裏話 第五話 恋愛Ⅳ
「ねえ、ロズ君……本当に大丈夫?」
「大丈夫だよ、レア。俺を信じてくれ」
ロズはレアを抱き寄せる。
「……私お金たくさん持ってるし、特許権もいくつかある。著作権も。だからお金には困らないの。いっそのこと……」
駆け落ちしよう。
レアはロズを見上げる。ロズはレアの額にキスをした。
「大丈夫だって言ってるだろ。お前の未来のお婿さんの言葉が信用できないのか?」
「ううん。ロズ君のことは信用してるよ。でもいくらなんでも素手じゃ無理だよ……何か作戦はあるの?」
レアの言葉にロズは首を横に振る。
「作戦が通じる相手じゃない。全力で戦う。それが作戦かな? 絶対に勝って帰る」
「そう……じゃあせめてこれを持っていって」
レアはポケットから人形を取り出す。一つは赤い髪の毛の女の子に人形。もう一つは青い髪の毛の男の子の人形。二つの人形の手は赤い糸でつながれている。
「ありがとう。これで絶対に勝てるよ」
ロズはそう言ってレアの唇にキスをした。
レアの口内に舌をねじ込み、唾液と唾液を交換し合う。
二人は念入りに、愛を確かめあうようにキスをする。
十分して、二人が唇を放すと唾液の橋が架かる。
「じゃあ行ってらっしゃい」
「行ってきます」
ロズはそう言って闘技場に向かった。
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「セリウス、ロズが降伏したら必ず助けろよ」
「分かってますよ。会長」
ハルトとセリウスは綿密な打ち合わせをしていた。
ハルトとしてはロズの覚悟を見たいわけで、ロズを殺したいわけではない。
それにハルトはロズのことをほとんど認めていた。
実際、このままではレアが行き遅れになるのは間違いない。
結婚が幸福に必ず結びつくというわけではないが、一つの要素であるのは事実である。
ロズはある意味、レアの相手としては最適な相手だ。
理解はできている。
感情が認めないだけだ。
「本気でゾウとやると言うとは思ってなかった。で、お前としては勝率はどんなもんだと思ってる?」
「そうですね……一割と言ったところでしょうか。丈夫な刃物でもあれば勝てるでしょうが、素手ですからね……」
人は武器があればどんな動物にも勝てる。
世の中には加護なしの普通の人間であるのにも関わらず、槍一本でライオンを殺せる人もいる。
だが素手は不可能だ。
それを考えると、素手でゾウと互角に戦ったセリウスが怪物と言える。
「何しろ陛下も見物に来てるからな。ここまで大事になるとは……」
「俺としては鼻が高いですがね。皇帝陛下に息子の勇姿を見せれるんですから」
セリウスは胸を張る。その眼に心配の色は無い。
「大した自身だな。一割なんだろ?」
「一割もあれば十分ですよ。ロズなら残りの九割は気合で埋めるでしょう」
「気合ね……精神論は嫌いじゃ無いけどな」
ハルトは苦笑した。
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「にしても娘が欲しければゾウを倒せとは……新しいなあ」
ウェストリアは左手で焼き菓子をつまみ、右手でアスカの尻を触りながら言った。
「ですね。でも普通は倒せないと思うんですけど……相手はよく了承しましたね?」
「噂ではあれはあの剣聖の息子らしいぞ」
ウェストリアは闘技場の真ん中で待機しているロズを見ながら言った。
「剣聖セリウス……ペンティクス皇子の陣中に居たという傭兵ですか?」
アスカはウェストリアが皇帝になった後に陣中に加わった新参。故にペンティクス皇子もセリウスにも会ったことはない。
「そう。それだよ。奴の対策には本当に苦労した。奴が俺の屋敷に侵入して暗殺を実行しようとすればメガネでも止められないだろうからな。もっとも、兄上はそんなに卑怯な人間ではなかったが」
