最後の選考
「…ふっ、霧島飛春。まさかお前から協力を申し出てくるとはな。」
「…別にー。ただ俺は強い奴と戦いたいだけ。そして…負けたくない。今回の親善でもそれは変わらない。周りのせいで負けたら俺は殺しちゃうかもしれないし。だったら少しでも役に立つ奴を入れたいじゃん。」
学園にある大闘技場。今日はそこで国際親善会の最後の参加者を決める催しが開かれていた。『参加資格の規定はなし。自薦での参加を認める。出たい気持ちがある奴は来い。』そう書かれた紙が学園中にばらまかれた。その紙を見て最後の望みを持って現れたのはおよそ150人。学園の約半分の生徒だった。
「いっぱい来てるなー。雑魚どもがウジャウジャと…何人残るか。別にゼロでもいいんでしょ。」
頭に手を敬礼のようにあて眺める霧島。軽い口ぶりでとんでもないことを口にする。
「あぁ今求めているのは真の強者のみ。約束通り本気でやってもらって構わない。」
しかしその霧島に忠告することなくむしろ促すような発言をする創士。そのことから本気度がうかがえる。
「会長、参加希望者は全員揃ったようです。」
受付を担当していた真利谷が創士に駆け寄り告げる。
「わかった。」
そう言い創士が一歩前に進み出る。その動きだけでそれまで喧騒に包まれていた会場に静けさが訪れる。
「ここに集まってもらった理由は言うまでもないだろう。この学園は今、強き者を求めている。半端な者はいらない。」
「代表に入る条件は1つだけ。10分後にこの闘技場で立っていること。それじゃあ始めよう。」
創士が代表入りの条件を告げる。
「「ざわざわ…」」
当然内容を理解できない生徒たちからざわめきが起こる。
「…L5『氷帝』。…『凍る大地』。」
ざわめきがおさまらない中響く声。瞬間地面に氷の亀裂が走り辺りを凍らせていく。
「半端ないねー、真利谷さん。容赦なさすぎ。」
そのようすを見ていた霧島が真利谷をからかうように言う。
「愚鈍な方は必要ありません。すでに会長は開始を告げられました。」
「お、おい待てよっ。まさか…七星のトップ3人を相手に生き残れってのか⁉︎。」
「馬鹿な⁉︎。そんな訳な…」
「ん?その通りだぞ。…まぁ頑張れよ。着装…来い、『狩刺刈刃』。」
学園のトップである霧島、創士、真利谷を相手に10分間生き残るという内容についていけず飲み込めない生徒たち。しかし創士はあっさりとそれが本当であると告げた。
「2人とも俺の分取らないでくださいよー。…やっちゃうか。」
霧島はその両手に拳銃を構える。太ももに装備されたホルスターから抜かれた二丁の拳銃は鈍い光を放つ銀色の輝き。
「『魔弾・炎舞』。」
霧島によって引き金が引かれる。二丁の拳銃からは炎を纏った弾丸が射出され射線上を燃やし尽くす。
(…霧島飛春の愛銃。今の時代魔導師で拳銃を使う者は奴しかいないだろうな。)
辺りを斬り刻みながら創士は霧島の様子を観察する。銃…魔法が広く普及するまでは多用された武器。しかし魔法の台頭により淘汰された武器である。弾丸を射出するというその機構は魔導師にすれば魔法を放つのと変わらずむしろ弾道が読まれるという欠点がある。さらに手で握って用いるため機転が利かない。等のデメリットにより銃は魔法の使えない人の武器とされるようになった。
「俺も飛ばすぜ。『魔弾・疾風』。」
弾の種類が変わる。射線上に鎌鼬を起こし広範囲を攻撃する霧島。
「ぐっ…だめだ俺なんかじゃ…」
「クソッタレが!。誰がこんなので生き残れるってんだ!。」
(ダメだな。…こんな奴らいらん。欲しいのは…)
強者3人による蹂躙に弱音を吐く生徒を冷めた目で見つめる創士。そこに影が重なる。
『…ドゴーンッ‼︎』
「…そうだ。貴様らは攻めるべきなのだ。」
後ろからの攻撃に身をよじって回避する創士。その目には右手を振りかぶる草薙と蹴りのモーションをとる花凛の姿が映った。
「外したか。…花凛やって。」
「はいはい、会長バイバイでーす。」
一瞬姿を現した草薙と花凛。花凛の魔法によって姿を消す。
「成る程、組んだか。だが…真利谷!。花凛がいる。やってくれ。」
「わかりました。…『冷気巡礼』。」
創士の言葉に辺りに冷気を充満させる真利谷。
『パキキ…パリンッ‼︎』
空間にヒビが入り砕ける。するとそこには花凛と草薙がいた。
「見つけたぞ。」
「…見つかっちゃった。」
「軽い!。軽すぎるよ!。」
「さて…あと5分どうする?。」




