第五章 トリプルブッキング 4
それからしばらく杏ちゃんとの楽しいお話が続いたが。
「じゃあそろそろ行くね。友達と来てるから」
杏ちゃんはそう言うと遠巻きに見ていた女子高生の集団を見た。
「おう、じゃあな。杏ちゃん」
「あんまり遅くまで出歩いちゃ駄目よ」
しっかりとお姉さんをしている九月が微笑ましい。
「ふふん、お姉ちゃんもあんまり遅くなっちゃ駄目だからね」
「こらぁ」
姉妹のやりとりもすんだのか杏ちゃんは俺達に手を振る。
「じゃあねえお兄さん、お姉ちゃん!」
そういって来た時と同じように駆け出した杏ちゃんだが
「あ、お兄さん」
何かを思い出したかのように足を途中で止めると俺の方へと軽やかに転身した。
「どうしたの?」
いやぁそれにしても可愛いな~。同い年の子にもモテモテでしょう。
「うん。お姉ちゃんの事でちょっとね」
そう言って杏ちゃんは俺の耳元に顔を近付けた。微かに当たる吐息がくすぐったい。
「お姉ちゃん本当に今日は楽しそう。お姉ちゃんのあんな顔、久しぶりにだよ。だからお兄さんお姉ちゃんをお願いね。可愛くない事ばっかり言うけど全部ツンデレだからね」
「……ぷ、はは!」
自分の姉をツンデレという杏ちゃんに俺は腹を抱えて笑った。
いやぁー最高だわこの子面白いわ。
「じゃあまたね! 今度は三人で遊ぼう! お姉ちゃんハブったら怒るからね」
バイバイと小さく手を振り今度こそ杏ちゃんは友達の所へ戻っていった。友達が杏ちゃんを迎える姿からも杏ちゃんがいかに皆に好かれているかが分かる。きっとあの明るさでグループの中心にいるのだろう。
「随分仲良くなったようね」
どこと無く不機嫌そうな雰囲気の九月。こうして見ると杏ちゃんの言う通り、沢山の表情が有ることに気づく。
「まあね」
そんな九月に悪戯っぽく笑ってそう言った。




