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異世界商売記  作者: 桜木桜
第一章 立志編
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第3話 買い物

  次に日の朝、ハルトは窓からさす朝日で目が覚めた。ハルトは窓を開けて時刻を確認する。

 「今日は朝のうちに起きられたみたいだな」

 ハルトは時間を無駄にしなかったことに安堵する。そのあと井戸で顔を洗い、ウンディーヌで朝食を取る。サンドイッチ(500ドラリア)を食べながら、ハルトは今日すべきことを考える。


 (とりあえず服を買わないとな。下着とかそのままだし。財布も必要か。日本の財布には硬貨が入んないんだよな。いつまでも金をポケットに入れておくのは危険だし。忘れちゃいけないのは石鹸だな)

 

 ハルトは食事を終えると、商店街に向かう。しばらく歩いていると、どこかで見た赤毛を見かける。ロアだ。ロアもハルトを見つけたようでニコニコしながらこちらに駆け寄ってくる。

 

 「ハルトさんじゃないですか。久しぶりですね。何をしているんですか?」

 「すこし日用品を買いにな」

 ハルトが答えるとロアの目がきらりと光る。

 「それでしたら私が安くてしっかりしたお店をご案内しますよ。500ドラリアでどうですか?」

 「いや、結構だ。自分で探すよ」

 ハルトの財産は39万ドラリアほど、9か月も生活したら失くなってしまうほどだ。できれば節約したい。


 「でもお店によって値段が違ったりするんですよ。下手したら粗悪品をつかまされたりしますし……、たった500ドラリアでその危険が回避できるんです。お金がないならますます私を雇った方がいいと思いますよ、ついでに街を案内しますから」

 なるほど、ロアの言っていることも一理ある。たしかにここで500ドラリア払った方が、後で得するかもしれない。

 「わかったよ。そのかわりきちんと仕事しろよ。」

 「ふふふ、まいどありー」

 ロアはうれしそうに銅貨を受け取った。


______


 「まずは服ですね。付いてきてください」

 ハルトはロアのあとをついていく。人ごみの中をすいすいと進んでいくロア。ハルトがロアに追いつくと、裏路地の前いた。


 「今から近道します。複雑なんでしっかりとついてきてください」

 ハルトは一瞬不安になったが、ロアがついてこいといってるなら大丈夫だと判断する。ハルトは気が付かないうちにロアのことをずいぶんと信用するようになっていた。


 しばらく歩いていくと表通りにでる。表通りに出てからすぐ、ロアは立ち止る。

 「ここです。男性用の服を中心に売ってます。私は入ったら怒られちゃうんで、お買い物を済ませてきてください」

 ハルトは店内に入る。なかなか品揃えがいい。値段が高いのか安いのか分からないが、たぶん安いんだろう。ハルトは着やすそうな下着3着と、街でよく見かける一番普通そうな服を3着セットで購入する。ついでにタオルも3枚ほど買っておく。合わせて12点。1万6000ドラリアほどだ。


 「あ、終わりました? 次はお財布ですね」

 またすいすいと歩いていくロア。早くてついていくのがやっとだ。

 「ロア、歩くのが早いからもっとゆっくり歩いてくれないか?」

 「え! すみません。いつも一人で歩くペースで歩いてしまいました」

 ロアとハルトは並んで歩き始める。お互い世間話をしながら歩いていく。

 「そういえば図書館に行ってみたんだがかなり大きいな。俺の故郷でもあそこまで広い図書館はあまりなかったぞ」


 「あたりまえです。クラリスは千年も前から東方諸国や王国から交易で多くの本をあつめてきましたから。70万巻もあるんですよ。ちなみにハルトさんの故郷の最大の図書館の蔵書量はどれくらいですか?」

 「9百万くらいかな」

 「見栄なんか張らなくていいんですよ。クラリスの図書館は世界最大級ですからね」

 ドヤ顔をするロア。ちなみにハルトの言ったことは本当だ。


 しばらくすると皮物屋に着く。

 「ここはベルトとか財布とか売ってます。一つアドバイスしておくと、お財布につける鎖も買った方がいいですよ。スリ防止になります」

 なるほどと思いハルトは入店する。店内を見回すと、鎖が財布とセットで売ってあるものがあった。

値段もそこそこだ。ハルトはその中から気に入ったものを買う。


 店内から出て、またロアと歩き始める。

 「そういえばハルトさん、異国出身なのにずいぶんキリス語が堪能なんですね」

 キリス語とは都市国家連合で使われている言語だ。

 「まあな、財布も服もかったし後は石鹸だな」

 キレイ好きのハルトとしては石鹸がないのは大問題だ。

 「え?『石鹸』ですか。なんですかそれ」

 ロアの発言に一瞬ハルトは凍りつく。石鹸がない……まったく想定していなかった。そういえば日本には戦国時代にヨーロッパから石鹸が伝わるまで、石鹸がなかったという。


 (参ったな……石鹸がないなんて。あれ?でもウンディーヌじゃあ石鹸みたいなの使ってたような……)


 「ほら、汚れを落とすのに使うやつだよ。泡がでてくるやつ」

 「灰汁とか泡の実のことですか。それならそうといってくださいよ」


 泡の実……聞いたことがない。ハルトは首をかしげる。灰汁ならわかる。昔洗濯に使っていたと聞いたことがあるからだ。だが泡の実とはなんだろうか……。ムクロジのことか?


