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勇者タカユキと七人の少女~異世界パンツ英雄譚3~  作者: 月見七春
第八章 未来は僕らの手の中
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第七十一話

 



 ルナを連れてルーミリア帝都に入るレオは頼もしいの一言だった。

 これが例えば不安そうにきょろきょろしながら、だったらルナも緊張していただろうけど。レオは周囲をきょろきょろみては綺麗なお姉さんにでれっとしそうになって、慌てて頭を振るとかだからね。

 いつも通りといえばいつも通り。頑張っていると言えば頑張っているし、その方向性がすっごくレオらしいからね。呆れた目をしつつも、ルナは文句も言わずについていっている。

 クロちゃんと二人で建物の上にあがって見守るけど、心配いらなそうだ。地図から少しでも外れるたびにレオはいろんな人に物怖じせずに声を掛けて現在地を確かめている。

 テレビで見る「大成功フラグ」しかない。ここまでくると、ルナがおんぶにだっこなのが気になるくらいです。


「というわけ」


 クロちゃんが床に投射してくれたピジョウのみんなに報告すると、クラお姉ちゃんは自慢げに、クルお姉ちゃんは大層不満げな顔になりました。あと見切れてるルカお姉ちゃんがどや顔なのも受ける。


「どうする? 作戦通りならこのあと狼のおじいさんに道案内をしてもらう仕掛けがあるけど」

「二人はこのままいけば仲良くなりそうだぞ」


 クロちゃんの言葉にうんうんと頷いた。

 お兄ちゃんがほっとした顔で言うよ。そのままでいいって。

 でもクルお姉ちゃんは納得いってない顔です。


『ルナにもなにかできるところを見せてもらわなきゃ』

「ええ……でもルナ内弁慶だから、レオが男気みせて終わりだと思うよ?」

『くっ……』


 歯がみするクルお姉ちゃんの頭にお兄ちゃんがチョップした。

 後は頼む。この後も映像送り続けて、というのでクロちゃんが指を鳴らした。床の映像が消える。


「さて、二人はそろそろ店に入るな。次の見所は?」

「ちゃんとおつかいのドレスとティアラをゲットできるかな、だよ!」

「まあ、楽勝そうだな」

「だね」


 クロちゃんとうなずき合って、ローブをまとって地面に下りた。

 まさか、お店に問題があるとも知らずに。


 ◆


 コハナお姉ちゃんが発注した仕立物屋に入る。

 レオとルナが二人でテーブルに向かっていた。

 お茶とお菓子を出してもらっている。

 トレイを持つ人を見て、ペロリは思わずクロちゃんと顔を見合わせちゃった。

 それもそのはず。


「えへへへへ。かぞくのためにがんばってるの。えらいでしょー」

「本当ね……ふふ」


 ほとんど下着姿同然の、肌だしまくりの色っぽい狼お姉さんが店主さんだったから。

 当然のようにレオが鼻の下を伸ばしてでれでれしている。

 そして面白くなさそうにルナが睨んでいる。

 あああああ……ああああああ……。


「店を選んだのはコハナのやつだ。あいつめ」


 クロちゃん! ばしっといってよ!


「やるな。レオの決意を確かめようというのだな」


 ええええ……。褒めちゃう流れ……?


「ぼくたち、なにが食べたい? ピジョウ領主の息子さんなのにえらいね」

「そーでしょー!」


 レオ! だめだよ! でれでれするたびにルナの好感度さがっていってるよ!


「……おようふく」

「あら、そうだった。待っていて、すぐに持ってくるから」


 ルナの冷たい声に微笑みを浮かべて、お姉さんがお店の奥に下がる。

 お兄ちゃんがコハナお姉ちゃんに甘えられてる時に見せるしまりのない顔そっくりの表情で、レオがお姉さんを見送っていた。

 頭痛がするなあ。ここまで育ったんだなあ、という感慨もあるけどね。

 お兄ちゃんはあんまりしらないけど、レオはもうやんちゃでしょうがなくて大変だったんだから。赤ちゃんの頃は殴られたり蹴られたりもしょっちゅうだったよ?

 それが今ではお兄ちゃんみたいになっちゃって……。

 いろんな意味で泣けてきちゃう。


「レオの好きなんて、どーせそんなもんだよね……」


 ああ! ルナが! クルお姉ちゃんが拗ねている時そっくりにやさぐれはじめたよ!

 レオも! あ、やべって顔するの遅いから! そういうところもお兄ちゃんの息子そのものだけど!


「ち、ちげえし。ほら。お菓子たべよ?」

「ものでつるんだ」

「ち、ちげえし」


 頭いたくなってきた。五歳児の会話なの? これが?


「はやくかえりたい」

「そ、そんなこというなよ」

「……」


 ほーらもう。ぶすっとしちゃったじゃーん。

 レオどうするの? ルナほっぺた膨らましてアピールしてるよ? 私怒ってるんですけどモードだよ? ……ほんとクルお姉ちゃんそっくりに育ってるなあ。案外、日常のペロリたちのことしっかり見てるのかも。

 ピジョウで中継映像みてるみんなはどうしているんだろう。きっとクルお姉ちゃん、今頃お兄ちゃんとケンカしてそうだなあ。

 それはそれとして。


「おまちどうさま。ドレスとティアラはこちらのカバンに入れておいたよ。大きいけど持てる?」

「らくしょー」


 お姉さんの渡したカバンはレオくらいの大きさだった。けれどレオは余裕の顔で担ぐ。こういう力があるところ、いいね。ルナもちょっと見直した顔でみてる。いいよー。

 でもレオがどや顔で見たら、すぐにぷいっと顔を背けてます。子供か。子供だ。


「おじょうちゃん、せっかくだから見ていかない? お姫さまにぴったりなお洋服もたくさんあるのよ?」

「……べつに」

「そういわないで。今着ているお洋服もステキだわ」

「……まあ」


 あ、褒められてちょっと口元にやけた。


「じゃあ……ちょっとだけ」


 誘われるままにお店の奥に入っていく。

 奥から二人ではしゃぐ声がする中、レオは最初こそカバンを担いでいたけど、二人の会話が終わる気配がないとみるとため息と共にカバンを置いたよ。


「……ママもそうだけど、ながいよなあ」


 愚痴ってる。五歳児が愚痴ってる。

 きっとピジョウで笑い声が響いているに違いない。

 ペロリもクロちゃんと顔を見合わせて吹き出すのを堪えるのに必死になったもん。


「せっかくだから試作品だけど、これ着てみて? 気に入ったらそのまま帰っちゃってだいじょうぶだから」

「いいの?」

「結構なお代をいただいちゃってるし、なにより宣伝になるからね。ピジョウのお姫さまが着てくれたら、うちのお店は大繁盛間違いなし! 気に入らなかったら別に無理しなくてもいいけど……どう?」

「……いいかんじ」


 じゃあ着替えてみましょうか、という声が聞こえる。

 クルお姉ちゃん、青ざめていそう。いやいや勝手にものもらっちゃだめだよって怒りそう。

 でも意外。あんまり魔法以外に興味のないルナも、お洋服には勝てないのか。

 このままいくと着替えて戻ってきそうだ。

 レオ! ちゃんと褒められるかどうか、ルナの機嫌はそこにかかってるよ!

 がんばって!




 つづく。

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