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第四章 深夜研修  5

「菊池教官」

「何ですか? 油井助教」

声をかけられ、俺は知り合いの刑事から受け取った資料から目を上げる。

「坂本の件ですが大丈夫でしたか?」

「ええ、まあ結果オーライですし、油井助教と轟教官の擁護も効きました」

実際学校の教官は九対一で坂本の退学に動いていた。しかし、輝かしい功績をもつ轟教官と輝かしい戦績をもつ油井助教の弁明でその力を覆した。

「珍しいですね、轟教官が誰かを庇うなんて」

油井助教が表情を全く変えずに言う。本当は優しい人なのだが、見た目は怖い。

「多分坂本に可能性を見たんですよ。轟教官の切り札になりうるとね、油井助教と同じ理由ですよ」

「成績はいたって凡庸ですが」

「ええ、まあ普段はそうですね。でも気付いているでしょ? あいつは精神力をそのまま力に変えられる男ですよ。俺の友にもそういう奴がいました」

俺が言うと油井助教が頷く。

「確かに、私が特殊部隊に居た時も、逆境になるほど異彩を放つ者はいました。だが坂本の雰囲気は今まで見た誰とも異なる。異才ですよ」

「そう、だから面白いんです油井助教、もしあいつが爆発したらこの警察組織は一新するかもしれない。いやあいつらと言った方がいいかな?」

俺がそう言うと油井助教は微かに笑う。

「野心家ですね菊地教官は」

それに俺はにたぁと笑う。

「ふふ、またまた。油井助教にも協力して貰いますから一人隠居なんて決め込まないでくださいね」

誰もいない教官室で俺達二人はそっと微笑んだ。


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