イメージファイト ─ヴァーサス・ゾンビ─(Image Fight -Versus Zombie-)
コモドール64とB級以下ホラー映画への愛!
1980年初頭、個人ユースを想定した当時としては比較的低価格といえる8ビットのホビーパソコンが流通し始めた。国産機としてはNECのPC-6000シリーズ、シャープのMZ-700、富士通のFM-7シリーズ、各社MSX等である。ゲームに特化した機種では、セガのSC-3000、トミーのぴゅう太(但しこれは16ビット)、周辺機器としての発売だが任天堂のファミリーベーシック等も存在した。
これら懐旧の機種は、PC/AT互換機登場以降のPCとは全く異なり、マルチメディアなんか以ての外、実用性は限りなく低く、高級機種と比べれば低価格といっても充分に高価で、酔狂な趣味人くらいしか買わないパソコンであった。
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「ヤァーッ!」ドガッ! 曲がり角の向こうから湧き出してきたゾンビの頭に高橋章子のハイキックがクリーンヒット。ゾンビの頭がスイカめいて砕けて、一撃破壊される。腐った黄の膿汁と、ドス黒い血飛沫と、汚い黄土色の脳の破片が撒き散らされて多色で構成されたロールシャッハ・テストめいた地獄図を描く。
ゾンビを蹴り殺した章子の実年齢は7歳だが、今の姿は高校生くらいである。ゾンビバスターの武器兼防具は、章子的にカッコイイからという理由で選択した、部分的に金属プレート補強のある手首までを覆う長さの丈夫そうなグローブ。
爪先に金属が仕込まれている作業用安全靴としても蹴ったら凶器としても機能しそうな踝上までの丈の半長靴。マフラー状に首に巻かれた乾いた血を想起させる赤黒いボロ布である。装束は、動きやすいのでスエットの上下。
今現在、章子の思考はマイクロプロセッサMOS 6510の演算能力の補佐により、7歳児のものでなく、外見的な年齢と釣り合う16歳前後程度にまで底上げされていた。
「セヤァーッ!」ドガッ! 後ろからよろよろ接近してきた腹から黒ずんだ臓物をぶら下げて引き摺ったゾンビの頭に、章子のその場ジャンプからのソバットがクリーンヒット。ゾンビの頭がスイカめいて砕けて、一撃破壊される。腐った黄の膿汁と、ドス黒い血飛沫と、汚い黄土色の脳の破片と、脳内に湧いていた複数匹の蛆虫が撒き散らされるのと同時に腐りかけた眼球が眼窩からボコリと飛び出して地面に転がる。
向こう側から新たなゾンビが3体姿を見せる。そのまま章子の方に向かってくる。3体とも人間の形は未だ留めているもの、かなり腐敗が進んでいる。肌が爛れ潰瘍状に膿腐れている。汚物めいた肉体が見るからに汚ならしい。ジュクジュクと、至る箇所から黄色いような茶色いような臭い汁の雫が滴っている。
ゾンビと章子、先に動いたのは章子。凄い素早さで3体のゾンビとの間合いを一気に詰める。迷いのない飛ぶような勢いで。「セイヤァーッ!」ドガッ! ドガッ! ドガッ! 3体に向けて廻し蹴りを放つ。
半月状の蹴りの軌道で、一撃にて3体全ての腹部にダメージを与える。攻撃命中部分の腹部から90°に折れ曲がった“く”の字の格好で、ゾンビは激しく後方に吹き飛ぶ。破壊された腹部から、腐敗途中の色が黒ずんだ鮮度の悪そうな内蔵を撒き散らしながら。
ヌメる汚液まみれの胃、十二指腸、小腸、大腸が地面にバラ撒かれる。トグロを巻く内臓が、皿に盛られた不味そうなスパゲティめいている。べチョリと音を立てて地面に貼りついた緑色の蛭めいた臓器は、どうも腐敗菌で腐れた肝臓のようだ。
脊髄をポキリと折られ、地面に転がった3体のゾンビは、そのまま立ち上がることも歩行することもできなくなったが、頭を破壊されていないので未だ活動は停止していない。
