星第七輝の座に就くもの。彼女が七輝の座を簒奪したのは1年の夏。それからその座は変動することなく死守されている。何故七輝なのか?。その理由は前任の七輝の話までさかのぼる。


 銀城の前の七輝を務めた男は模範的な生徒だった。才能はあった。それでも歴代の七星と比べれば少し劣る、そんな才能の男だった。彼は研鑽を重ねる。勝って驕らず負けて腐らず少しづつ力をつけていく。そして3年に進級するタイミングで七星第七輝に叙される。男は当然喜んだ。それと同時に名誉ある七星の名に恥じぬようにと更なる努力を誓う。それからの日々は同じ七星や同級生達とお互いを高め合う素晴らしい生活だった。そして未来も開けた…はずだった。その男の前に現れたのは入学して2ヶ月に満たない1年生の女の子。後進の育成も役目と思った男は勝負に応じ…敗れる。自分の星光学園での努力を凌駕する才能を見せつけられる。それでもこの時は心までは折れていなかった。破れることは恥ではない。諦めることこそが恥なんだと心に火を灯した。しかし、


「…なんだ、こんなものかぁ。頑張った意味なかったなぁ。」

 その女の子が零したその言葉。それにより心の灯が揺らぐ。


「…何故俺を選んだんだ?。」


「ん?…1番弱そうだから。数字が大きい程弱いんだよね。七星ならどれどもいいし。」


「…………。」

 自分程度の奴は本当に才能のある者の気まぐれで居場所を失う。俺のしてきた努力は化け物からすればスタート地点にすら立てていなかった。男は完全に心の灯が消えた事を悟った。その後男は友人達の支えで立ち直るが魔導士として生きていく選択はとらない。銀城の存在が1人の魔導士の未来を消したのだ。そうしてまで手に入れた七輝の座を銀城は譲らない。決して自ら侵略することはないが襲いかかる敵は完膚なきまでに叩き潰す。眠り姫…眠れる森の美女は別名いばら姫とも言う。自分からは何もしない。しかし近付く者は容赦なく傷付ける、その様はまるで生い茂る荊のようであった。その銀城が今初めての事態に遭遇している。


「…はぁはぁ、もうっ!なんなの!。L5『桜火道』。」

 銀城が魔法を唱える。銀城から李白までの間に桜で出来た道が築かれる。桜火道…道を形造る桜一枚一枚が圧縮された炎で一度元火が放たれれば一直線に対象に業火が襲いかかる魔法である。逃げようとも桜が舞い道を延ばし続けるので回避は不可能と言われている。


「…これで終わって!。」

 余裕のないのは魔法を発動した銀城の方だった。懇願にも似た声色で言葉を出す。


『…コツンッ…』


「だから…俺には通じないって言ってるだろ!。」

 迫り来る炎を李白が足踏み一つで消し去る。この様に銀城の魔法を李白が無効化する戦いが既に10分以上続いている。


「離れての魔法では俺はやれないよ。それにレベル5はでかいから反応し易い。」


「あんた強いんだろ?。…ならもっと楽しませてくれよ。」


「…勝手な事を…言わないで!。私は、私は……L5『皇道』」

 今まで勝ちたいと思った時は全て勝ってきた。自分が本気になればできない事はない。そう思い続けていた銀城。誰もが経験するであろう勝つ為の工夫をしたことがなかった。


「…だから無駄だって。わかんねーかな。」

 またもや李白の前で魔法が消される。


「…こんなの…こんなの…」

 その様子を見た銀城は顔を伏せ肩を落とす。


「…諦めたか。すぐに楽にしてやる。俺の無属性の圧倒的質量でな。」

 李白が銀城に向け両手を前に出し握りこむ。


「…許さない。私が思い通りに出来ないことがあるのが許せない。…才能は全てを肯定する。…自分が否定される。…ことを私は許さない。」


「…終わりだ。『空餓砲』。」

 李白の手の周りから不可視の魔法が放たれる。周りに発生する衝撃波だけがその威力を物語る。


『キュオオオオオオーーーン』


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