 「泡の実ってなんだ?」

 「え!知らないんですか。東方には生えてないんですか……。ほらあそこで売ってる木の実です。体を洗っても肌が荒れないから富裕層なんかが使うんです」

 ロアが指さした方を見ると、黒い木の実のようなものが売られている。見るとムクロジよりも大きい。石鹸の代用品があったから石鹸は作られなかったのか。ハルトはあれでもいいかと思い、値段を見る。


 (うわ、高! 3万ドラリアってマジかよ……)

 

 瓶のセットで3万ドラリア。シルフー亭に3週間は泊まれる。

 (しょうがない、自作するか……)

 ハルトは石鹸を自作することを決めた


 ハルトは石鹸作りが趣味だ。きっかけは母親が自作し始めたことだ。母親は結局完成できずにあきらめてしまったが、ハルトが完成にこぎつけた。以来、石鹸作りにはまってしまったのだ。石鹸はそんなに難しいものではない。油脂と苛性ソーダを混ぜ合わせて加熱すれば簡単に出来上がる。


 (作るとなると材料と道具が必要だな……)


 「ロア、鍋とオリーブオイルと塩と薪が売ってあるところを知らないか?」

 「え? 知ってますけど……いったい何に使うんですか?」

 「まあ、ちょっとな。できたらお前にも少しわけてやる」

 ハルトはロアに向かってにやりと笑う。ロアは首を傾げていた。


______


 ロアと別れて、宿に買った服を置いてから、ハルトは山に向かった。石鹸作りには火を使うからだ。


 「それにしても趣味がこんなところで役に立つとは思わなかったな」


 人生何が起こるか分からないものだ。さて石鹸の材料は油脂と苛性ソーダだ。油脂に関してはオリーブオイル(1瓶1000ドラリア)を使用する。牛脂などでもいいが石鹸が恐ろしく臭くなる。苛性ソーダに関しては木の灰(一般家庭からもらった)で代用する。


 山火事が起きたら大惨事になるので火の取り扱いには注意する。ハルトは買った薪に持っていたライターで火をつけ、オリーブオイルを鍋で加熱する。そこに水でこした灰汁を投入する。しばらく加熱したのち、塩を入る。浮き出た成分が石鹸だ。ハルトは浮き出た成分を用意しておいた瓶に入れる。

 ハルトはできたばかりの石鹸を眺める。道具や材料が即席の物だったせいか出来はあまり良くない。とはいえないよりはましだ。


 できたころには辺りはすっかりと暗くなってしまっている。ハルトは急いで宿に帰った。


 「サンドイッチをください」

 ハルトはマルソーに注文した。石鹸作りに夢中で昼は食べていないのでかなり腹が減っている。ハルトは出されたサンドイッチを早々食べ終えて、マルソーに話しかける。


 「すいません。ちょっといいですか?」

 「何だい、お客さん」

 相変わらず目つきが悪い。ハルトは作った石鹸をマルソーに見せて言う。

 「これ、石鹸っていうんですが灰汁の代わりに使ってみてください。灰汁よりも汚れの落ちがいいと思います」

 ハルトは今まで石鹸を使ったことのない人間が石鹸を使ってみるとどんな反応を示すか非常に興味があった。同時に作った石鹸を誰かに自慢したい気持ちもあったのだ。


 「え?これをですか!いいですけど……」

 マルソーは半信半疑で石鹸を食器洗いに使ってみる。疑っていた顔がみるみるうちに驚きへと変わっていった。


 「これすごいですよ。灰汁なんかと比べ物にならない。いくらするんですか?」

 ハルトがマルソーに渡した石鹸の量は作った石鹸の3分の1ほどだ。オリーブオイル以外にお金がかかっていないので大体300ドラリアほどだ。


 「まあ、大体300ドラリアくらいですかね」

 「これで300ドラリア!!」

 やたらと驚かれる。確かに考えてみれば泡の実が1瓶で3万ドラリア、こちらはたったの300ドラリアだ。マルソーに渡した石鹸の量が少ないとはいえ泡の実よりははるかに安いだろう。


 (あれ? これ儲かるんじゃね。)

 

 ようやく気付くハルト。もし石鹸を売り出せばハルトは儲かり、街はきれいになり、女性の髪はきれいになる。1石3鳥だ。


 (せっかく異世界トリップしたんだ。平凡に異世界で生きて死にましたじゃつまらないよな)


 ハルトはにやりと笑った。

 

______

 

 宿に戻ってハルトはハンナに湯を頼む。桶一杯300ドラリアだ。ハルトは作ったばかりの石鹸を泡立てて、ハルトは体を洗う。やはり石鹸があるのとないのとではだいぶ違う。


 買ったばかりのタオルで体をふいて、ハルトは中庭から部屋に戻る。ベッドに入って、今日あったことと、これからの予定について考える。


 (商売をするには許可が必要だよな……やっぱり市民権とか必要なのかな。役場で聞いてみるか。あとロアに石鹸を上げる約束だったな。あいつくさいし)


 ロアのことを考えているうちに、ハルトは眠りに落ちた。


 消費金額 食事代1200

      お湯 300

      服   1万6000

      財布   5000

      鍋   1万2000

      オリーブオイル  1000

      薪     200

 

残り残金 352300


_____


 次回は木曜更新です。

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