地べたで這い蹲り、まるで地虫のように蠢いている。このまま放置したのでは危険なので、章子は噛まれないように注意して、1体づつ慎重に、しかし豪快な勢いでゾンビの頭を踏み潰していった。赤黒い腐敗血と緑色の腐粘液に塗れた桃黒の脳症が飛び散る。
これでここらのゾンビは片付いた? と周囲を見廻す章子。見慣れた町内住宅地の景観のはずだが、解体されたゾンビの腐肉や臓物が至る場所に転がり、腐血や膿汁やその他正体不明の汚液で多色に彩られたアスファルトを眺めると、何処か異界じみて見えた。
この場から確かめる限り潜伏敵らしき気配はもう感じられない。意識的な警戒レベルは下げずに、章子は歩を進めることにした。その先の角を曲がる。
そこにで大勢のゾンビに新たにエンカウント! 1体……2体……3体……沢山。10体以上……実際、かなり纏まっている。ボロ雑巾めいた衣類に包まれた腐肉の大群。ゾンビ映画のこれぞクライマックス的な演出を彷彿させるゾンビの密集度。まるで屍人の一個小隊。
新たに発生した殺戮イベントへのエントリーだ。逃走という選択はないらしい。章子は、喜々としてゾンビの群れの中へ身を躍らせる。
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高柳章子の父親の条介は、オカルト雑誌の編集長をしている。仕事柄なのか、単に趣味なのか、B級、C級、下手したらそれ以下のZ級まで行くかも知れないホラー映画の映像ソフトを自宅に大量にコレクションしている。
章子は物心ついた頃から、父親条助の隣で、意味も判らぬままにしょうもないホラー映画を何作も大量に鑑賞していた。その所為だろう、小学校に入る頃には、一端のホラー映画マニアに成長していた。人間としては駄目な方向への、悪い意味での成長である。
なかでも章子はゾンビ物が大いに気に入っていた。何時か何だかの原因でこの街にゾンビが溢れるような事態が発生したら、 Army of Darknessのアッシュのように、ゾンビと戦い、ゾンビを蹴散らし薙ぎ倒し、人々を護る英雄として活躍するんだ、と子供らしい 微笑ましい夢想をしていた。
しかしその計画には多少心配事がある。それは……そういう状況に陥った時に慌てず活躍できるように、前以ってそれを想定した訓練を綿密に行っておくことが重要ではないだろうか、ということだ。何事も、ぶっつけ本番というのは粗が出て失敗し易いものだ。
精神的早熟な章子は、7歳児の脳みそで思い浮かべたヒーロー計画の皮算用をより完璧に企てる為に、危惧すべき不安材料の諸々は片っ端から潰しておかねばと考えるようになっていた。
だが、解決法を思い付いた瞬間、一瞬にして憂き事はなくなった。それに協力して貰うのに打って付けの人材に心当たりがあったからだ。その人物は、こういう計画の手助けなら、喜んで請け負ってくれるはずである。
章子もよく知っている人物であるが、父親条助の知り合いには比良坂千迅という魔術士が居るのだ。流石はオカルト雑誌の編集長をしている父親だけあって何とも素敵な人脈を持っている、と章子は嬉しくなる。
魔術士の意味は、もちろんイコール手品師ではない。魔法使い的な──本人は、魔法ではなく魔術と称するべきだというが── Magasである。章子は、彼女に相談すればきっと、将来に待ち構えている市街戦を想定したゾンビとのサバイバルゲームの予行練習をやらせてくれるに違いない、と考える。
何せ、父親だけでなく章子自身も千迅と仲良しであり、お友達である。2人の間には深い友情があるから、千迅は章子の願いを叶えてくれるに違いない。章子は、まずは千迅の住まいを訪れてみることにする。別に遠くないし、しょっちゅう遊びに行っているので、来訪は7歳の女の子にも難しいことではないのだ。
