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第五章 トリプルブッキング

五月八日土曜日。

今日は警察学校生達にとって、数少ない完全な休日。犯罪を犯さなければ何をしても良いとされる自由の日。ある者は彼女と短い逢瀬を、ある者は家族との団欒を。

まあとにかく癒しの為にあるわけだ。だがそんな日に俺の心は若干重たい。

「午前は九月……夕方は轟教官……夜は佐伯……」

今日のスケジュールを確認する。

何だこの殺人スケジュールは。どんだけ遊びたい人だよ。

何とか調整を重ねたがやはりこの日しかなく。場所を移動する時間も無かったので全員と同じ場所で会うことになってしまった。

「九月との待ち合わせ場所は上野美術館前で良かったよな」

美術館。いかにも九月らしいチョイスというか……。

だがそれに俺が誘われた理由が分からない。

とにかく約束の場所で待つこと五分。集合時間ピッタリに九月は現れた。

「待たせたかしら?」

「いや、待ってないよ」

何と無しに答えた俺だが内心激しく動揺していた。

あ、あれぇ~な、何か可愛いんですけど。

女の子の服装の事など良く分からんが、何と言うか可愛い系のファッションというか、ミニスカートから見える白くて細い足が眩しい。

そしていつもはしない化粧をほんのりしているのが分かる。

何処に出しても恥ずかしくない美少女がそこに居た。

「そう、なら行きましょうか」

九月はそういうと唐突に俺の手を握った。

「うひゃ」

余りにびっくりして俺は思わず変な悲鳴をあげてしまった。

「何よ? 早く行きましょうよ。時間ないんでしょ?」

あれ? 俺は九月の顔が若干上気している事に気付いた。

九月ちょっと興奮してる。

初めて会った人には分からないかもしれないが確かに普段の九月とは違った。

俺は九月に手を引かれるままに歩く。

しばらく歩くと上野美術館の荘厳な入口に着いた。

「阿修羅像展覧会かぁ。九月こういうところ良く来るの?」

「何言ってるの? 早く行きましょう」

「え? 行くって美術館に行くんじゃ無いの?」

「はい? 貴方仏像なんて見て何が楽しいのよ」

馬鹿を見る目で見られた。修学旅行で奈良に行った俺に謝れ。

「いや、だって美術館前で待ち合わせって……」

「別にただの待ち合わせ場所よ。分かりやすいでしょ? 私が行きたいのはここよ」

そう言って九月は一枚のチラシを取り出した。

『上野にパンダが来たンダ』

寝転んで笹を食べるパンダの写真と共に上野動物園の文字が。

「ムフゥー!」

無表情なのにそれを取り出した九月の鼻息が荒い。ていうか何がムフゥーだよ。キャラが崩壊してるぞ。

「パンダを見に行くのよ。いえ今日は上野動物園にいる動物を全て見るわ。今日は触れ合い動物の日だからウサギにも会いに行かなくちゃいけないし」

俺の手を引きながら歩くスピードがどんどん上がって行く。もう軽く小走りだ。何がこいつを駆り立てているのか?

しかし、いつになく可愛いらしい九月の様子に俺も胸が高鳴るのを抑えられ無かった。



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