第5話 トロールゾンビハンター
「ふおぉぉぉ!」
人間ならば虫のごとく潰されるはずだが、彼女は吸血鬼、モンスターだった。腕を伸ばし、支えて抵抗している。
トロールゾンビはある程度の知能が残っているのか無いのかわからないが、踏み続けていた。
「ティアさん!大丈夫ですか?!」
「だ、大丈夫だけど!」
一瞬、力負けしたが、再度持ち直す。
「あんまり、長くは持たないかも・・・」
「わかりました!すぐに助けます!合図したら逃げてくださいね!」
レイナは着ていたエプロンを破り捨て、上着を脱ぎズボンのベルトを外した・・・
「うわぁ!あんた結構着痩せするタイプだったのね!」
「黙っててください!」
身体を震わせると革靴が弾けとび、獣の足が見えていた。ズボンを突き破って尻尾が生えている。両耳は頭の登頂部へと移動し変形して犬の耳のような形になった。掌には肉球が盛り上がり、ツメも野性動物の物の様に変形した。そして顔以外が毛むくじゃらになっている。
「うわ!犬くさ!」
「いい加減にしないと見捨てますよ・・・」
「ごめん・・・」
身体をブルブルと震わせ、準備運動と本来の身体を馴染ませると走り出した。壁を垂直に駆け上がり、トロールの顔の近くにある削れてしまった部屋にたどり着いた。再度走り出し顔に向かって飛び掛かる。飛んだ時の踏み込みと助走のスピードが合わさり、力を最大限まで引き伸ばす。そして顔にタックルを喰らわせた。
「ティアさん!今です!」
ティアは軽くなった瞬間、寝転び、転がった。
大きな地響き起き、周囲のコンクリートの地面にはヒビが入っている。
巨人が倒れたのだ。
少年は目映った光景が信じられなかった。あの巨大で、いつも恐れていた怪物が倒されることを。そして、その怪物を倒したのは気品に溢れた人ならざる者であったこと。そこには希望が産まれていた。あの巨人を、みんなの敵を討てるのではないかと。
レイナは空中から受け身を取り地面に着地する。ティアは起き上がると両者は少年の元に駆け寄った。
「で、これからどうする?」
「え?」
少年は呆気にとられ、声を出した。
「あいつをどうするのかってこと」
ティアは起き上がろうとしている巨人の方を指差した。
「私は倒したいと思っています。私たちの使命はゾンビ狩り、トロールだろうが人間だろうが変わりません」
レイナは腕を組み、答えた。
「じゃあ、わたしもー、やられっぱなしは嫌だもんねー。ボクくんは?」
「ボ、ボク?」
彼の心の中は様々な思考が巡った。彼女達は人間ではない、自分の首もとに噛み付き、血をすすったバケモノだということ。しかし、自分には抵抗する術はない。そして、巨人、仲間のカタキである巨人。今まで逃げて隠れてきただけで、復讐しようとは考えたる事はなかった。
「ボクは・・・」
少年の心に一つの決心がついた。
「ボクもやる!みんなの復讐をしたい!」
「おっけい!了解!」
ティアは両者を肩に抱き、抱き締めた。
「じゃあ、あいつをぶっ殺しますか!!!」
その時、大きな地響きがなった。
「ウガアアアアアアアアアア!」
トロールは周囲を見渡し、エサを探す。
「それでどうやって倒すんです?」
レイナは準備運動をしながら訪ねた。
「うーん、一つは弱点をついて優雅に倒す作戦。二つ目はごり押し。ボクくん、ここって電気使える?」
「つ、使えないけど・・・」
「じゃ、ごり押し!」
「ご、ごり押しって、それで本当に倒せるの?」
「大丈夫!だからボクくんは隠れて待っててね♡」
ティアは爪を伸ばし、構える。
目の前にはカイブツが迫ってきた。