プロローグ
「・・・本当に宜しいのですね?」
「あぁ。男に、二言は無い」
老爺は、かすれた声で断言した。
ここは病院の一角にある個室である。
老爺の隣りには、白髪の少年がいた。いや正確には、彼は少年という年ではないのだが、兎も角彼はその答えに、ニヤリと笑った。
いかなる手段を用いたのか、老爺は安らかに眠っていた。
少年は荷物置きのアタッシュケースを取ると、何事もなかったかのように病室を去った。
「先生! 301号室の梅谷さんの容体が!」
「何だと!?」
慌ただしく横を通り過ぎ、少年が来た道を遡る看護師たち。
殊勝なことだ。
もはや彼は死んでいるというのに。
だが自分には関係のないこと。いつものように帰ろう。
白髪に黒い中折れ帽子、喪服のような黒いスーツを着ている少年は、病院を後にした。
「料金は確かに頂きましたよ? 梅谷様」
(このあとがきは割合ネタバレを含みます。悪しからず)
主人公は、手塚治虫先生の作品「ブラックジャック」に登場する医師:ドクター・キリコをモデルにしています。
しかし手塚治虫先生のキリコはれっきとした医者であるのに対し、本作の主人公は医師免許など持っていません。人命救助を生業としているのではなく、顧客の死の要望を叶えて金銭を受け取るという、殺人を肯定するような要素を持ち合わせています。
ヒロインとして風香という高校生を用意していますが、彼女は彼女なりに事情を持っています。
本作では不思議さとホラーが主題に置かれているので、それを感じ取って頂ければ幸いです。
現実的かと思いきや「あり得ないだろ!」っていうファンタジック要素も混ざるのでご了承下さい。
警察がどうのこうのとか、医学的な事とか知らんもん( ̄▽ ̄)
なるべく合理的に説明できるように努めますので大目に見てください。
なお本作も実験的な作品となっております。
至らない部分もありますが、どうぞよろしくお願いします。