ウェストリアは自分と皇位を最後まで争った兄を思い返す。軍才、人材、そして血筋。すべてに恵まれていた人だった。
ウェストリアの人生でのラスボスはペンティクスだ。他の敵……他の皇子、王国や都市国家連合などは所詮おまけに過ぎなかった。
二度と、ペンティクスのような宿敵はウェストリアの目の前には現れないだろう。嬉しいようで寂しい。
「剣聖の息子ということは『闘神の加護』を受け継いでるということですか?」
「いや、そうでもなさそうだ。あれは『闘争の加護』だな」
ウェストリアは答える。
「え? じゃあ厳しくないですか?」
「厳しいも何も不可能だろ。武器有りならともかく、素手だからな。公開処刑みたいなものだ。でも俺は愛というやつが勝つ瞬間を見てみたいね。ゾウが人間を肉塊にするのは見飽きた」
「愛って……陛下にしては珍しいことをおっしゃいますね」
「俺もたまには癒しを求めるんだよ」
ウェストリアは不敵に笑いながら言った。
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「さあ、皆さん! 生と死を争う殺し合いの時間がやってきました! ですが今回はいつもと少し違います。なんと、この物騒なコロッセオで新たな夫婦が誕生するかもしれないのです!」
司会が拡声魔術を使い、前振りを始める。観客はそんなことはすでに承知なので、早く始めろと野次を飛ばした。
「では、簡単にルールを説明しましょう。ロズ君がゾウを殺すか、足の骨を折るかすることで戦闘不能にすればロズ君の勝ち。ゾウがロズ君を追い詰め、殺すかロズ君が降伏したらレオ君の勝ちです。ロズ君は勝ったらもれなくアスマ商会の娘さん、レア嬢を手に入れることができます」
司会は手短にルールを説明する。
「では、始める前に意気込みを聞いてみましょう。ロズ君、勝つ自信はありますか?」
司会は拡声器をロズに近づける。
「必ず勝ちます。勝って俺がレアに相応しい男だということをお義父さんに証明してみます」
ロズは自身満々に言い切った。
司会は観客席に居るハルトの方へ駆けていく。
「と、言ってますがどうですか?」
「無理だな。いくらあの小僧に加護があってもゾウに勝つのは無理だ。降伏するのをお勧めするな」
ハルトは腕を組み、ロズを見下ろしながら言った。
次に司会はハルトの隣に座っているレアに拡声器を向ける。
「では、今回のヒロイン。お姫様に聞いてみましょう。どうです?」
「必ずロズ君は勝ちます。私はロズ君を信じてます」
レアは断言する。レアの声を聞き、観客席からはロズをからかう声と嫉妬する声が湧き上がる。
「では、今回の特別ゲストである我らが偉大なる皇帝陛下に一言、頂きたいと思います」
司会はそう言って、一番高いところから見下ろしているウェストリア帝のところまで走る。大忙しだ。
司会はウェストリア帝に一度跪いてから拡声器を両手で丁寧に手渡す。
ウェストリア帝が立ち上がると、観客席が一瞬で静かになる。
「お姫様を手に入れられることを心から祈っているよ。面白いものを見せてくれ」
ウェストリア帝は短く、そう言い切った。
司会はウェストリア帝に一礼してからその場を去り、大声で宣言する。
「では早速試合を始めましょう。今回のゾウのレオ君が二十歳。すでに三十人以上の剣闘士を墓場送りにしています。果たしてロズ君はレオ君に勝てるのか!?」
司会の言葉と同時に、音を立てて鉄の檻が開いていく。そこから巨大なゾウが姿を現す。
ゾウは真っ直ぐと獲物を見つめ、突進した。
ロズは冷静に避け、ゾウの足を蹴り飛ばす。ゾウは足を取られ、横転した。
ロズはゾウの顔に近づき、足を高く上げる。
ロズの踵がゾウの牙に当たり、音を立てて折れる。
「■■■■■■!」
ゾウは悲鳴を上げて、鼻を振り回す。
ゾウの鼻に当たり、ロズは吹き飛んだ。
「痛てえ……」
ロズは足を抑える。
着地する時に捻ってしまった。 骨は折れていないようだが、酷く痛む。
