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ローリングサンダー(Rolling Thunder) #2

短いですね。

「へえ、君が昨日話題に挙がっていた“火葬炉インシェネレイター”君か。……僕の想像したよりも遥かに若いなぁ」ドッジ達4人の元を事務員が立ち去るのを見計らったように、軽鎧を身に纏い長剣を背負った30前くらいの顔立ちの整った男が、今度はエリエルに声を掛けて来た。

 男はスラッと長身だが、筋肉が程よく付いた体躯で逞しく、如何にも女にモテそうな雰囲気の風貌を備えていた。だが、エリエルは男のルックスには興味を全く示さず、寧ろ胸中で(早速、面倒そうなのが絡んできた?)とごちて、警戒心を高めていた。

「えっと、どちら様でしょうか? それと、わたしは“火葬炉”なんて口にするのがこっ恥ずかしい2つ名を認める気はありませんので、その名で呼ばないで下さい」エリエルは男を胡乱者と見做すことにして、妙な真似をされても対処出来るように気を引き締めた。

「えっ、真逆、猟人会の会員なのに僕のことを知らないの!? ああ、そうか。新人さんだものな。ならしょうがないか。ドーモ、初めまして。僕はマスカー・ブリッツ。2級のハンターでチーム“ローリングサンダー”のリーダーを務めています」

「……はぁ」エリアルはその自己紹介に微妙な表情を浮かべた。(Rolling Thunderって。また古語的名称なの。何、今、古語でチーム名とか通り名とか付けるの流行はやってるの? 流行してるの?)呆れて思わず胸中でそう突っ込んでしまう。

「ドーモ、ご丁寧に。初めまして、わたしはエリエルです。“ローリングサンダー”っていうのは、えーと、“転がるカミナリ”って意味でしたかね?」オジギして挨拶を返したエリエルは、うろ憶えの知識でローリングサンダーの意味を共通語に意訳してみた。

「いやいや、そういうカッコ悪い現代語訳は勘弁して欲しいな。“轟く雷鳴”っていって貰いたい」マスカーが訂正すると、「「「ははは」」」ドッジ、マッジ、サッジの3人が皆して笑った。エリエルの意訳が受けたらしい。

「“転がるカミナリ”か、いいんじゃないの。もういっそ、正式名称をそれに変更したらどうだい。“ローリングサンダー”なんて気取った妙なチーム名、聞いても意味が理解不明な人間の方が多いんだから、この機会に変えちゃえよ」とマッジ。

「いやいや、チーム名に“爆進兄弟・烈! 號! 3匹”とか付けてる君らに、“ローリングサンダー”を妙なチーム名と評価される筋合いはないと思うぞ」憤慨のポーズを見せるマスカー。「嬢ちゃんが参加したなら今度は3匹+1だな」ドッジが付け足す。

(“爆進兄弟・烈! 號! 3匹+1”って長いよ。取り敢えず正式加入の予定は今のところないからいいんですけども)エリエルは心中で突っ込んだ。「で、その転がるカ……轟く雷鳴のリーダーさんが、わたしに何の御用でしょうか?」

「君がフリーなら、僕のチームにスカウトしたい……って思ってたんだが、何、既にドッジのとこに入っちゃったの?」「正式加入はしてません。機会があれば時々臨時にお願いする程度でしょうか。そもそもハンターとして精力的に活動する予定がありませんので」

「へえ。それじゃあ、今度は僕のチームにお試しで臨時参加してみない。僕は雷系魔術が得意で“電人デンジン”の2つ名を持っている。そこに君が加わってくれたら、雷と焔でチームに2枚看板を得られそうだから」マスカーは、エリエルを物欲しそうな目で見る。

「おいおい。嬢ちゃんは一応、うちの専属みたいなもんだぞ。堂々と目の前で引き抜こうとするなよ」文句をいうドッジ。「本人が正式加入でないといってるんだ、僕のチームにもチャンスがあってもいいだろう」マスカーは反論する。

 ドッジ達3人とマスカーはそれなりの見知った中であった。特別親しい関係にあるではないが、かといって不仲でもない。猟人会の規則的に、エリエルが既に烈! 號! 3匹の正式メンバーであれば露骨な引き抜きは拙いが、そうでないなら勧誘は未だセーフである。

 もしも現段階でエリエルが自分の意思でローリングサンダーに体験参加してみたいと希望すれば、烈! 號! 3匹にそれを咎める権利はない。なのでマスカーは誘ってみたのだ。しかし、エリエルの興味を大して惹くこともなく、勧誘の努力は徒労に終わりそうだった。

 ローリングサンダーは結構ネームバリューのあるチームなのだが、猟人会の内部事情に詳しくなく関心もないエリエルにとっては何の意味もない。外見の良いマスカーは女性に人気があるのだが、エリエルの好みではないので、こちらも魅了効果は発揮しなかった。

 だが、マスカーの雷系魔術が得意という部分に、エリエルは若干の食い付きを見せた。「正直、ローリングサンダーへの体験参加はお断りしたいです。……でも、マスカーさんは雷系魔術が得意なんですか? 雷系の熟練者は少ないので、それは凄いと思います」

「へぇ。雷系魔術に興味が?」「ええ。実は使える攻撃魔術の種類をもっと増やさなければ、と考えていまして。わたしには、何れは嫌でも対抗することになるんだろうなという敵的な身内が存在しておりまして。疾く速やかに強くなりたいというのが本音です」

「それは、それは。事情はどうあれ、向上心を持つのは良いことだね。なら、どうだろう。この僕と、今から模擬戦でお手合わせ、って趣向は如何かな?」「えっ、勉強させて貰えるんでしょうか?」マスカーが提案すると、エリエルは期待に満ちた瞳を輝かす。

「いやいや。僕には他人様の指導は無理だけどね。でも模擬戦で幾つかの雷系魔術を君に見せるくらいは可能だからさ。まあ、それで僕に興味を持たせて側に居れば何か学べるかもとローリングサンダー加入を検討してくれるんじゃないか、と打算を働かせた訳だ」

「はは。正直なんですね。ローリングサンダーに加入することは……申し訳ないですが、多分ないと思うので期待しないで欲しいですけれど。模擬戦して頂けるのであれば、是非ともお願いしたいです。どうか、胸をお貸し下さい」エリエルは深くオジギした。

「いやいや、他人に頼み事する時に頭下げるのは大切だけど、そこまで畏まらなくてもいいよ。模擬戦、こちらこら振ったんだし勿論OKだよ。ここには会員の為の訓練用の土地があるから、そこでやろう」マスカーはエリエルを、建物の裏にある訓練場にと導いた。

ローリングサンダー(Rolling Thunder) #3へ続く。

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