上回った成長
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食卓に並ぶ料理の数々。若草謹製の手料理達は栄養のバランスの考えられ、カロリーもしっかりと摂取出来る素晴らしいものだった。
「おめでとう重君、澪ちゃん。2人のことは信じていたよ。」
若草が2人の方を見て微笑みながら言う。重、澪が代表入りしたことで全星寮は全員が代表になった。重が全星寮と名付けた理由である全員が七星になる。それに一歩前進したといえるだろう。
「ありがとうございます。かなりギリギリでしたけどね。正直最後は意地でしたからね。」
重が頭をかきながら言う。重は意識を失うことは免れたがまったく体を動かせない状態で戦いを終えた。本当にギリギリであった。
「重さんが六花さん、八鹿さんの秘密に気づいてなかったらそのまま負けてたかもしれませんね。」
大蔵姉妹はLevel4の魔法を2属性ずつ使える。更に双子独特の連携があり3属性使えるように見せていた。しかしそれだけで帝になることが出来る澪と本当に3属性を使える剣と子供の時から研鑽してきた重があそこまで後手に回った理由。相手の意表を突き、呑み、疑心を持たせ、混乱の内に勝利を収める。大蔵姉妹の戦術にハマった為だった。それを打開したのは重の観察。日頃から格上と戦い続けた男の生きる為の能力だった。
「もぐもぐ…あ、そう言えばよぅ、あれ中になんて書いてあったんだよ。」
それまでひたすら料理を食べていた剣が何かを思い出す。
「あれ?なんのこと?。」
「あれだよ、朝置いてあった紙だよ。大樹さんが書いたんだろ?。」
今日の朝若草は不在だったが若草の魔力を帯びた紙が置かれていた。その紙には『困ったら開けるといい』と書かれていた。
「気になるかい?。確かにあれは僕が書いたものだ。重君開けてご覧よ。」
「えーと…これか。…え⁉︎。」
紙を取り出し中を見た重が驚きの声を上げる。
「なんだよ!。なんて書いてあったんだ!。」
「…………。」
その様子を見ていた剣が俄然興味をそそられ身を乗り出す。澪も心なしか体を重の方へ寄せていた。
『おめでとう』
紙に書かれていたのはこれだけだった。
「…なんだよこれ。」
剣が若草の方を見ながら言う。てっきりアドバイスが書かれていると思っていたのでガッカリ感が凄い。
「僕は信じていたからね。2人なら自分達で切り抜けると。それに…君達は創士さんから少し話を聞いただろう?。それだけあればこんな紙切れの存在など忘れてしまうだろうとね。だから賛辞を贈ったまでだよ。」
いつもと変わらぬ表情で若草がのたまう。平然と言ってはいるがこの男、大蔵姉妹と重、澪の戦力を冷静に分析し更には創士が重達に与えるであろう助言まで計算に入れこのメッセージをしたためていた。
「…ちっ、(相変わらずのバケモノ具合だな。…まだ勝てねーか。)」
時系列からそのことに気づいた剣が心の中で若草に悪態をつきつつも読みの深さに憧憬を覚える。
「大樹さんの考え通りだったってことですね…。」
澪が目の前にいる七星の底知れない力に畏怖を感じながら言う。しかし、
「いや、正確に言うと少し外れたかな。僕は大蔵先輩達が重達を認めるところまでは読んでいた。2人なら秘密に気付くだろうとね。…でも僕は君達が負けると思ってもいた。まだ早いとね。」
「結果は相打ち。僕の予想を超えたんだ。『超絶技巧』と呼ばれる僕の読みをね。」
改めて今回の戦いのことを語る若草。自分の可愛い後輩達。もちろん勝利を願っていたがそこは若草感情に左右されず重、澪の敗北を悟った。それでも代表入りはするだろうとおめでとうの言葉を贈った。しかし後輩達は予想を上回る速度で成長していた。
「…君達と星を争う日も近いかも知れないね。」
若草の心から出た言葉だった。




