努める男と怠ける女
「暑いよー。溶けちゃうよー、むしろ融けちゃうよー。やっぱりやめようかなー。」
第二輝用の闘技場。そこには引きこもりの特権者銀城葵がいた。うだるような暑さの中いつもどおりの長袖長ズボン、当然暑さですでにまいっている。その口からは怨嗟のように暑さに対する言葉が紡がれる。
「待て待て、お前は月華亭を食べたいんだろ!。その為には取り引き通り俺と戦ってもらわんとな。月華亭がいらないのなら構わんが。その時は生徒会で美味しくいただくとしよう。」
そんな銀城を前に創士は少し焦りながら引き止めようとする。
「甘味を盾に女の子に言うことをきかせるなんて…創士君はいけない男だね。…でも創士君何も持ってないよね?。どういうこと?。」
銀城が目を細めながら尋ねる。
「まぁ待て、……お!来たぞ!。」
創士が闘技場の入り口を指差す。
「すいません、少し遅れてしまいましたね。」
若草だった。その手には小ぶりな箱を持っている。
「…だーれ?。」
「…現在の七星第五輝だ。少しは周りについて興味をもってくれよ。今回は若草の伝手を使って月華亭の商品を購入したんだ。」
「へぇ…月華亭に伝手。…ねぇ君は五輝なんだよね。だったら…」
「お前の上司でもなんでもないぞ。むしろ後輩だ。だからたかるのはやめろ。」
夢坂の時同様自分の世話をするようねだろうとするのを創士が止める。
「…聞いていた以上に変わった方ですね。」
闘技場の隅に控える真利谷に話しかける。
「えぇ、かなりぶっ飛んでいますよ。」
冷静に2人を見つめながら真利谷が言う。
「それじゃあ。早くやろ。私の魔法見せてあげる。でも…触れないでね。」
銀城がそう言葉を吐くが構えを取る様子はない。
「あぁ。L4『斬岩剣』L4『針撃盾』。」
一方創士は片手剣スタイルを選択。
「いくよー、…L5『星華火』。」
銀城が両手を前に構え星華火を放つ。
『キュィィィィィー…』
渦を巻き、数を増やし創士に迫る。瞬く間に創士の視界を埋め尽くした。
「っぐ…うぉ…っら!。」
慌てず自分に近づいてくる炎から切り裂いていく創士。
「頑張ってね。L5『星華火』。」
更に星華火を発動する銀城。
「くっ…、これでなくては…」
盾も使いながら星華火をいなしていく創士。最善手を打ち続けなければならない緊張感の中で創士の集中力は高まっていく。
『トゴゴゴゴッ‼︎。』
押し寄せる星華火。捌き切れなくなった創士が炎に呑み込まれる。
「終わっちゃった?。」
「いや、まだだ。」
鎧を全装備した創士がそこにいた。
「新しいね、創士君。私が最後に見た時は腕だけだったのに。」
「…いつの話をしているんだ。」
2人のやり取りは続く。
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「星華火ですか。噂には聞いていましたが…本当に使えるとは。」
先程までの姿とのギャップに驚きながら若草が真利谷に言う。
「彼女はぶっ飛んでいると言ったでしょう。…彼女はそうですね、貴方のところにいる八神重君と反対の位置にいると言っても良いかもしれません。」
「重君とですか?。それは一体…」
「見ていればわかります。…ひとつ言っておくと私はもちろん、会長も彼女に負けています。1年生の頃ですが。」
「!。それ程…」
 




