双子の理由
「私は六花。私じゃないのが八鹿。」
「私は八鹿。私じゃないのが六花。」
「「世界は私達とそれ以外しかない。」」
「六花、八鹿、こっちに来なさい。」
「六花ちゃん、八鹿ちゃん。はい、誕生日プレゼント。んー流石そっくりね。どっちがどっちかな?。」
「大蔵姉妹って似すぎじゃない?。髪の色変えてるからわかるけどさ。」
周りの人達にとって私達は『大蔵姉妹』であって『六花』『八鹿』じゃない。誰も私達を見分けられない。髪の色なんてしょっちゅう変えてるのに。誰も指摘してこない。…私達も個人なのに。好きな物も違うし嫌いな物も違う。属性だって違う。なのに…
「仕方ないよ八鹿。」
「仕方ないよ六花。」
「「…なんてならない。私達を認めさせる。」」
「その為にはこのそっくりな外見だって利用する。」
「私達はそっくりな双子。だけど歪な双子を演じよう。」
「「個を手にする為に。」」
神の悪戯かと思うほどそっくりな大蔵姉妹。2人は個を手に入れる為、名をあげる決意をする。大蔵姉妹から大蔵六花、大蔵八鹿になるために。そのためならこの容姿も利用する。そして2人は親善会という大きな舞台の代表権を手に入れた。
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「そっくり。…いよいよ見分けがつきません。」
「これはかなり厄介かもね。でも…」
今までの判断材料であった体格、髪の色が同期した今大蔵六花、八鹿を見分けるのは至難といえるだろう。
「魔法を見れば分かるって?。」
「違う属性だから分かるって?。」
「「そんなの対策してるに決まってる。」」
一列になる大蔵姉妹。
「「L4『斬大地』。」」
「…成る程ね。確かにそっちじゃわかんないですね。」
火拳を発動し斬大地を砕きながら重が言う。
「でも…私達だって弱くはありません。それだけで勝てると思わないでください。」
体に突き刺さる土の槍をものともせずに澪が言う。
「…L3『大豪炎』。」
「…L3『水鉄砲』。」
「ここは私が。『水陣壁』。」
澪が前に出て水の壁を張る。六花の魔法は吸収され八鹿の魔法は打ち消される。
「返します。『豪波』。」
さらにその水が大波となって大蔵姉妹に襲いかかる。
「「L3『土門』。」」
「L4『甲撃の掌』…にL3『流炎』。…六花。」
「ん、L3『留水』。頑張って。」
八鹿が土の装甲を纏う。右手に炎、左手に水を纏い重たちに向かってくる。
「俺の火拳とどっちが強いか。…負けられない。」
八鹿の拳と重の拳。撃ちあった拳からは蒸気が溢れ出る。
『ゴッ!。ガインッ‼︎ガキンっ‼︎』
拳と拳をぶつける音が響く。
「…くっ、嘘だろ。俺が押されてる。…まだだ!。L2『火炎』×1000。」
次第に押され始めた重。それを盛り返すためにさらに魔法を重ね合わせる。
「…重さんの火拳と互角以上⁉︎。そんなことが…まさか!。させません。『渦巻く竜槍』。」
澪が攻撃を仕掛けたのは六花。その視線は八鹿に注がれていた。
「ちっ、気づいたか。L4『多重岩』…八鹿ごめん。」
岩の防御を張るが1人の魔法では防ぎきれず肩を抉られる六花。
「ん?。なんだ?さっきまでより重みが。」
八鹿と殴り合っていた重。劣勢だったのが一転攻勢に転じついに八鹿を殴り飛ばす。
「やっぱり八鹿さんの体に土属性の何かを後付けし続けていたんですね。それが攻撃に重さを加えていた。」
「ぐふっ、ぐっ、、、凄い威力。1人で相手にするのはやっぱ無理か。六花大丈夫?。まだいける?。」
地面に叩きつけられた八鹿。それでもまだ立ち上がる。自分達の目的のため。重と澪が代表になるのは認める。でも…自分達の出番は奪わせない。自分達の色を魅せる。
「…いける。まだまだいける。」
六花も肩に突き刺さる槍を手に纏った水で叩き斬る。
「…熱いっ。先輩達の覚悟見せてもらいました。ですが!俺にだって譲れないものはある。。L2『蛍火』×100。L2『蛍火』×100。…双火剣。形態変化『火突薙』。」
両腕と一体化した燃え盛る大剣。焦気によって周りの空間が歪んで見える。
「重さん!手が!。」
以前見た時はダメージを負っていなかった重の体。しかし今は全身から煙が上がり肩の辺りまで紅くなっていた。
「へへっ、魔力が足りないや。でもこの一撃だけは叩き込んでみせる。」
明らかにやせ我慢と思える苦笑い。顔からは汗すら出ない。身体中の水分が蒸発していた。
「…『海神の双腕・抱擁』。私が重さんの腕になります。」
それを見た澪は海神の双腕を発動。重の腕に添えるように纏わせる。
「熱っ‼︎。重さんこんな状態で…」
重の腕に触れた途端その熱量に眉をしかめる澪。
「…いくよ、澪ちゃん。全てを賭ける。」
駆け出す重。
「凄い魔力の集中。」
「1人で受けるのは無理だね。」
「「でも受ける、2人でなら。」」
「L4『甲撃の掌』L3『流炎』。任せて六花。」
「L3『留水』L4『増重岩』。信じてる八鹿。」
八鹿の両手の籠手。炎と水を纏った状態。更に六花の魔法によって籠手が物々しく重さと硬さを帯びていく。
「「最後だ。」」
全力同士のぶつかり。お互いの想いが交錯する。