第六章 実践実習 8
『プルルルルルルルルル』
胸ポケットの携帯が着信音を鳴らす。俺はそれを無造作に取り出した。
『九月レナ』
表示された人物の名前を確認して、俺は携帯に出た。
「はぁ……はぁ……もしもし? 俺だけど」
『俺だけどじゃない! 大丈夫なの? 至急報が入ってたけど』
「ああ、取りあえず俺は今犯人を追ってる」
『はぁ? 馬鹿なの貴方? 指示は待機だったはずよ。怪我人ほったらかして、犯人を追ったの?』
「いや、伊藤係長の指示だ。それに犯人の確保とかどうでも良いが、伊藤係長を刺した借りは返したい」
『はぁ……大体分かったわ。いつものパターンね。それで、今、どこ? 取りあえず無線の有った方面に向かってはいるけど、どこか場所が分かる物を言いなさい』
呆れた様な溜息が電話越しに聞こえてくる。俺は周囲を見渡して目印になりそうな物を探した。
「あ~タバコ屋があるわ。その隣にはサークルKサンクスがあります」
伝わらんだろうな~。というか、俺も土地勘ねえんだ。分かるか。
「分かったは原市に向かう方面ね。後五分で着くわ」
『ブツン……』
携帯電話が切れる。
「本当に分かったのか? いや……分かったんだろうな実際に」
頼もしい奴だ本当に。俺なんかよりもよっぽど頼りになる。
それから五分後、きっかり五分後にバイクの音が背後から響いた。そして……。
「坂本。待ちなさい」
ヘルメットを被り、交番のバイクに跨る九月レナが居た。
「お、お前……何でバイク乗ってんだ?」
「拝借したわ。自転車じゃ貴方に追いつけないから」
こともなげに九月は答える。
「結構無茶するね。お前も」
「そう? 貴方も免許くらい持ってるでしょ? それよりも後ろに乗りなさいよ。貴方の案内で行くわよ」
「二ケツ? お前それ道路交通法違反だぞ」
「そう、なら先に行くわね」
ブルルンとエンジンを吹かす九月。俺はその背中に飛び乗った。
「ごめんなさい。連れて行ってください」
「最初からそう言えば良いのよ」
九月はアクセルを回した。俺は振り払われないようにその背にしがみつく。
「行くわよ」
九月は完璧なドライビングテクニックで走り出した。