ロズが立ち上がるのとすでにゾウは立ち上がっていた。
ロズに立ち直る隙を与えず、透かさず突進してする。
ロズが横へ逃げようとすると、ゾウは鼻を横に薙ぎ払い、ロズを吹き飛ばす。
倒れたロズを踏みつぶそうと、ゾウは足を高く上げる。
ロズは慌てて地面を転がり、逃げようとする。
バキッ
嫌な音がロズの耳に響く。
音がした方を見ると、ロズの右腕がゾウの足の下にあった。
「っ!!!」
遅れて激痛がロズを襲う。
ゾウは再びロズを踏みつぶすために足を上げる。
ロズはその隙に何とか逃げだす。
ゾウはロズを逃がさず、突進する。
足を負傷しているロズは逃げられず、吹き飛ばされる。
「くはっ」
壁に叩きつけられ、口から空気が漏れる。
ゾウはゆっくりとロズに近づいていった。
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「お父さん! ロズ君を助けて。もう、無理だよ!」
レアは泣きながらハルトに縋り付いた。
「ダメだ」
「何でよ! このままじゃロズ君が死んじゃう。早く、セリウスさん!」
レアは縋るようにセリウスを見る。セリウスは静かに首を振った。
「何でよ!」
レアは泣きながらハルトの服を引っ張る。
ハルトはレアを睨みつける。
「いい加減にしろ。お前はロズを信じてるんじゃなかったのか? あいつはまだ降伏していない。あいつが勝負を諦めていない以上、俺たちは助けられん」
「そ、そんな……」
レアはハルトの言葉に顔を俯かせた。
だがすぐに顔を上げ、観客席から身を乗り出して叫ぶ。
「ロズ君! 降伏して! ロズ君が死んだら私は……」
「大丈夫だ!!」
透かさずロズは叫ぶ。血まみれの顔をレアに向けて笑う。
「必ず君と結婚式を挙げて見せるから」
その言葉をかき消すように、ゾウは唸り声を上げてロズに突進した。
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「ありゃりゃ、これは死んだな」
ウェストリアはゾウに吹き飛ばされる青年を見ながら言った。
「やっぱり無謀ですよ。素手でゾウと闘うなんて。どうやって決定打を与えるのかって話ですし」
アスカとウェストリアは青年を見下ろす。
赤いルビーのような髪の少女が青年に降伏を勧め、青年がそれを断る。
表情は余裕そうであるが、足を引きずり、右腕は変な方向に曲がり、頭から血を流し続けている姿を見れば苦し紛れであることは分かる。
「大人しく降伏すればいいものを……」
「男の意地というやつだろう。でも、降伏してもハルト・アスマは結婚を認めると思うがな。十分善戦したようだし」
二人は好き勝手に言う。所詮他人事である。
他人事なのは二人だけではなく。観客席からも「殺せ」や「もっと頑張れw」などと野次が飛び交っている。
ゾウが唸り声を上げて突進する。
「これで終わ……ん?」
アスカは思わず身を乗り出した。ゾウがロズにあと少しというところで急に立ち止ったからだ。
「やるじゃん」
ウェストリアはゾウを左手で受け止めているロズを見て感心の声を上げる。
ふとウェストリアの耳に何かが笑いあうような声が響く。
クスクスと何かが笑っている。
老若男女、様々な年齢、性別の声が何かを話し合い、ささやき合っている。
「おい、アスカ。今の聞こえたか?」
「え? 何が……いえ、聞こえます。僅かにですが……」
ウェストリアは小さな笑い声をかき消すように大きな声で笑う。
「面白いじゃないか。奇跡という奴だな。気まぐれな妖精たちを味方に付けるとは。幸運か、奴の愛か、はたまた定められた運命か……」
ウェストリアがそう言うのと同時にゾウが吹き飛ぶ。
青年はゾウの鼻を片手で掴む。
ゾウの体が浮き上がり、壁に激突する。
ゾウは怒りに声を震わせながら立ち上がる。
ゾウが青年を再び吹き飛ばす。
だが青年は猫のように空中で立て直し、着地と同時にゾウに飛びかかりゾウの顔を蹴り飛ばす。