比良坂亭は章子が自転車を漕いで走って行けば、自宅から15分あれば到着できるくらいの距離に存在している。因みにその住まいは“バブル時代の負の遺跡”とご近所からは呼ばれている、草ぼうぼうの休耕地の真ん中にぽつねんと存在する4階建ての薄汚い雑ビルである。
そこは、住居として個人所有されており中では住民がちゃんと生活を営んでいることを知らない人間たちに、勝手に廃墟と勘違いされてしまう事例が後を絶たない雑ビルであった。
外観の手入れはしっかりされているので荒廃感は薄いものの、経年のボロさがあるので、勝手に幽霊がでそうな廃ビルと判断して、肝試しと称して内部に侵入を試みるバカな若者が、迷惑な話で年に何回か訪れたりもする。
章子は、両親と物件の持ち主である千迅本人から、この辺は人通りが少なく物騒で治安が悪いから、暗くなったら絶対に単独で近づいてはいけないと、常日頃からいい聞かされていた。今は未だ日が高いので、一人で訪れても充分セーフの時間帯である。
魔術士である千迅曰く、この辺り一帯は忌み地や穢地とでも呼ぶべき凶相の土地で、霊場として非常に悪い場所であり、こんな処にビルを建てても商用として旨く利用できるはずがなく、テナントを募集して商売でも始めさせていたら破産者続出でいずれ自殺の名所とでも化していただろう、との談。
実際、ビルの建設工事中にも色々と原因不明の事故が多発して、最終的には人死すらも出してしまい、このビルの外装が完成した時点で工事は中止されて、内装は手付かずのまま放置の状態で、結局はバブル遺跡となったのである。その頃には、バブル自体も弾けてしまっていたが。
そのビルを今がチャンスと千迅が安く買い叩き、住居として利用し始めたのである。第6感的な超常感知力が鋭い人間ならば寒気を憶えるのかも知れないが、変人な部分のある千迅にしてみると、こういう陰気の溜まる場所の方が、甚く住み心地が良く快適に暮らせるらしかった。
章子も超常的な気配に対して敏感に第6感が強く働く方で、ここら辺の土地に来ると、寒気というのか怖気というのかを感じはするのだが、心身ともに健康で精神的な抵抗力が高いので、穢れた瘴気が別段障ることもなく、完全に無視できるレベルなので、悪影響は受けず全くの平気だった。
予めアポも取らずにゲリラ的に来訪したが、比良坂亭に章子が到着すると、白シャツに黒パンツに黒のベストという出立の女性、執事という体裁の使用人、奥津城桃花が急の来客にも困った素振りは見せず、寧ろ微笑みながら「いらっしゃいませ」と慇懃に出迎えた。
桃花は年齢なら20代中盤くらいの、物腰の優しそうな美人である。身長は170センチ位でプロポーションは良く、腰はくびれ胸は豊満である。家政婦にエプロンドレス的なメイド服の着用を促さず、執事の格好をさせているのはこの家の主人である千迅の趣味である。
女性の曲線的身体ラインは、男装させた方がより美しく映えて素晴らしい。が千迅の一家言である。実際に奥津城桃花は、この女性執事という装いがよく馴染んでおり似合っている。婀娜もある。少なくともメイド服姿よりは。
「アッ、ドーモ、桃花さん。千迅ちゃん居ますか?」章子が快活にアイサツをすると、「こんにちは章子ちゃん。ええ、おりますよ。中へどうぞ」桃花は章子を屋内へと案内した。
比良坂千迅は廿ばかりの見た目の長身痩躯で、何時も全身黒尽くめの服装の男装の優女である。浮世離れした雰囲気の漂う何処か得体の知れぬ人物なので、麗人より優女と表現する方がイメージ的にあっている。そして遊び人で女好き。恋愛対象にするなら男より女という性指向者であった。
とはいえ、女性なら老幼問わずで誰でも口説くような見境なしではなく、選り好みはするので、友人の娘である高柳章子7歳に現時点で手を出そうという気はまったくなく、歳の離れた友人というような付き合い方を普通にしていた。
一応付記しておけば、桃花と異なりスレンダーな体型の千迅のバストは、どちらかというと貧素である。その分、華奢で儚げな雰囲気はあるが。
