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2 ブラック魔王

セリフ多めです。

 「さて、まずは自己紹介からいきましょうか。」


 「それよりもここはどこなんだよ。」


 俺が今いるこの場所はどこなのか。見れば平原だとわかるが、けれど俺が聞きたいのはそういうことではなく、この魔法なんてものがある世界について聞いているのだ。


 「物事には順序というものがあるのよ。あとで説明してあげるから、まずは話を進めさせなさい。」


 何が何でも自己紹介から始めたいらしい。今度止めたらお仕置きと目が言っている・・・ような気がする。


 正直さっきまでさせられていたような命令をもう一度させられるのは勘弁願いたいので、ここはおとなしく引き下がる。どうせあとで説明してくれるようだし、急ぐ必要もないだろう。


 ちなみにさっき命令された「姿勢を正して語尾にニャー」は撤回されて、今では普通に話せるし、楽な姿勢をとっている。胡座って素晴らしい。


 「まずは私から。私の名前はリリアナ=クーレス=フォン=ロイト=ルグルスター=ニョトス=フルーレリア=ロルティッシアよ。」


 「・・・は?」


 「だから、リリアナ=クーレス=フォン=ロイト=ルグルスター=ニョトス=フルーレリア=ロルティッシアよ。」


 「ごめん。覚えらんないや。」


 幾ら何でも名前長すぎだろ。そりゃ日本にはじゅげむで有名な名前長すぎ不幸少年の話があるけどさ。リアルでこんな名前の人の名前なんて覚えられるわけねーだろ。よく覚えたなお父さん。


 「はあ。記憶力も人並みといったところかしら。まあ仕方ないわね。」


 「そんな残念な子供を見るような目をやめろ。」


 「じゃあ特別にリリアナと呼ばせてあげるわ。正し必ず敬称をつけて、リリアナ様と呼びなさいね。」


 「誰が呼ぶかよ。」


 「呼びなさい!」


 リリアナ様に命令されてしまった。ということはリリアナ様に解除してもらわない限り敬称を取ることはできないのだろうか・・・心の中でさえつけてしまっているのだからそうなんだろうな。


 「わかりましたよリリアナ様。」


 「よろしい。それじゃああなたも自己紹介しなさい。」


 「もう知ってるだろ?」


 「相手が名乗ったら自分も名乗るのが礼儀というものよ。たとえ相手絵が自分の情報を全て知っていたとしてもね。」


 まあそれはそうか。社交辞令ってことで名乗られれば名乗り返すのはマナーっていうことね。


 「俺は清水交一。」


 「じゃあ交一くん。とりあえず小指にはまった指輪に触れてみなさい。」


 言われた通りに契約した時にはめられた右手小指にある銀色の指をに触れる。


 するとそこから半透明のウインドウが飛び出し、まるでゲーム画面のような表記が浮かぶ。


 「なんだこれ。」


 「あまり驚かないのね。」


 少しつまらなそうにリリアナ様が髪をいじっているが、これまでのことを考えればリアクションが薄くなるのも仕方ないと思う。


 「それよりこれはなんなんだよ。まるでステータス表記みたいに見えるんだけど?」


 「その通りよ。」


 「その通りって・・・ここはゲームの世界なのか?」


 もう何を言われてもさほど驚くことはない。ここがゲーム雨の世界と言われても頷くのみだ。


 「ゲームの世界みたいに創られた世界って言えばわかるかしら?この世界の創造主があなたの世界のゲームを気に入っちゃったみたいでね。それでゲームみたいな世界にしたら面白そうだって思って創られたのがこの世界よ。」


 「何してんの神様。」


 リリアナ様の話に俺は驚きというよりむしろ呆れた。


 まさかうちのゲームをベースに世界作っちゃうとか。というか娯楽感バリバリなんですが神様。


 「私はもともとこの世界の人間じゃないんだけどね、この世界の神様が他の世界の人を連れてきた方が面白くなりそうって思ったらしくって、私をこの世界に勧誘してきたのよ。私は結構暇してたから、ついでに何人か私も違う世界から連れてきても良いか聞いたらOKでちゃって。」


 「・・・だから俺が今ここにいると?」


 「そういうこと。」


 「・・・。」


 これはなんだろうか。つまりこの世界の娯楽に付き合わされるために俺がこんなトンデモな場所に連れてこられたと?そして奴隷にされて語尾にニャーとつけさせられたと?クソ痛い契約を履行させられたと?