その闘いは先ほどまでのモノとは違い、互角だった。
観客席の客たちも静まり返り、その死闘に真剣な目を向ける。
「あれは……」
「『百獣の加護』『狂闘の加護』に並ぶ身体能力強化系最高峰『闘愛の加護』だ。まさか生きている内に見られるとは思わなかったな」
「確かその効果は……」
「たった一人の人を思えば思うほど、それに比例して身体能力が上がる。神話の時代以降、報告例が一つもなかったため所詮伝説だと思ってたんだがな。いやはや、世の中捨てたものじゃない」
ウェストリアはニヤリと笑った。
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形勢はゆっくりとロズに傾いていた。
突進するゾウを避けずに、ロズは蹴りで迎え撃つ。
ゾウの牙が宙を舞う。
ゾウの悲鳴が闘技場に響き渡る。
これで二本の立派な牙をゾウは失った。
口から血を流し、目を血走らせながらゾウはロズを睨む。
ロズが知る由もないが、このゾウは魔草を摂取させられている。
よって多少の痛みは感じない。
むしろ興奮する材料にしかならないのだ。
だが怪我は誤魔化すことはできるが、無くすことはできない。
ゾウは確かに弱っていた。
ロズはレアのことを考える。
レアの笑顔やウェディングドレスを着た姿を思い浮かべるだけで力が湧き上がるのを感じた。
「お前には恨みはない。でも俺とレアのために倒れてもらう!」
「■■■■■!!」
ゾウは血走った目でロズに突進する。
ロズは両足に力を籠め、地面に踏ん張る。片方の足が酷く痛むが気にしない。
「死ね!!!!」
ロズの左手がゾウの頭にめり込む。
時速百キロのロズの左腕と、時速五十キロのゾウのが衝突する。
バキッバキバキッ
音を立ててロズの左拳が砕ける。
だがロズは腕を引かない。
三秒、互いに膠着が続く。
地響きを立ててゾウが倒れた。
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「勝った……」
ロズは倒れたゾウを見ながら呟いた。
しばらくたち、観客席から歓声と拍手が巻き起こる。
「ロズ君!!!」
レアは観客席から身を乗り出す。
ロズはレアに近づいていく。
「ロズ君!!!!」
レアは再びロズの名前を叫びながら飛び降りた。ロズはそんなレアを受け止める。
「ごめんね……疑ったりして……」
「いいんだ。勝てたのは君のお守りのおかげだよ」
二人は見つめ合い、熱いキスをした。
再び観客席から歓声と野次が巻き起こる。
「勝者ロズ!!! 今、愛が、愛が勝ちました!! これほどまでの逆演劇はこのコロッセオ建設以来初めてではないでしょうか! みなさん、拍手を! そして新たな夫婦の誕生に祝福を!!!」
司会は声を張り上げて、レアとロズを祝福する。ノリがいい。
レアとロズは恥かしそうに顔を赤くする。だがその表情は歓喜に溢れている。
「小僧……いや、ロズ」
ハルトは大声でロズに言葉を投げかける。
空気を読み、観客は静かになる。
「よく降伏しなかった。認めよう。お前はレアに相応しい男だ。これから……一生死ぬまでレアをそばで守ってくれ」
「はい。必ずレアを幸せにして見せます。お義父さん!」
ハルトは大きく頷いた。もう「お義父さん」とロズが呼ぶことを咎めたりはしない。
係員が気絶したゾウを台車に載せて運んでいく。それをレアが止めた。
「あの……そのゾウさん魔草を使ってますよね?」
「よくわかりましたね」
「症状は知ってるので」
魔草の製造や使用は基本的に犯罪である。
だが動物に使用する分はある程度認められている。
西方には動物愛護組織など存在しない。
やりたい放題だ。
「そのゾウさん、購入できませんか?」
レアの言葉に係員だけでなく司会やハルトやロズも目を剥く。
「えっと……どうしてですか?」
