第六章 実践実習 3
「ふぁ~眠い……」
俺は欠伸をしながら、署長室の前に立っていた。
「おい。坂本……緊張感なさ過ぎだろ。マジでしっかりしてくれよ。怒られたくないから。まあ、文言言うのは九月だから問題ないだろうけど」
「…………」
九月はいつも通りのクールさを保っていた。全くよくもまあ、そう背筋ぴっしりと生きていけるもんだぜ。見習いてえ……いやしんどそうだからいいや……。
「はい。じゃあ入って挨拶して」
「入ります」 「入りま~す」 「入ります」
一礼して署長室に入る。すると眼鏡をかた温和そうな顔をした署長が俺達を迎え入れた。
「敬礼」
九月の号令と共に頭を下げる。
「九月巡査。他二名の者は、七月二十日付けで、警察学校から、上尾警察署に実践実習に参りました!」
「はい。ご苦労様。取りあえず。今日から一週間。君たちは上尾警察署の人間です。ここで勉強して今後の警察官人生に生かしてください……と、まあ挨拶はこれくらいにして」
署長はキリッとした顔から一転して、フランクな表情になると九月の方を見た。
「君は九月慎吾さんの娘さんだよね?」
「…………はい。そうです」
署長はそれを聞くと、顔を綻ばせた。
「慎吾さんには、若いころにお世話になった。慎吾さんは私が警備課に新人として入った時に一緒に組んでいた上司だったからね。警備のイロハを教えてもらった。厳しかったがとても優しい人だったよ」
「そうですか……」
「君も優秀だと聞いているよ。是非、お父さんみたいに活躍して欲しい」
署長はそう締めくくった。しかし、九月の顔は全く嬉しそうではなく。相変わらずの無表情だった。




