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異世界商売記  作者: 桜木桜
第五章 番外編
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裏話 第二話 恋愛Ⅰ

今夜は三話投稿です

「何!! あのデニスに女ができた!? あの童貞の?」

 今年、二十五歳になったハルトは思わず叫んだ。

「嘘!? あの童貞のデニスさんがですか? 困りました……今のうちに避難の準備をしないと。地震? 落雷? 大火事? それとも津波か大洪水か……ああ、大雪や大雨もあり得ますね。もしかしたら魔王が復活する可能性も……」

 二十二歳になったロアがおろおろしだす。

 「あの童貞がねえ……私もお祖父さまに連絡しようかな。最近西の方じゃあ連邦とかいう国が出しゃばってて大変って言ってたし。もしかしたら砂漠に攻めてくるかも……」

 少し心配そうに、だが若干にやけながらアイーシャは言った。


 「待ってください! いくらなんでも酷すぎませんか。確かに兄は元ニートで自称インテリの頭でっかちで、童貞……童貞は童貞でも素人童貞で、悪いのは自分じゃなくて世間だと思ってる、いいところよりも悪いところが出てしまうようなアレな人間ですが!」

 「いや、今の言い方はお前の方がどう考えても酷いぞ」

 ハルトはマリアに突っ込んだ。


 「ところで何が根拠であいつに女ができたと判断したんだ?」

 「女性物のバックや、指輪を物色してたんです! しかも最近服装がかっこよくなってたんです。女以外あり得ません!」


 ダン! 

 

 マリアは机を叩いて言った。


 「なるほど、確かに女の影がちらほらしてるな。それで俺にどうして欲しいんだよ」

 ハルトがそう言うと、マリアは言い淀みながら答える。

 「別に私は兄さんが女性と交際する分は構いません。兄さんの人生ですし、私が出しゃばるのも変ですから。でも、兄さんはああ見えて、いや見た通りアホなんです。騙されてる可能性が、いや、むしろ騙されてない方が可笑しいです。それは困ります。ですから!」

 「俺にデニスの女が一体誰なのか探って欲しいってことか?」

 「そう言うことです。お願いします。ハルトお兄さん!」

 頭を下げるマリア。言葉のところどころでデニスを罵倒しているが、心配しているのが見て取れる。とはいえ、ハルトに他人の恋愛に口を挟む趣味はない。ハルトは少し悩んでから言った。


 「確認するだけだぞ?」

 「ありがとうございます!」



_______


 

 「というわけでデニスの部屋に無断で来たわけだが……」

 「すみません。説明をください。どうして兄さんに直接聞かないんですか?」

 「俺はまだデニスから女ができたという報告を受けてないからな。どうせならあいつが報告してきた時に、『いや、それくらい知ってたよ?』 という顔をしたい。あと探偵気分を味わいたいというのもある。さて、証拠を探すぞ」

 ハルトはそう言って、早速ベッドの下に手を突っ込んだ。すると中から一冊の本が出てくる。


 「なになに? 『女伯爵奴隷記』か……題名から察せられるな。あらすじは 『第三次帝王戦争で帝国に捕えられ、売られてしまった王国騎士ヴェルフ。彼を買ったのは帝国の女伯爵カロリーナ。そこで彼を待ち受けていたのは屈辱的な日々だった! 彼の騎士としてのプライドは折られてしまうのか!!』 ……あいつとは話が合わなそうだな」

 「いやー、すごい内容だね。ハルトのベッドの下にある『僕らの七日間メイド調教Ⅴ』並みじゃない?」

 「おい! 人のベッドの下を勝手に漁るな!」

 ハルトはにやけるアイーシャに抗議した。

 「ハルトさん! そんな破廉恥な物を……」

 ロアは顔を真っ赤にしてハルトに抗議の声を上げた。ちなみに今のロアはメイド服だ。

 「お前、何今初めて知りました風に言ってるんだ。一週間前、俺のベッドの下から取り出して俺のベッドの上で読みながら悶えてた(オブラートな表現)だろ!」

 「あ、いや、その……盗み見なんて酷くないですか?」

 ロアは顔をさらに真っ赤にして、縮こまりながら抗議した。

 

