雷を統べる者
突如現れた陽香。その体から迸る雷光を見た夢坂の行動は速かった。
「…2人ともごめん。『雷速掌』。」
重、真利谷2人の体に雷速の掌底を叩き込む。それは勿論攻撃などではない。夢坂の掌底は彼の体を離れ2人をその場から弾き飛ばす。
「な⁉︎…夢坂… ⁉︎」
「…分かりました。任せます。」
驚く重とすぐさま状況を判断した真利谷。これは経験の差であろう。
『ドーンッ‼︎…バリバリバリッ‼︎。チチチィ…』
そのすぐ後に雷鳴が轟き白い稲妻が地面を穿つ。もし夢坂が2人のことを飛ばさなければ2人は脱落していたであろう。そう確信することが出来るほどの威力だった。
「あ〜、流石に速いね。3人ともここで脱落してもらうつもりだったのになぁ。」
土埃が晴れた時白く光る陽香と青く光る夢坂がお互いの両手を組みあい押し合っていた。
「そんなこと…俺がいるのに、させるわけないだろ。『鬼纏雷』。」
夢坂が纏う魔力の量が増し背後に鬼の様なものが現れ徐々に陽香を押し込みだす。
「へぇ…何それ…。強くなるんだ。…君は危険だよね、だからこの戦いから退場して貰うよ。『雷乃発声』。」
陽香が何か唱える。しかし目に見えて変化は見られない。
「…何を…って待つほど俺は悠長じゃないですよ!。『疾雷撃』。」
取っ組み合いから離れた夢坂。構えから放たれるは雷速の連撃。殴られたと認識されることなく次の一撃が叩き込まれると言う暴力的なまでの機動による破壊。
『…………………。ドンッ‼︎‼︎』
音を置き去りにした連撃は幾百と叩き込まれ相手に何もさせないはずだった。
「…痛た…殴りすぎ。『若雷』『土雷』。」
両手を交差させ身をかがめていた陽香。見た所怪我は見られない。そして陽香の両手の魔力が増大していた。
「…速さのアドバンテージはなしか。」
その様子を見ていた夢坂が息を吐きながら言う。これまで絶対を誇ってきた雷速。初めて同じ速さという敵と戦うことになる。
「…ねぇ、君も雷様ならこの名前知ってるよね。『八雷神』。」
陽香が発した言葉。それは夢坂に衝撃を与えた。
「…な⁉︎、…尚更あんたを止めなくちゃいけないみたいだな。俺はニホンのために刺し違えてでもあんたを倒す。」
陽香の発言を聞き自分の役割を理解する夢坂。例えここで自分が脱落することになったとしても倒さなければならない。国の為にその身を捨てる覚悟を決める。
「私としても望むところなんだよね。証明できるから…私が使える人だということを。」
陽香としても自分の実力を知らしめることが出来る。それは光華の代表として生きていく上で最も重きを置くこと。2人の体から発せられる光が強まる。
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「重君、私達のやるべきことは変わっていませんよ。」
夢坂と距離をとった場所。そこで重と真利谷は全体に攻撃を仕掛けていた。
「私達は1人でも相手を減らします。『氷帝』。…『氷霰』。」
真利谷の広域魔法。それから降り注ぐ氷の粒は触れたものを凍らせる。
「…流石にこのレベルになると仕留めきれませんか。」
各国は真利谷の魔法をすんでのところで食い止めていた。
「…L2『火炎』×1000。」
そこに現れたのは四方八方に火球を飛ばしまくる重の姿だった。
「な、あれは大将の…」
アメストリアから驚きの声が上がる。自分達を率いる大将。女傑と謳われる者の魔法を使う者が居るのだから当然である。
「なんて数だ⁉︎。これでは…近づけない。」
「そこですね。『氷柱霜柱』。」
「な、なんだ、これ‼︎。お、おい、助けてくれ。から…が………。」
重の火炎に気をとられていたアメストリア代表。その1人に真利谷の氷が襲いかかる。足元から登り始めた氷は相手の魔力を奪いながら登り続けついには物言わぬ氷像と化す。
『ニホン、アメストリア代表を1人倒しました。』
「さて、次に凍るのは誰ですか?。」