 とりあえず。


 「神様のクソやろうガーーーーー!!」


 「まあそういうことだから。色々と諦めなさい。」


 「・・・例えば?」


 「そうね。例えば裸で街の中走り回りなさいと言われても、私の命令なら仕方ないと諦めればいくらか心も保てると思うわよ。」


 「そんな命令断固拒否する!」


 「あら?私の命令を拒否することができると思ってるの?」


 「すみません。お願いします。そこまで人間諦めたくないのでどうかお慈悲を。」


 俺は綺麗な土下座をかましてリリアナ様に懇願する。


 これくらいなら諦められるが、さすがに人間をやめるような事態は避けたい。


 「私がそんなことさせるわけないでしょう。奴隷がそんなことをしたら主人である私の品位が疑われるもの。」


 おのれ・・・からかうために冗談言っただけだなこのリリアナ様・・・。


 「話が逸れすぎたわね。とりあえず、あなたのステータスを確認してみなさい。」


 再びステータスの話に戻ってきたので、俺も素直に指輪上部に浮かんだままのウインドウを見る。これ以上いじられるのはごめんだからな。


 ステータス表記は全て日本語で書かれていて、各項目も俺がやっていたRPGの表記と似たようなものだった。項目は多かったが。


【名前】清水交一

【種族】人間

【職業】奴隷Lv1

【加護】魔王の加護

【能力】HP:20 MP:5 筋力:9 瞬発力:7 持久力:6 知力:8 精神力:11 思考速度:6 感度:7 応用力:6 筋肉量:10 脂肪率:10%

【特殊能力】習得速度上昇 職業適応率100% 不屈の精神 不壊の肉体 立場逆転

【魔法】火の粉 水飛沫 地形操作 送風 スタンガン 製氷

【称号】魔王の配下 神を冒涜せし者 神に笑われた者 死の痛みを知る者


 「なんか色々突っ込みたいことがあるんだけど・・・。」


 「いいわ。言ってみなさい。」


 「じゃあとりあえず、能力が軒並み一桁なのは普通なのですかね?」


 「レベル1だったら普通よ。特に職業奴隷だけだし、まだ強いほうじゃない?」


 「そうですか。なら魔法を覚えてるんだけどこれは?」


 「一応奴隷の仕事を最低限こなせるように魔法をおぼえさせたつもりだったのだけど、MPが低すぎて使えないわね。」


 「なるほど。じゃあこの特殊能力各種は?」


 「それも私の奴隷として十全に働けるように私が与えたものよ。」


 「この不壊の体っていうのはやっぱり・・・。」


 「もちろん不死身ってことよ。ただし、私が望んでいる限りね。」


 いろいろ頭を抱えたくなるようなことをあっさりと言われ、リアクションをとらないまでもなんというかこう、色々ときつい。もうお前は人間やめてるからなって突きつけられているみたいだ。


 「じゃあ、この魔王の加護っていうのは?」


 「ようやく聞いてくれたわね。」


 「あ、やっぱりいいです。」


 「そこは聞きなさいよ!」


 リリアナ様はこの部分を早く聞いてほしかったみたいで、ようやくこたえられるといったところに俺の華麗なお断り。ただ、それで断り切れないのが今の自分の立場なわけで。


 「・・・この魔王の加護というのはなんでしょうか?」


 俺はいやいやながらも、というか今の反応でだいたい察しの付く質問をする。


 「それは私があなたに授けた加護よ!つまり―」


 「リリアナ様は魔王ってことですね。」


 「先に私のセリフ言わないでよ!」


 おお~リリアナ様がたいそうご立腹だ。これは一矢報いたといっても過言ではなかろうか?


