死を勧める者
重い足取りで疲れた男が店を出ていく。
それを見送って残ったアイスコーヒーを飲みほす。
さて、あの男がきっちりと仕事をしてくれるか。きっちりとビルをひとつ爆破してくれるのか。
まったく、働くよりも死んだほうが金が稼げるとはおかしな国だ。
火災保険、家財保険で焼け太り。
焼け太りとはなんとも奇妙な言葉だ。
だが利用させてもらおうか。
住むところをメチャメチャにすれば稼げると教えてくれたのは日本人だ。
私の故郷は荒れ果て、今は誰も住んではいない。
日本向けの開発。日本の業者の開発。
エビの養殖プールの大規模開発。
それで森の木を切り倒し土地の乱開発。
木が無くなり丸坊主になった山が地滑りを起こして私の故郷の村は飲まれた。
エビの養殖プールも、利益が出ないと打ち捨てられた。
後に残されたのは荒らされ立て直すこともできない、荒れ果てた村の残骸だけだった。
エビの養殖プールで稼ぐよりも、それをネタに出資者を集めて稼ぐ詐欺のようなビジネスだった。
それを知ったのは村が無くなって随分と時間の過ぎた後だ。
ならば今度は私の番だろう?
日本で金を稼がせてもらおう。
ニートだかなんだか知らないが、日本には働いていない者がいる。
彼らの中には日本の社会を恨んでいるものがいる。
そんな彼らをちょっとつついてやればいい。そんな彼らを育てたのは日本の社会だ。
自業自得と言うやつだ。
アメリカの同盟国であればこれからテロの標的として人気もあるだろう。
さっきの男の家族も私の国に永住し、日本の金で私の国で暮らしてくれれば、その金は私の国に落ちる。
少しずつでも私の国が豊かになる。故郷を再建できるかもしれない。
あの男のテロが成功すればあの会社はダメージを受ける。扱う製品のシェアが変動して株価が変わる。
ライバル会社から金を受け取りつつ、株でも稼がせてもらおう。
絞れるだけ絞らせてもらおうか。
あの男も変わった男だった。
だが家族の為に死ぬという心意気は買おう。あの男の家族は大切にしてやろう。
これからのビジネスの為にも。
日本で稼いだ金を持って私の国で暮らせば老後は安泰。
金を持ってる老人を我が国で引き取る老人ホーム。
あの男の妻は看護師の資格がある。
日本語の先生兼ヘルパーの先生となってくれるとありがたい。
金を稼ぎたい日本人には、
働くよりも死んだほうが金になることを教えてあげよう。
そうして稼いだ金を遺族が持って、私の国で使ってくれるといい。
まだ、まだまだ、まだまだだ。
私の故郷を壊してくれた分、その分の金を日本から稼いでやる。奪ってやる。
無差別テロを許さないなどと寝言をほざく日本人。
日本に無差別テロなど無い。
民主主義の国なんだろう?
主権は国民にあるんだろう?
それなら日本のしてきたこと、日本の政治の結果、その全ての責任は日本の国民全員のものだ。
日本の国民全員、ひとりひとりがテロの標的となる義務と責任がある。
それでもテロは悪だと、犯罪だと言うのなら、日本人らしく言えばいい。
いじめられっ子は一切抵抗せず、無言のまま、自殺しろ、と。
テロの根源にあるものを、知らず認めず、ただ反対するのならば、いつまでもテロに怯え続けろ。
これから先の未来でテロを無くしたいのならばやってみるといい。
全ての人の心の中から正義を愛する気持ちを無くさない限り、この世界からテロは無くならない。