 「いや、だって……なあ?」

 「そうだね。あんな大きな声を出してたら盗み見したくなっちゃうよねえ」

 ハルトとアイーシャは顔を見合わせて笑った。ロアは顔を抑えて蹲った。


 「あのー、ここに来た趣旨忘れてません?」

 マリアが顔を少し赤くして言った。


 「ああ! すまん。早速……」

 「いや、もう終わったよ」

 アイーシャはデニスのベッドに鼻を近づけて言った。

 「このベッドから男性のアレと女性のアレと血液の匂いがするから」

 「アレとアレと血液だと! つまりあいつは処女を抱いたのか。まさか幼女を誘拐したのではあるまいな!?」

 「いや、大丈夫。幼女じゃないよ。ハルトもよく知ってる人の匂い」

 アイーシャは鼻をすんすんさせながら言った。

 「え? まさかうちの奴隷?」

 「違うよ。この匂いは……プリンさんのモノだ」



______



 「マジかよ……」

 「あのプリンさんがあんな顔で笑うなんて……」

 「これはもはや天変地異どころではありませんね。世界の終わりです。北方狩猟民風に言うとラグナロクです」

 ロアがさらっと薀蓄を披露しながら例える。


 「どんなことしてるんだろうな。鞭で叩いて貰ったりしてるのか?」

 「でも、デニスさんの血の匂いはしなかったよ?」

 アーシャは鼻をすんすんさせながら言った。


 「つまり夜の事情は案外普通なのか?」

 「ソフトSMの可能性は十分に考えられると思わない? タオルで縛ったりするやつ。私たちもよくやるじゃん?」

 「だってロアがやろうって言ってくるからさ。俺はどっちもいける口だからいいけど」

 「三人の性事情はどうでもいいので黙ってくれません?」

 マリアがハルトとロアとアイーシャを睨む。ロアはとんだとばっちりだ。


 「お、店に入ったぞ」 

 「あんな安い店で済ませるなんてデニスさんはダメですね」

 「……あのお店、平均価格が二千ドラリアだったような……」

 そもそも億単位で稼いでいる人間と庶民では金の感覚が違う。


 「でも良かったじゃないか。プリンなら騙されてるってことはないぞ」

 「そうですね。あの人はサディストですがいい人です」

 「私としては処女だったことの方が衝撃だなあ」

 三人は感想を言った。

 二人が子供を産んでくれれば、次の世代の従業員が確保できる。喜ばしい限りだ。

 問題はどちらかが振られた場合だが、どっちかをどっかの支部に左遷させてしばらく落ち着かせればいい。落ち着いたら戻って来させる。


 「どっちの姓を受け継ぐんだろうな?」

 「やっぱりデニスさんの方じゃないですか?」

 「でも、デニスさんは家継がないんでしょ? じゃあアラモード姓を貰うんじゃない? デニス・アラモード……うん、いいと思う」


 三人は勝手に納得して家路についた。まだ不満げなマリアを残して。



________


 一か月後


 「大変です、会長!」

 「なんだ? 結婚か。仲人を頼みたいならいつでも言えよ。俺は優しい上司だからな。一回一千ドラリアで引き受けてやる」

 「金を取るんですか!!」

 デニスの声が響き渡る。


 「と、それについては後で話させて貰います。本題に入っていいですか」

 デニスはそう言って話し始める。



 「なるほどね。マリアに男ができた可能性が高いと。何でお前ら兄弟は俺に相談するんだ?友達居ないのか?」

 ハルトの問いにデニスは顔を背けた。リアルに居ないようだ。ハルトですらユージェックやグレイ提督という友人が居るというのに。


 ……世間一般的に言えばそれは友人ではないが。


 「じゃあ同じ調べ方をするか」

 ハルトは立ち上がった。


______



 「さてアイーシャ。よろしく頼むよ」

 「はいはい。すんすん。なるほどなるほど」

 アイーシャはマリアのベッドに鼻を近づける。


 「で、どうなんですか!!」

 「うん、ばっちし喪失してるね」

 親指を突きだすアイーシャ。何がとは言わないのは優しさだ。


 「そ、そんな……」

 デニスは床に膝をつく。元ニートの分際で妹に男ができたことがショックのようだ。


 「で、誰よ。俺らの知ってる人?」

 「うん。セリウス」

 ハルトは口を開けて固まった。


 


 「マジですね。マリアちゃんとセリウスさんが……でもマリアちゃんは可愛いし、セリウスさんはお金に汚い以外はかっこよくて強い男性だからそこまで可笑しくないか……」

 ロアはイチャつくバカップル(マリア&セリウス)を見ながら言う。

 「そうだな。マリアは普通に可愛いし、少なくともデニスが結婚するよりは圧倒的に普通……つまらん」

 「余計なお世話です」

 デニスは顔を顰めた。


 「どんなことをしてるんだろ?」

 「どうだろうな……俺の知ってる限りじゃ二人ともノーマルだからな。ロアと違って」

 「そうだよね。ロアは特例だよね」

 「何ですか! さっきから人のことをまるで変態のような言い方で!! 私のそれはちょっとです。ちょっぴりです」

 ロアは大きな声を張り上げる。ハルトは慌ててロアの口を封じた。


 セリウスは後ろを振り返ったが、四人はとっさに植え込みに隠れたのでギリギリばれない。


 「僕としてはセリウスさんの腕力が心配で……」

 デニスは心配そうな声で言う。

 「まあ、確かにな。あいつは像と相撲で引き分ける化け物だからな」

 どういうルールの相撲を行っているのかは未だに謎である。


 「加護は使いこなせるから大丈夫だよ。私とハルトだった普通にしてるじゃん」

 「そうですね。もしアイーシャさんが使いこなせてなかったらハルトさんの首は今頃ねじ切れてます」

 「俺、結構お前に抱きしめられて体を痛めてるんだけどな……」

 ハルトは不満を口にした。


 「セリウスの子供か。そりゃあ化け物何だろうな。楽しみだ」

 アスマ商会の軍事力が飛躍的に上がりそうである。上げても仕方がないが。


 「そうだ! セリウスさんのご家族にクラリスまで来てもらいません?」

 「そいつはいいな。金庫番をしてもらおう」

 「良いね。大昔は砂漠の民と雪原の民は同じ種だったって言うし。交流できそう」

 三人はマリアとセリウスの話題をそっちのけで盛り上がり始めた。




 デニスとプリン、セリウスとマリアの二人が結婚するのは一年後のことである。


 そしてさらに十六年後。


 「絶対に認めん!」

 四十二歳になったハルトは目の前の青年を睨みつけた。


 青年の名前はロズ。年齢は十五。雪原の民とキリシア人のハーフである。要するにセリウスとマリアの子供だ。


 「お願いします! 娘さんを……レアを俺にください!!」

 「絶対に嫌だ!!」


次は明日、更新……できたらいいな

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