雷の邂逅
ついにやってきた国際親善会と言う名の戦争。各国の将来を担う才能同士のぶつかり合い。名誉と未来をかけた戦い。
「えーと、選手の控え室はここですね。」
各国の代表選手は国別の部屋が与えられそこで待機をすることになっていた。重達全星寮勢が控え室になっている部屋に到着する。
「どうやら僕達が最後だったみたいですね。すいません。」
部屋の中を一瞥した若草。そこには代表に選ばれた生徒が全員揃っていることを確認し頭を下げる。
「別に構わん。開始時刻には間に合っているしな。」
部屋の中のソファーに腰掛けた創士が返事を返す。その隣には真利谷が控えている。
「あれ?。あの人誰?。」
初めて見る人がいることに気づいた重が隣の剣、澪に小声で尋ねる。
「…さぁな。見たことねぇな。ってかあの服なんだよ。ダボダボのスエット、よれた袖。なにより…あれ生きてるのか?。さっきからピクリとも動かないんだが…」
「…あの、ひょっとしてなんですけど…銀城葵さんじゃないでしょうか。ほら、あの名簿に名前が書いてありましたし。」
床にうつ伏せで大の字に横たわる女。寝床からそのまま来ましたと言わんばかりの格好で動かない。
「いや、そんなまさか七星ともあろう者があんな姿を…」
重が否定の言葉を口にしようとするが…
「はぁ〜…銀城せめてこっちの椅子の上で寝てくれ。そこは通行の邪魔になる。」
「うーん、床冷たくて気持ちいいよ?。」
「本当に七星だった‼︎。」
重がついには声を抑えきれず突っ込んでしまう。
「あ、すいません。」
「ふん…元気そうだな、八神重。その元気をしっかり活かしてくれよ。」
『それでは初めに5人選手を選んでください。』
アナウンスが流れる。戦いに出る候補の5人を選出する時間である。この5人から3人が戦うことになる。
「よし、それじゃあ行ってこい。」
「…ってかさ、初めって5人いらなくないですか?。」
「そうだね、次からは相性とかを考えていけるけども…今回はまだ情報がないしね。」
「それは各国同じでしょう。だから万能型を出してくるはずです。」
「そういうこと。…でその万能に勝てるのは…。」
「希少属性の2人に遊撃のお前ならそこそこいけるだろ。」
ニホンの5人。上から重、若草、真利谷、夢坂、剣。その中で参戦するのは…
「真利谷さん、いきなり全開でいきますよね。」
「当たり前です。私と貴方で敵を封殺しますよ。」
「俺の役目は各個撃破ですね。」
夢坂、真利谷、重。
『出場選手
ニホン
真利谷氷雨
八神重
夢坂当夜
アメストリア
リリアン・クラウド
ユリア・ステファノ
エリス・コーラン
ユーロ
フランク・ローレルデン
アーベル・クライフ
ミュラー・トリトン
光華
柳・九老
梵・鄭流
高・陽香 』
画面に映し出された名前。次回以降はこの名前を参考に参加する選手を決めることになるだろう。
『それではカウントを始めます。5、4、3、2、1…0。』
戦いの火蓋が切って落とされた。待機していた部屋のドアを開ける。するとそこには街中を想定したかのような光景が広がっていた。
「うわっ、いつの間にこんなの…」
重が目の前の光景に驚く。
「…『雷帝』。『豪雷撃』『バチッ‼︎…パリリ…』
「…先ずは1人。」
開始の合図と同時に夢坂が雷帝を発動。ユーロの選手を1人電撃を纏った体当たりで倒す。
『…な、なんとニホン早くも1人選手を倒しました。開始直後の一瞬の隙をついたのは夢坂選手。』
「なんともまぁ…アーベル、お前は油断しすぎた。」
「恥さらしめ。そのままそこで横になっていろ。」
速攻で1人メンバーを失ったユーロ。しかしその顔に焦りは見られない。
「…重、真利谷さん。3分2人で耐えてください。今から思い知らせてやりますよ。ニホンの強さを。」
夢坂が地面に手を当てながら言う。何か考えがあるようだった。そこへ
「…ねぇ、君も雷様なんだね。違う出会い方なら仲良くしたかったよ。」
3人の中に1人の女が割って入る。全身を稲妻で覆ったその女は大胆不敵に言い放つ。
「今回の戦い勝つのは光華。何故なら陽香がいるのだから。」
陽香の体から眩い光が漏れ辺りを覆い尽くす。
「…『雷神招来』。」
全長3メートルに及ぶ怪物が立っていた。