「……だから、街がゾンビで溢れて皆が慌てふためいて逃げ惑う時に、わたしだけ冷静に格好良くやっけられるように、今のうちに練習しときたいの!」章子は、ここに来た目的を千迅に語って聞かせた。
「ソンビが街に溢れるよう事態は中々起こり得ないと思うがな」子供の妄言を面白がって千迅は聞いているが「しかしまあ、万が一に備える気持ちは大切だ」案外真面目に対応していた。
「夢見を利用した仮想現実的な舞台で、ゾンビ・パンデミックに汚染された町内という筋書きを再現して体感してみるかい? 恰度、パソコンの半導体メモリ上に設定した基本情報を媒体に、隠れ里的な異世界を創造するのは可能か否か、その実験をやってみたかったんだ」
千迅が提案すると、「やる。やる。やるー!」章子は鼻息荒く、元気よく返答した。「そうか。若いうちは何でもチャレンジしないとな。おい、桃花。C64持ってきてくれるか」「はい。承知致しました」千迅に命じられ、桃花は一礼して後に、部屋を出ていった。
「C64……コミックマーケット64?」章子が小さく呟いて小首を傾げる。7歳にして父親と一緒にだが既にコミケ参加の経験がある。これは何とも将来が愉しみな恐るべき早熟オタクである。
因みに、C64をコミックマーケット64と解釈すると、2003年夏に東京ビッグサイトで行われた同人誌販売イベントの意味になるのだろうか。
「い、いや、違う」千迅は即、否定した。「 Commodore 64だ。1982年に発売された個人ユースのボビー用のパソコンだよ。年経りた道具に霊が宿って怪異と化すって伝承は知ってるだろ?」「うん。つくも神ってやつだよね」章子の模範的解答に、千迅は満足げに一つ頷いた。
「そうそう。流石オカルト雑誌に関わってる父親の娘だけあって、よくご存知だ。精怪とも呼ぶのだが、古いパソコンがそういう状況で変化したらどう化けるか、それを実験中でね。同時期の8ビット機を色々と収集して熟成させているんだ。
中でも、所有してから長く、SID音源が好きで私自らが愛情込めてよく弄ってたんで妖としてはC64が一番優秀に成長している。まだ自我はないので妖物として確立してはいないんだが、今回の実験に協力して貰うのには恰度お誂え向きなのでね、桃花に取りに行かせた」
「うわぁおぉ。コンピュータでハイテクつくも神だね。凄い! 凄い!」興奮して喜ぶ章子に、「いや、ハイテクとつけるのはどうかな?」千迅は苦笑で応えた。既にOSは32ビットが標準となった今、8ビットパソコンの価値を考えるなら古美術品としてであろう。
桃花がキーボード一体式のC64本体をローテーブルの上に設置すると、千迅は電源を入れて何やら打ち込んだ。その後、章子をソファに寝るよう促して、その指先に何かのセンサーらしき物をテープで軽く固定する。
「これ何?」「反射型フォトセンサ。簡易的に脈拍をモニターしたいんでね」章子の質問に答える千迅。章子の指先に巻き付けられたセンサからは細いビニル皮膜電線が4本伸びており、机の上の剥き出しで置かれた汎用穴空基板──ICや抵抗器やコンデンサが半田付けされている──に繋がっていた。
「あれ、千迅ちゃんが作ったの?」章子はその基盤に視線を向けながら尋ねる。「ああ、作ったというほど難しいものではないが。アレを中間バッファ的に使って、C64に章子の心拍数の変化を入力してやるんだ。とはいえバイタルサイン取得よりも、繋がっている事実が危険な状況を判断する助けになる」
千迅の答を裏付けるように、見れば自作基盤から伸びたリボンケーブルの何本かの先端が、C64の背面にあるIOポートにかなり無理矢理に捩じ込まれている。性能で比べたら最近の安物PDAにすら到底及ばない旧式パソコンのC64に、一体どんな処理をさせようというのか?
