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勇者タカユキと七人の少女~異世界パンツ英雄譚3~  作者: 月見七春
第六章 ふたりは神さまカーニバル!
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第五十五話

 



 屋台飯を楽しんでいたコルリを捕まえて、天界から来た三人にも壇上にあがってもらいスピーチをした。クロリアとクラリスが練りに練った原稿だけに、受けはいい。

 だが俺は喋っている間も、席に戻ってからもずっと気になっていた。


「いやあ、感動のスピーチだったかな!」

「受けたかどうかって? そうだな……ああ、受けた」


 サングラスを掛けたクルルとナコが二人してカメラに向かって実況していたのだ。

 クルルが運営するピジョウ放送局は、今回の祭りに向けた規格として24時間テレビという無茶ぶりを打ち出した。あいつら体力もてばいいけど。

 母親の勇姿をペロリの膝上で見守るルナには紐がついている。迂闊に飛んでどこかへいってしまわないようにするための措置だ。同じようにペロリの膝上にいるレオがその紐を掴んでぶんぶん振り回しているところが不安を誘うが、しかし壇上からだと手が出せない。まあペロリがレオの手を握って見守っているから、だいじょうぶだとは思うのだが。

 はらはらしていた時だった。


「……あれ、こいつの子供?」


 破壊神が女神に囁きかけている。

 ……パワーワードすぎないか? ちょっと腰砕けるな。

 だいたいこいつらには名前があったりしないのか?

 そんなことを考える俺を半目で見ながら、女神がどや顔をみせる。


「その隣にいる狼姫の膝上の三つ子もね」

「……まさに種馬」


 おい! おいこら! 聞こえているからな!


「こほん」


 クラリスが咳払いをして、壇上へと向かう。

 視線を向けてくる彼女についていき、開会を宣言した。

 あがる花火、歓声に嫌が応にもテンションが上がる。

 しかし同時に肝も冷える。

 後ろにいる破壊神を満足させられるかどうか。

 別に女神が面倒を見てくれている限り、世界に悪影響はないのだろうが……それでも事故は起きる。

 俺たちは世界の未来と共に、国の命運を賭けることにした。

 その結果がよくなればと願わずにはいられないのだった。


 ◆


 お祭りの目玉イベントは明日の昼から開始となる合戦だ。

 もちろん他にもいろいろと用意した。

 大きなネタではないとはいえ、確認せずにはいられない。

 まずは温泉のある山へと向かう。

 休火山の名前は募集中だったのだが、どうにも決まらないので催しで決めることにした。

 その催しを目の当たりにした女神が半目で俺を睨んでくる。


「ねえ。カップルが抱き合って、あつあつの温泉でどれだけ長い時間キスし続けられるかって戦いなんだよね?」


 隣にいる破壊神がため息を吐いた。


「……絵面がひどいよ」


 彼女たちの言葉に言い返せない。

 スライムが湯に溶けそうになりながら一つ目巨人の頭を覆っている。あれはキスなのだろうか。口が完全に塞がれた巨人は死んだりしないのだろうか。

 隣では狼の男達がくっついている。これ以上の描写は俺のためにも、俺の話を聞いてくれる人のためにもならないと思うのだが、しかし破壊神が二人をじっと見つめているのはなぜなのか。

 女神は女神で、ちゃっかり参加しているコハナがコルリと熱烈なラブシーンを展開しているのを小さな板きれを向けて楽しそうに笑っているところが怖い。

 まともなカップルはいるのだが、今いった三組が強烈すぎてどうにもいかん。

 俺も次の回には参加するつもりなのだが、しかしやらせてみると第一回戦でもうお腹いっぱいだな。仲間がこないのなら俺はよしておこう。あの三組に勝てる自信なし。

 とりあえず女神も破壊神も勝負がつくまでじっくり観戦していたのでよしとするか。

 ちなみに破壊神が最後まで見たいと言うので見守った結果、優勝者はコハナとコルリのペアになりました。温泉の中でびくんびくんしているコルリとつやっつやの笑顔のコハナの水着姿が股間によろしくない。優勝の権利として山に名付けることになったコハナは、フジヤマと名付けた。なんでだろう。無性に頭が痛い。

 頭が痛いといえば、他にも頭痛の種はあるぞ。

 観戦していた女子の何人かがコハナに熱い視線を送っているのを、俺は一体どういう気持ちで見守ればいいんだ……。

 悩みはじめた時だった。


「お兄ちゃん!」


 ペロリの声がしたのは。

 見れば三つ子を抱いたルカルーと一緒に歩いてきている。

 レオとルナを抱いたペロリは軽快に走ってきて、俺のそばで立ち止まった。


「このあとサーカス来てくれる?」

「サーカス? 舞台で踊るだけじゃなかったっけ?」

「ルーミリアから来てくれてるの! ね? ね? いいでしょ?」


 はしゃいだ声だなあ。行かない理由なんて一つもない。もちろん行くとも。

 ルーミリアのサーカスか。

 クラリスかクロリアあたりは把握していそうだ。となると、二人が言わなかったのはなぜだ?


「きっと楽しんでくれると思うの! ね? 決まり!」


 ルカルーを見たら笑っていた。

 ペロリの先導でピジョウの街中へと戻る。

 高所から見る街の中央噴水広場には、なるほど。大きなテントが設置されていた。

 いつの間に。

 そう思いながら両隣を見る。

 神さま二人はペロリが言ったサーカスという単語に魅力を感じたようだった。


「サーカスっていったら象が玉乗りするみたいなの?」

「玉乗りするなら恐竜だろ」

「いやいないから。あんた全部消しちゃったじゃない」

「人が欲しいっていうから破壊したまでです」


 ううん……規模がわからない。神基準わかんないなー。物騒ってことしかわからない。


「とりあえず行こう。くだらない話をしながらいこう。そうしよう」


 二人の背中を押す俺を面倒そうに見ながらも、神である二人の女性は素直に歩いてくれたのだった。

 ペロリがレオとルナを背負う。

 歩くと当然、二人の子供と目が合う。

 レオが不意にあうあういいながら破壊神に手を伸ばした。

 戸惑う女性にどうぞどうぞ、と握手を促す。

 恐る恐る手を伸ばした手を、レオがきゅっと握った。そしてでれっとした顔をする。

 幼児の感情表現に顔を緩ませる破壊神を見て、ふと感じた。何かの可能性を。

 それを言語化する前に、俺はさらに気づいてしまった。

 でれでれした顔をしたレオが、破壊神の豊満な乳をじっと見ていることに。

 ……お前。我が子ながら、お前。その年からすけべって相当だよ! まったくもう!

 にやにや笑顔の女神の視線に俺は居たたまれない気持ちでいっぱいでした。




 つづく!

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