「なんか私たちの都合で牙を二本も折られて可哀想ですし。それにほら、愛のキューピットだと考えれば縁起もいいかなって」
レアの言葉に、呆れた表情をする一同。
「レア、俺は払わないぞ。悪いことは言わないからそんな変なものは買うな」
ハルトはレアに忠告する。
「別にいいよ。私の私財で買うから」
レアはニコリと笑う。
係員は急いでゾウの所有者であるコロッセオの管理人のところまで走って行く。
到着した管理人は苦笑しながら値段を提案する。
「まあ見栄えも悪くなりましたし……買ってくださるのなら結構ですけど……大体相場は一千五百万ロマーノですが、こいつは牙を二本失ってるので一千万ロマーノで構いません」
「そんだけでいいんですか? じゃあ一括で買います」
管理人の顔が少し引きつる。
「お義父さん、なんかレアとの金銭的感覚が違い過ぎて心配になってきました」
「あいつは生まれながらの金持ちだからな。仕方がない。慣れろ」
ロズとハルトは苦笑いしながらレアと管理人のやり取りを見つめる。
「あ、あと飼育員さんが必要だなあ……三人ほどそちらから貸してくださいません?」
「そうですね……こいつの飼育員を寄越しましょう。引き抜き代として一人当たり三十万ロマーノ払ってくださるなら」
「うーん、私が買ったのは牙を失った傷物商品ですよね? 一人オマケしてください」
「ふむ、そうですな。では三人で六十万ロマーノで」
レアと管理人はしばらく話し合い、何らかのやり取りをして戻ってくる。
「お待たせ!」
「……噂じゃ餌代の方が高いと聞いたが……しっかりと世話しろよ」
「はーい」
レアは元気よく声を上げた。
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「うっ、わ、私はぜ、絶対に、な、泣きま、ヒック、せんから!」
「はいはい、分かった分かった」
アイーシャは目から汗を流し続けているロアの目にハンカチを当てる。
「落ち着け。レアは嫁に行くんじゃなくて婿を迎えるんだぞ。大丈夫だ。毎日会える。そう、毎日会えるんだ。だから大丈夫、大丈夫……」
「会長、落ち着いてください」
デニスが声を震わせているハルトをなだめる。
「お父さん、そろそろお姉ちゃんとロズさんが来るよ」
褐色の肌と金色の髪の少女(誰と誰の子供だろうね?)がハルトの袖を引っ張る。
ハルトが指をさした方向に目を向ける。扉がゆっくりと開き、そこから腕を組んだレアとロズが姿を現す。
真っ白い結婚衣装に身を包んだレアは幸せそうな笑顔を浮かべていた。
淡々と結婚式は進む。
まず結婚式に招かれた客の挨拶と祝辞。
アスマ家の次代当主の結婚式なだけあって全員が要人だ。
そのため非常に時間がかかる。
その間、ハルトは素数を数えて涙を堪える。
次に新郎の挨拶。
ロズが如何に自分がレアを愛してるかを熱弁する。
それを見ながらやはりロズに任せて正解だったとハルトは確信する。
次に新婦の言葉。
幼いころのロズの思い出を今のロズと対比して語る。
頭が良いレアの話はとても分かりやすく、情景が頭に浮かぶようであった。
ハルトは「お父さんと結婚する!」と言っていた時のレアを思い出し、目が熱くなるのを感じた。
そしてレアのスピーチが終わりに差し掛かる。
「最後にお父さん……」
レアはハルトに近づく。
「お父さん、今までありがとう。これからもよろしくね?」
悪戯そうな顔でレアは微笑み、ハルトに抱き付いた。
「うっつ、こんなに大きくなって……」
「あれ? お父さん泣いてる?」
「汗だ!」
ハルトは泣きながら叫んだ。
___________
こうしてレアとロズは夫婦になった。
この後、レアがウェルギス教という一神教に学術的興味で嵌り、ひと騒動起こるがそれはまた別の話。
一先ず八月分はこれで終わりです。
活動報告を見た方は知っているかと思いますが、同時に新作の方を更新しました
読んでくださるとうれしいです