このC64が単なる半導体の集積で構築された論理回路に過ぎぬ普通の型遅れの機械であったとしたら、何を処理させても、低スペック故に徒に大それた結果を求めても、決して期待に応えるような成果は得られなかったであろう。
しかしこのC64は、既に超常的な何かへと変化し始めている妖物の幼生である。その性能は、恐るべきことに極断片的な処理だけで鑑みれば部分的に量子コンピュータに肉薄しつつあった。
「さあ、準備はよしだ。このまま眠れば愉しい仮想現実の始まりだ。ああ、そうだ。ゾンビと戦うんだったら、夢の中に登場させる写し身に、15、6歳くらいにまで成長した自分を思い浮かべといた方が良いぞ。身に着けたい武器なり防具なりも考えながら眠るのをお勧めする」
「16歳のわたしかぁ。うーん、きっとこう、すごい美人でカッコイイお姉さんになってるんだろうなぁ。後は、武器と防具? 武器は丸太……いや吸血鬼じゃなくてゾンビだからチェーンソー……もっとスマートなのがいいなぁ……」章子は程なく眠りに落ちた。
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「イヤーッ!」ドゴッ! ワンインチ距離からの“ナゴヤ・アタック”と章子が命名したインベーダーゲームめいた必殺パンチで、正面のゾンビの頭部が吹っ飛んだ。首の断面から、切れの悪い老人の小便のように血が勢いなくドロドロと流れる。
「ハァッ!」バギッ! 肘打ちを横から迫ってきたゾンビの顔面に打ち込む。今度もゾンビの頭部が吹っ飛んだ。熟し過ぎたトマトを潰したように腐った血が飛び散る。
「フンッ!」ゴギッ! 章子はゾンビの顔面に平手打ちを喰らわす。ゾンビの頭部が180度回転し、頚椎が破壊される。ゾンビはその場に崩折れる。
「フンッ!」ゴギッ! 一息入れる間もなく、新たなゾンビがハラワタを引き釣りながら接近してきた。そのゾンビの腸を掴むと素早く首に巻き付け、敵の背後を取った章子はそれをロープ代わりに使って背負う形で首を圧し折った。
瞬く間に4体のゾンビを片付けた章子のお手前はお見事の一言だが、その時点で残りを確認するとまだ9体が残存していた。このくらいの数ならなんとかなる、と章子が考えた時、後方から新手のゾンビの大群が緩慢な足取りで接近してくるのに気付いた。
「げっ!?」章子は呻き声を上げた。新着のソンビの数がどうみてもかなり多い。何体なのか正確な数字は不明だが、ざっと目算しただけでも20体以上……きっともっと居る。「流石にこんだけ一遍に相手はヤバイわ。まいったなぁ」困った顔をする。
緊迫する状況に、無意識的に章子の心拍数が上昇する。その時──ブパラブパラブパラブララパパパ! 安っぽい電子音めいた警告音が大音響で鳴り響いた。
その独特の音色、耳にこびりつくようなそれは聞く人が聞けば、一部のマニアックなミュージシャンに熱烈に愛されているコモドール64のSID(MOS Technology 6581/8580 SID Chip)音源が奏でるBGMだと感づいたはずである。
章子の意識は急速に覚醒に向かい、夢を利用して創造された仮想現実世界から、現実世界へと引き戻されて行く。
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章子が目を開けると、ニヤニヤと薄笑いを浮かべた千迅の顔が視界に飛び込んできた。「安全装置が働いてゲーム終了だったようだが、愉しめたかい?」章子は半身を起こすと少し考えた。
「愉しかった……けど、ゾンビがいっぱいの時にはやっぱり芝刈り機くらい要るなって、思った」大切な部分に気づきました、という顔をする章子の脳裡には、Braindeadのゾンビを尽くミンチに変えていく、主人公が獅子奮迅に活躍する見せ場シーンの映像が浮かんでいた。
「成る程。知人の危機的状況に颯爽と駆けつけて『The Party Is Over!』とかやれば、確かにカッコイイかもな。まあ精進してくれ。データが取れてこっちも助かる」章子の頭を千迅は愛情を込めて、軽くポンと叩いた。
反射型フォトセンサというのはLEDとフォトトランジスタを組み合わせたセンサで、自分も作ってみたことありますが、簡単な回路で指先に流れる血液の量から心拍数を読み取れたりします。興味ある方はRPR-220辺りで検索してみて下さい。
コモドール64のSID音源のBGMは一度聞けば耳に残る強烈な音色です。好き嫌いはあると思いますが、個人的には大好きです。
イメージファイト ─ヴァーサス・ゾンビ─はこれで終わり。