 「罰として今日はご飯抜きね。」


 「ちょ、それはあんまりだろ!」


 「魔王に向かって無礼を働いたのだからこれくらいで済んでむしろありがとうございますと言ってほしいくらいだわ。」


 確かに本当にリリアナ様が魔王だとしたら、今まで俺は即首を落とされても文句は言えないほど無礼なことをしていたと思うのだが。しかし、このみためゴスロリ魔法少女な彼女を魔王とみることができないでいるのを誰が責められようか。


 「魔王ってあの世界征服したり、世界を破滅に追いやったり、お姫様さらったりするあれだろ?リリアナ様みたいなちんちくりんが魔王様って何の冗談ですか?」


 無言で殴られて3メートルくらい吹き飛ばされた。


 正確には鬼の形相で顔面に右ストレートを放ち、綺麗にクリーンヒット。普通なら頭破裂するんじゃないかという威力を受けてなおぶちまけずに済みつつ、3メートルほどの距離を飛行。着地したと思ったらそこからごろごろと勢いを殺しきれずに転がされ、満身創痍の状態であおむけの体勢になった。


 痛いとかそういう次元の話じゃない激痛を受けながらも不屈の精神という能力のおかげかまだ考える余裕がある。


 とりあえず次から背の話はやめておこう。


 「どびあえず、おあえがあおうっでいうのあいんでぃるどじで。」


 「何言ってるかわかんないわ。」


 顔中が腫れあがっている状態でちゃんと話せるはずねーだろ!


 という心の声が届いたわけではないのだろうが、リリアナ様は体の傷をすべて回復してくれた。


 「とりあえず、あんたが魔王だっていうのは信じるとしてだな。魔王ってことはどっか侵略とかそういうことするのか?」


 「別にしないわよ。ただ単にここには暇つぶしできてるだけだし。でもそうね・・・何もやることがなかったらそれもいいかもしれないわね。」


 すっごい悪どい笑みを浮かべていらっしゃる。


 これは全力で暇にさせないようにするしかないのかな。


 「でも今のところはその予定はないし、それよりもあなたにはやってほしいことがあるの。」


 「やってほしいこと?」


 「ええ。とりあえず今のあなたの力だと何をやったってすぐに使い物にならなくから、体力づくりをしましょうか。」


 今度は素晴らしい笑顔でほほ笑むが、さっきよりも怖い思いをしそうなのは気のせいだろうか?


 「この草原の半分を今から耕しなさい。」


 「・・・は?」


 「魔法を使って耕して、MPが尽きたら手で耕して、MPが回復したらまた魔法で耕す。そうやって魔力と筋力の両方をまんべんなく鍛えていくのよ。動いているうちにレベルも上がって能力も格段に上がっていくからどんどん耕しなさい。」


 「いや、ここ普通の草原なんだけど。もと畑とかやわらかい土壌とかじゃなくて雑草が生い茂る草原なんだけど?」


 「大丈夫よ。あなたには不屈の精神と不壊の肉体というこれ以上ないチート能力が備わっているんだから。」


 「じょ・・冗談だろ?」


 「さて、それではやってもらいましょうか。」


 「や、やめろーーーー!!」


 「さっき指示したとおりにこの草原の半分を耕しなさい!」


 命令されてしまった。


 これで俺に拒否権はなくなり、すぐに体が意思と関係なく動き、耕し始める。


 しかしMPはほとんどないうえに筋力も人並みなので丸1日やってもほとんど進まず、飲み食いはたまにリリアナ様が器用に食べさせてくれるだけで、まったく休みなく不眠不休での作業になった。


 そんなブラック企業も真っ青な24時間労働×10をやり遂げ、見事この草原およそ3ヘクタールの草原の半分である1.5ヘクタールを耕したのだった。


 これによりステータスはうなぎのぼりで上がっていき、最終的にはこのような結果になった。


【名前】清水交一

【種族】人間

【職業】奴隷Lv15

【加護】魔王の加護

【能力】HP:250 MP:170 筋力:57 瞬発力:34 持久力:107 知力:24 精神力:180 思考速度:13 感度:10 応用力:43 筋肉量:30 脂肪率:4%

【特殊能力】習得速度上昇 職業適応率100% 不屈の精神 不壊の肉体 立場逆転 地形理解 不眠症 食欲減退 低燃費 魔力回復速度上昇 体力回復速度上昇

【魔法】火の粉 水飛沫 地形操作 送風 スタンガン 製氷

【称号】魔王の配下 神を冒涜せし者 神に笑われた者 死の痛みを知る者 土弄りの経験者 眠らない者 逃れられぬ者 修行者


 もうぶっちゃけこの上がり方だけ見ても俺の経験した地獄が理解できるというものです。


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