選ぶ男と選ばれる者
無藤海里、彼は普通の魔導師と大きく異なる点があった。あるものを持たない。今や全ての魔導師が持つもの、人によっては複数持つ者もいる…『属性』。彼は生まれつき属性を持たなかった。故に使う魔法もレベルを持たない。当然世に認められることはない。人は自分の知らない物を認めない。自分達の知らない可能性を恐れ、閉ざす。その為無藤は監禁されていた。
『紀元前』と呼ばれた男は己の魔力だけを用いて戦う。そこに相性などといった要素は介入しない。ただ強く、重く、鋭い。属性を持たない故に魔力自体と深く向き合わざるを得なかった男は唯一無二の存在となった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
「貴方に当校で行っていただく仕事についてですが…当面はこの度の国際親善会に出場する生徒の選定、及びその引率をしていただきたいと思っています。」
学園長から無藤に学園での仕事について伝えられる。
「生徒の選定?。来たばかりの俺がか?。」
当然無藤からは疑問が出る。着任したばかりの自分で良いのかと。
「だからこそです。私達では生徒の前情報を知ってしまっていますからね。…あくまで今最も強い者を選んでいただきたいのです。」
学園長を含め教師達は誰がこの学園の雄である七星であるか、また二つ名持ちであるかを当然知っている。優先的に視察してしまうことは避けられない。しかし無藤は生徒についてなにも知らない。公正に選定できるとのことだった。
「いいのか?。七星とかいう奴らがいるんだろ?。そいつらが選ばれんかもしれんぞ。」
「我が学園に停滞する生徒など必要はありません。彼らが研鑽を積んでいれば自ずと目につき選ばれるはずです。」
(1人を除いて。)
七星第七輝銀城葵。遭遇することすらままならない存在。ましてや戦闘に出くわすことなどあり得ない。
(出来れば彼女にも出てもらいたいのですが…)
強い生徒は何人いても構わない。1年の時に七星の座を奪った銀城の力は是非とも欲しいところである。
「そうか、なら特に目についた生徒だけピックアップするとしよう。」
学園長の思惑を感じ取り全権は断る無藤。
「そうですか。それでも結構です。よろしくお願いします。」
「…それでは俺はもう行く。時間もないようだしな。…それと、そこにいる生徒か?。いい度胸だ。名乗れ。」
無藤が学園長の部屋のドアを見つめながら言う。
「ガチャ…若草大樹です。バレていましたか。結構自信はあったのですが。」
若草が笑みを浮かべながら室内に入ってくる。
「そうだな、学生の割には中々やる。如月が立ち去ってからだったか。上手くあの男の魔力に隠れていたようだが…少し漏れたぞ。」
「ははっ、そうでしたか。これは失敗ですね。」
「…それで若草大樹君、何の用だったのですか?。元々目的があったのでしょう?。」
「そうですね、今日は学園長にこれを提出しようと思っていたんです。」
そう言い若草が一枚の紙を学園長に差し出す。
「今学期の全星寮予算の目安です。多少の増減はすると思いますが。」
「出してくれるだけマシですよ。七星の内2人出してないですからね。」
銀城と霧島である。
「それでは僕はこれで失礼します。…今日聞いたことは他言しても?。」
「…ええ、良いですよ。聞いたからといって大きく変わることはありませんから。」
その言葉を聞き若草は学園長室をあとにする。
「…あれが七星という生徒か。成る程目につく。どうやら的外れな人選をせずに済みそうだ。」
「それは良かった。」




